舞台やコンサートでは、その会場の中に本当にたくさんの人がいる。

舞台上で姿を見せる人数の何十倍ものスタッフが、舞台裏でこの作品を欠かせぬ存在として支えている。 

 

 

 

一番多いのは観客の人たち。

 

熱心なファンもいれば、誰かに連れてこられただけの人もいるが、小さい舞台でも数百、大きなコンサートなら数万といった人たちがお金を払って会場まで足を運んでいる。

 

 

 

一番目立つのはもちろん、スポットライトを浴びる出演者たちだ。

 

舞台で言えば、主役から主役を引き立てる名脇役。そして役名もつかない端役までさまざまな立場がある。

 

 

 

そして、そんな出演者たちを陰で支えるスタッフたち。

 

演出家や振付師といった公演の立ち上げから関わる人、そして、音響、照明、大道具、衣装、メイクといった、公演を毎回支える裏方スタッフたち。

 

もっと細かく言えば、その公演の主催団体の担当者や協賛社の担当者、出演者の事務所スタッフやマネージャーもいるし、入り口でチケットを確認するスタッフや、誘導スタッフ、警備、グッズ売場スタッフなど、現場を円滑にするのに不可欠な仕事の人も多数いる。

 

 

 

1つの公演に本当にたくさんのポジションがあり、たくさんの人が関わることで、今日も公演の幕が上がる瞬間を迎えることができる。

 

開演のブザーが鳴り幕が上がった瞬間、舞台には眩いスポットライトと、きらびやかな衣装を着た出演者たちの姿が現れる。

その刹那、頭の中にはいつもこう響く。

「この公演のいったいどこに自分はいたいのか?」

 

 

 

観客なら、お金さえ払えばいつでもなれる。

 

でも、主役になりたければ、もちろん身長や顔つき、声質など、持って生まれた容姿や特徴に左右されるし、その面でクリアできても、早い段階からバレエやダンス、発声を学び、最低限基礎固めはしておかなければ話にならない。

 

もしくは、アイドルやテレビドラマ俳優など、別の分野で飛び抜けて人気を博して、その人気を期待されて舞台に出演するという道もある。

 

いずれにしても、主役を張るということは、誰でもチャンスがあるわけでなく、とんでもなく高い競争率の中、誰よりも努力を積み重ねるのは当然として、最後は運や縁次第という大変なポジションだ。

 

一方で、音響や照明、衣装などの仕事も、アシスタントではなく責任者になるなら、主役のポジションほどではないにせよ、早い段階でその道を選び、下積みを重ねて、実績を作った上で人に評価される結果を残していかなければ、大きな舞台などで仕事を任されるチャンスはなかなかない。

 

もちろん演出家や振付師となれば、対外的にもそのネームバリュー次第で公演への注目度が全然変わってくるし、出演者のキャスティングにも大きく関わってくる。

 

 

 

いろいろ考えると、やっぱり客が一番楽だ。

 

主役を張るためにたくさんの努力をし、少なくないライバルたちを蹴落としてきて、今、この舞台の中央に立つ主役たち。

 

その厳しい競争の中で磨かれた演技を、お金さえ払えばいとも簡単に観ることができるし、お金を払って観に来たことで主役に感謝までされる。

 

でも、その一方で、やっとの思いでそのポジションを得た人たち、主役はもちろん、脇役でも、音響や照明の責任者でも、演出家でも振付師たちは、充実感や感動、または評価や名声だけでなく、自分の成長や仲間との信頼関係や、

次のステップのきっかけといった、客の立場とは桁違いのものを手に入れることができる。

(もちろん失敗した結果、失う危険性もあるが)

 

 

 

舞台やコンサートに行く時、いつもワクワクする自分がいる一方で、客席に座っていることに違和感を感じている自分もいる。

 

「お前はここに座っていていいのか?」

 

舞台は人生そのものだ。

本当にいろいろなことを教えてくれるから。