7年ほど前、

スリランカで5ヶ月ほど

日本語教師をしたことがある。


印象に残ったのは 

フレンドリーなスリランカ人だ。


私が外国人だからだろうが、

道を歩いていると知らない人が

「ハロー」と声をかけてくる。 


スーパーへ行くと

店員が話しかけてくるし、

下宿の大家は、

ちょくちょくスリランカ料理のおすそ分けをしてくれた。

 

そのスリランカが一昨年、国家破綻した。


もともと外国からの借金が大きかった上に、

政府のメチャクチャな政策(完全有機農業を目指して農薬を使わせなかったせいで農作物の収穫が激減した)

コロナ禍による観光客の減少、

その上、

ウクライナ戦争による燃料費の高騰が重なったことが追い討ちをかけた。


しかし、根本的な原因は、

大統領一族の腐敗した政治だったらしい。


その大統領は、

デモ隊に恐れをなして国外逃亡してしまったので、

スリランカは、もはや国家の体をなさなくなった。


現在は新大統領の下、

日本などの協力を得て、

国家再建を目指している。

 

一昨年は、

スリランカの友人や教え子から

SNSで、

「ガスがなくて薪で料理をしている」

「病院に薬がない。麻酔薬もなくなってきて、緊急手術以外は手術ができない」

「紙がなくて全国統一試験ができなくなった」

「ガソリンがなくて車を動かせない」

「朝8時から夜8時まで12時間停電している」

など、凄まじい話を聞いた。


これに比べれば、

国や社会に不満を言っている日本人は、

まだ恵まれている。

 

友人の一人はドバイに逃げた。

スリランカにいても

未来がないと言う。


とりあえず

短期ビザで親戚のアパートに入り、

就労ビザに切り替えようと

必死になって仕事を探していた。 


そんな苦しい足元を見られたのか、

やっと見つけた職場のオーナーに 

当初提示した給料の額を

引き下げられたそうだ。

それでもスリランカにいるよりはマシだと、

外国に逃げる人は、

後を絶たないようだ。

 

教え子の一人からは、

国の現状を嘆くメールが来た。

「これからどうするつもりですか」

という問いかけに、

こんな答えが返ってきた。

 

「生きるのは難しい。

日本語を勉強して

日本に留学したかったのですが、

留学ビザが出なかった。

もう40歳です」

 

「生きるのは難しい」。


内向的な人間なら、

誰しも感じることだろう。


石原慎太郎元東京都知事は

亡くなる際に、

「素晴らしい人生だった」

と言い残したそうだ。 


あれだけの才能と

自由奔放な性格なら、 

そういうことも言えるだろう。

どんな困難にも打ち勝って、

自分の道を切り開き、

他人をも引っ張っていける人だ。

 

内向的な人間は、

人生の荒波に揉まれながら、

何とか生き延びていくしかない。


他人と比べるのは良くないとは分かっていながら、

心に突き刺さるような痛みを感じた。