まず簡単な紹介から

広東語は香港と広東に通用する地元言語であって、今は中国標準語の下で一方言として扱われてるがじっさい中国語(これはつまり北京語、また北方官話とも、以下中国語のことを北京語で通称する)とは別で独自の規則と系統を持つ一種の言語である。そう、まるで英語とフランス語の分別である。しかし、この広東語は北京語よりも漢文(これはつまり古代中国語)の継承についていうと由緒正しき現代漢語であり、平上去入中の入声(これはつまり日本語でいうと音読みで「き・く・ち・つ・ふ」で終わる漢字の声調)が完璧といえるほど保存されてて、北京語よりも発音が綺麗であることと、古い漢文を支障なく文順や音声変えず直接に読み上げることができる点においては中国文学にはまってる者にとって勉強しなくちゃ損する言語といえよう。

 

さて、いよいよ本題に入る。

本編は声調編であると題されてる通り、まず所謂「九聲六調」のところから学習する。

ここの部分だと丸暗記してる人が多いけど、それがお薦めではない。声調発生の源から見てよろしいと思う。現代漢語の親はみな中古漢語である。中古漢語には清音と濁音があり、濁音の中には次濁音と全濁音がある。その上で平上去入という4つの声調があって、声調と音声とをあわせて話すのである。

まず北京語から見ておこう。(余計なこと言わずに直接肝心なとこを)

北京語の一声は、陰平といい、清音平声から発生した声調であり、調値は55。

北京語の二声は、陽平といい、濁音平声から発生した声調であり、調値は35。

北京語の三声は、上声といい、清音と次濁音の上声から発生した声調であり、調値は214。

北京語の四声は、去声といい、全濁音の上声と清音・濁音の去声から発生した声調であり、調値は51。

これで終わり。そう、北京語には入声がまったく無い。上声も去声も元の様子と変わって、元上声の一部が去声になってしまったのだ。

 

これと対照に次は広東語を見ていく。

広東語の一声は、陰平といい、清音平声から発生した声調であり、調値は55。

広東語の二声は、陰上といい、清音上声から発生した声調であり、調値は35。(北京語は21(4)、真逆で要注意)

広東語の三声は、陰去といい、清音去声から発生した声調であり、調値は33。(北京語が51なのに対して激しい下降が無くて平であり、なお北京語ではこれが発音できない)

広東語の四声は、陽平といい、濁音平声から発生した声調であり、調値は21。(北京語は35、真逆で要注意)

広東語の五声は、陽上といい、濁音上声から発生した声調であり、調値は13。(北京語は21(4)、真逆で要注意、なお北京語ではこれが発音できない)

広東語の六声は、陽去といい、濁音去声から発生した声調であり、調値は22。(北京語が51なのに対して激しい下降が無くて平であり、なお北京語ではこれが発音できない)

 

ここまでが六声だ。見ての通り、平上去からそれぞれ清音と濁音の区分けによって奇麗に二種類の声調に進化したことがわかる。北京語の上声・去声の混乱と大違うのね。調値が真逆なのも気になるところ。

次は入声について学習する。

広東語の七声は、上陰入といい、清音入声の上半分から発生して、調値は5(5)。一声・陰平と同じ。

広東語の八声は、下陰入といい、清音入声の下半分から発生して、調値は3(3)。三声・陰去と同じ。

広東語の九声は、陽入といい、濁音入声から発生して、調値は2(2)。六声・陽去と同じ。

調値は同じけれども、声調自体と関係のない子音で終わる発音のことから、九聲六調(9つの声調あるがじっさい6つの調値しかない)である。

 

これで声調の部分が一応終わるということで、次は常用漢字・表現編に入ると思う。