「モノが売れない」時代と言われている。

百貨店が売上を落としたというニュースは毎年恒例となり、

自動車もバイクもパソコンもゲーム機も売れない。

「若者の●●離れ」が常套句となっている。

 

 

一方で「モノよりコト」ということで、

製品よりも体験を求めていると言われ始めているが、

それでも体験を提供する「コト」なら

なんでも右肩上がりで売れているというわけではない。

 

 

エンタテインメントやスポーツの世界で、

独立起業して成功しようと考える人にとって、

やりがいはあるが、そのぶんハードルも高い時代だ。

 

 

オリジナリティやこだわりは大切だが、

アーティスト気分で、

自分がいいと思うもの、

自分のこだわりを前面に出すばかりでは、

モノでもコトでもなかなかうまくいかない。

 

 

その一方で、消費者の目ばかりを気にして、

膨大なリサーチ情報を分析してモノやコトを作っても、

それはそれでうまくいかない時代でもある。

 

 

エンタテインメントやスポーツの世界で、

独立起業して成功しようと思ったら、

「消費者のスタンスの変化」を肌で感じ、

頭で理解し、敏感に対応していかなければならない。

 

 

ざっくりいうと、

昔は「モノ・コトに消費者が合わせる」時代だった。

けれど今は「モノ・コトが消費者に合わせる」時代だ。

 

 

例えば、

昔は映画館で映画を見ようと思ったら、

開館まで扉の外で順番待ちして、

急いで自分で席を確保しなければならなかったのが、

今はネットで事前予約できるので、

たとえ上映時間ギリギリに到着しても、

自分の希望の席に座ってゆったり観ることができる。

 

 

そのため、

自由席、座席が狭い、高低差がなく観づらい、

タバコ臭い、スクリーンが小さい、などなど、

こういうのが当たり前だった昔の映画館は、

いくらこだわりの映画をチョイスして上映していても、

時代にマッチしなくなり、消費者が遠ざかり、

どんどん閉館し、立て直すか、取り壊されている。

 

 

消費者のスタンスが変化したのは、

まず最初に「モノ・コト」ともに、

簡単に作れるようになったことが大きい。

 

 

昔は大企業や大手メーカーしか作れなかった商品や、

映画、音楽、イベントなどが、技術革新の結果、

極端な話、1人でも作り出せるようになった。

 


以前なら、商品としての音楽は、

制作するのに高額な機材や熟練のスタッフが必要で、

世界中にその曲を広めて商売にするためには、

大企業だけが持つネットワークと、

膨大な数の宣伝スタッフと広告費が必要だった。

 

 

けれど、例えば、

去年大ブレイクしたピコ太郎さんのPPAPは、

本人が1人で作った、たった1分弱の曲だが、

世界中の人の目に止まり、

あっという間に世界中で評判になった。

 

 

誰でも簡単に安価に

それなりのモノやコトが作れるようになり、

そのために世の中にモノやコトが大量に出回り、

溢れかえる状況になっている。

 

 

消費者側の選択肢が増えて、

モノやコトに無理に合わせる必要がなくなり、

妥協することなく、

好みのものだけチョイスできるようになった。

 

 

また、それに並行して、

情報量が増えて、取捨選択しないと、

消費しきれないほどモノ・コトが増えたことも、

消費者のスタンスを変えた一因だ。

 

 

もはや1つの商品をありがたがる時代ではなくなった。

次から次へと開発され、商品や情報は公開されていく。

1つ1つを吟味しなくても、少し待っていれば、

そのうち自分の好みに合うものが世の中に出るので、

消費者はただ待っていて、

自分に合うモノやコトを待っていれば、

向こう側が自分に合わせて提供してくれる。

 

 

その中で成功している事例の多くは、

この潮流から外れた例外的存在だ。

 

 

例えば、ディズニーランドやUSJは、

アトラクションに乗るのに、

みんな何時間も平気で待ってくれる。

 

 

村上春樹さんの新作は、

発売のかなり前から予約だけで

100万部突破の勢いだ。

 

 

発売されてからでも買えるにもかかわらず、

事前にこれだけ購入予約するというのは、

「ほかにどんな選択肢を与えられても、

絶対にこの本を買いたい」という

消費者の強い選択の意思であり、

今の時代で言えば数少ない例外的事例だ。

 

 

また、ジャニーズ、

例えば嵐のコンサートのチケットは、

数万人が収容可能なドーム開催にもかかわらず、

入手が非常に困難なプレミアチケットで、

多くの人が一縷の望みを託して、

ファンクラブ会員に何口も入会していて、

会員数は200万!を突破しているという。

 


「モノやコトが消費者に合わせる」今、

エンタテインメントやスポーツの世界で、

成功をつかみとるためには、

誰にでもチャンスをつかむ機会が増えたぶん、

評価されることが本当に難しい時代だ。

 

 

でも、だからこそ面白いと言えるし、

結果の出し方、評価のされ方も多様で、

成功の方程式は1つではなくなっている。

 

 

そして、

そんな厳しい競争を勝ち抜くことができたなら、

それこそが最高のエンタテインメントだと言える。

 

 

そんな勝負の舞台を「難しい」ととるか、

「チャンスがたくさんある」ととれるかで、

独立起業して成功できるかが、

大きく変わってくるのは間違いない。