私は30数年間、

日本語教師をしている。

1クラス20人ほどの

外国人留学生の前で

日本語を教えるから、

内向的な人間には、

かなりハードルの高い仕事だ。

 

教え始めたころは、

「うまく説明して日本語を分からせよう」

という思いが先に立ち、

一方的に話していた。

関西生まれで早口なうえに、

緊張して

自分でも何を言っているのか

分からなくなるものだから、

聞いている学生には、

よけい分からなかっただう。

学級崩壊になったことも何度かある。

 

うまく教えられないのは

日本語の知識や

教え方の技術が

足りないせいだと思い、

日本語文法や

教授法の本を読んでいた。


もちろん、

それも必要だろう。

しかし、

根本的な問題は、

一人の人間として

学生に対峙していなかったことだ。

自分をさらけ出すのが 

恥ずかしかった。

取り繕った自分を見せていた。

 

相手も自分も

機械ではないのだから、

人間的な交流が必要だ。

一方的に講義するのではなく、

学生と対話する中で

日本語を身に付けてもらえばいいのだと

気が付き、

実践できるまでに

20年ほどかかった。

 

いまだに話はうまくできない。

教え方が上手な日本語教師からは、

指摘されるところが

山ほどある授業だと思う。


しかし、

学生からは、

それが、かえって面白がられている。

これが自分の個性なのだと納得して、

ここ10年は自信を持って教えている。

 

仕事をする上でも、

自分らしくあることだ。

無理に自分を作らないほうがいい。

恥ずかしくてもそのままで、

自分を出していけば道は必ず開ける。