2022年11月1日


晴れひとつないくもりだった。




『カウンターが言うことを聞かないんです。』

リーダーの1人が言葉を投げた。



月一の全員出勤のミーティングの議題。



朝一はリーダー以上のミーティングから始まる。




『いつになってもフロアの意図を汲んでくれないんです...』

と続けた。



来客を管理するフロアマネージャー、

応対の間に入るコンサルティングマネージャー、

お客様応対をするカウンタースタッフ

にポジションが分かれ、



フロア・コンサルを『フロア』と略し、

以外は『カウンター』としている。



フロアはリーダー以上が主で、

このフロア側とカウンター側の

意思疎通が取れていない、


この仕事ではあるあるの話題。



売り上げトップクラスと言えど、

抱える課題はどの店舗も一緒。



何度も向き合ってきた課題。



ただこの店舗は少し様子がおかしかった。



それは、

毎月のようにカウンタースタッフに

退職者が出ていたこと。



更にその時期、後に退職した

休職者も一名いた。




30名近くの大型店舗とはいえ、

今までの経験上、

もっとも深刻な環境だった。



私も着任して1ヶ月、

ある程度のコミュニケーションは取れていた。



大型店舗らしい構造。



各担当のリーダーが管理、命令。

効率と最大化を重視し、

徹底的にムダを省く。



数字への教育がいき届いており、


朝礼では、1日後の数字の変化の羅列が

20分続き、

『頑張りましょう』で終わる毎日。



業後は、

明日朝礼で発表する数字の準備や、

未達成のスタッフを詰める時間に充てていた。




そのオートメーションを、

ベテランから新人まで、

隙間を縫って愚痴をこぼしながら、

ドライに食らいつくそのタフさで

成立させている構造。




リーダー以上が議題にするのも

理解していた。



私も違和感を感じながら、

他エリアから来たマネージャーという

様子見精神で、

この構造の背景を伺いながら

仕事をしていたからだ。




このミーティングからは、

しっかり参画しよう。

そう意気込んでいた。




私はリーダーの投げかけに

共鳴し、


『やっぱり一丸となってやりたいよね。』


『どんなシーンで汲んでくれてないと感じたんだろう?』


と返した。




すると他のリーダーにもスイッチが入り、

我先にと次々口火を切っていく。




『なるほど...』

リーダー側間はどうやら日々吐露し合い、

一丸となっているようだった。



そこで私は、


『逆はどうだろう。

カウンターのみんなはどんなことを汲んでくれないとフロアに思ってるんだろうね』


と返した。



するとリーダーの1人が



『...どうせ愚痴しか出てこないですよ。』


と返した。



他のリーダーも表情で共感を示した。





そうか、ここか。




『...どんな愚痴だった?』


と私が投げかけ、



『....うーん。』

という沈黙が少し続いた時、



『時間が限られているので、フロア側の一部で考えた提案を話す時間に移ります。』



という進行役のマネージャーの言葉が、


沈黙に被さった。








次回

【第3話】過信と異変


に続きます。