常識のギャップ

夜10時を過ぎたあたり、妻と子供達3人は家を出る支度を終え、車で約5分程の妻の実家へ向かうところだった。 妻と娘と次男は、ただただ黙って妻の運転する車に乗り込んだ。 その時、長男が妻へ声を掛けた。長男は私と二人で話をしたいから車には乗らず、後から自転車で妻の実家に向かうと妻に伝えていた。 長男と私は、二人になり、長男は涙で濡れた目を赤らませながら、私へ話し始めた。私も冷静に話を聞いた。 「お父さんの気持ちはわかるよ。でも、お父さんの言う常識ってなんなの?お父さんは自分の常識で他人を理解出来なければ、その人を否定するの?」 「いや、今回、お母さんがした事は、世間一般の人が誰が考えても、おかしい事。だから常識がないと言ったんだ。非常識って事なんだよ。」 「姉貴も言っていたけど、お母さんのした事は、そんなにおかしい?俺も、そんなに悪い事ではないと思うよ」 「いや、だから、皆んなに出て行けと言ったんだよ。お前はまだ、世の中に出ていないからよくわからないと思う。 仮に例えば、世の中の家庭を持つ男女に、今回のお母さんの話をして、どう思いますか?と聞いたら、殆どの人はお母さんの事をおかしいと言う筈だよ。 お父さんは本当に酷いと思ったから怒ったんだよ。 今のお前にはわからないかも知れないが、お前が大きくなって家庭を持つようになったら必ずわかる事だから」 私はそう長男へ伝えた。長男は私達夫婦を心配していた。 長男自身、あの時に妻が近くの居酒屋に行っていると、電話越しに私に伝えなければ、妻の不始末が私にバレる事はなかったし、今日みたいな事には至らなかった。 きっと長男はそう思い、責任感に苛まれ、私と妻の仲裁をしなければいけない。そう思わせてしまったのだろう。長男が悪い事は全くないのに。そう思うと、心が痛む。 「〇〇(長男の名前)?もう遅くなる。気をつけて行くんだよ。ありがとう。お父さんとお母さんのめんどくさい話に巻き込んでしまって、すまん。でも、いつか、お前にも俺の考え。世間の常識が理解できる時が来るから」 そう、長男に伝えて、自転車で家を去る長男を見送った。 妻、子供達を家から出した後、私は一人になり、怒りは通り越して完全に冷静になれた。 今日、今までの事を何度も思い返した。私は一般常識を唱えただけで悪くない。その考えだけには自信があったし、ブレてはいない。 ただ、娘と長男が主張していた、私との常識のギャップだけはどうしても納得できなかった。子供達の常識に対するジェネレーションギャップにしか理解できない。 いや、待てよ。もしかして、私の常識が間違っているのだろうか、、 いや、間違っていない。俺はこの常識のバランス感覚で、今まで20年以上仕事もしてきたし、社会と関わってきた。前職では部下を束ねるポジションでもいた。自らの人徳もかわれていると感じた場面もたくさん体験してきた。間違いない筈だ。 でも、子供達はなぜ、俺の常識がおかしいと主張してきたんだ。、、わからない。 もしかすると、やはり、俺がおかしいのか。、、、、、