『ロビンソン・クルーソー』という物語は

読んだことがなくても、

タイトルだけは

知っているのではないだろうか。

 

船乗りのロビンソン・クルーソーが

難破して無人島に漂着し、

そこで28年間を過ごすという小説だ。

 

子供の頃に読んだ時には、

ただの冒険小説だとしか

捉えられなかったが、

関連書籍から、

これは色々な読み方が

できることを教えられた。

 

まず、

ロビンソン・クルーソーが

「船乗りになりたい」

と言った時に父親が、

こう説教する。

 

「そんな向こう見ずなことをしたら、

お前はきっと不幸になる。

船乗りなんぞというのは、

食うに困った貧乏人が

一攫千金を夢みて

一か八かのバクチでやったり、

暇を持て余して

湯水のように金を使う大金持ちが

お遊びでやったりするものだ。

おまえは、

そのどちらでもない。

家にいて

真面目に働いていれば

暮らしに困るようなことはないし、

いずれは私の財産を受け継いで

老後も安心して暮らせるんだ。

それなのに、

わざわざ家を捨てて

見も知らぬ土地へ出て行き、

危ないことや

苦しいことを

やろうとするのは

馬鹿げているよ」

 

いつの時代でも

親と子の考えは同じだ。

私も父親から

「地元に帰って公務員になれば、

安心して暮らせる」

と言われたことを思い出す。

 

しかし、

ロビンソンは

親のいさめを振り切って、

船乗りになる。

そして

難破したり、

海賊に捕まって奴隷にされたりして、

その度に

「もう船乗りはやめよう」

と後悔するのだが、

喉元過ぎればなんとやらで、

懲りずに航海に出て、

最後に

無人島に漂着することになる。

 

この点も私と同じ。

「公務員なんて夢がない」

と東京で頑張ったものの、

結局、

芽が出なかった。

 

わざわざ、

自分から苦労を招き寄せることは

しないほうがいい。

いい経験にはなるかもしれないが、

取り返しのつかないことになる

恐れもある。


しがいのある苦労ならいいが、

何の意味もない苦労は、

ただ虚しいだけだ。

危ないことに近づかないのは、

臆病だからではない。

臆病と慎重が違うように、

無謀と挑戦も違うことを知るべきだ。