千歳の試合は、個人的に悪くないと思っていたし、今振り返ってもそこそこ良い試合が出来ていたと思う。
当時、PWSではあまり出来なかったタッグマッチに挑戦して、なおかつ田川とのタッグでそこそこのコンビネーションを発揮できた。

お祭り特有のノリの良さで、何をやっても盛り上がる。気分よくリングを降りた。
EWAの他の試合も見て、単純にプロレスファンとして「良いものみたなー」なんて、田川と、レフェリーのテッドワタナベと三人でわいわいしていた(テッドは、途中から自衛隊の戦車演習が気になってたみたいだけど)
ちなみに、恐らく後に登場する、EWAのエース「スナイパーケンタ」とはここで初対面。ちなみに、この時点では軽く挨拶をしたくらいで接点はなかった。

2015年現在のスナイパーは、プロと見間違うような体躯とルックスで、EWAで大活躍してるが、当時は線が細くてボウズ頭のかわいい男の子といった印象。まぁ、この話はまた今度。



数日して、ひょんなきっかけから一緒に興行をしたEWAの人達が、千歳の感想を書いているブログを見つけた。

楽しかったなー、なんてのんきに思い出しながら読んでみると、そのどれを見ても、PWSの試合の事は散々な書きぶりだった。

「自己満足」「自己陶酔」「あれはプロレスじゃない」

俺は、もう単純に「一生懸命やったのに、悲しいなあ」と思っていたが、同じものを見ていたテッドは冷静で「まぁ当たってるよ」と笑っていた

「俺らは、プロじゃないのに「プロレス」名乗ってやってるのなんて、自己満足に決まってんじゃん。それを「つまんねーよお前」「基礎ができてない」って言われても「そうですよね、それでもやりたくてしょうがないんです。許してください」しか言うことないわ。最初から、リングとお客さんに頭下げて、プロレスやらしてもらってんだから」

目からうろこが落ちる思いだった。
確かに、俺はお客さんに求められてリングに立ってるわけじゃない。プロレスがしたくてしたくてしょうがなくて、リングに上がってる。

ちなみにこの、PWSへの評価は当時の皆の正直な気持ちもあり、また当時の緊張関係からでたものだったり、他この場では書けないようないろんな事情から出たものだと理解しているので、それに対する恨みなんかは、もちろんない。
それでもあえて、この事を書いたのは、ここで自分の試合をそう評価されたことで、今日に至るまで変わらない自分のイデオロギーが生まれたからだ。

「自分が楽しくない試合はしない」
「お客さんのために、みたいな嘘臭いことを言わない」

要は、自己満足であることを受け入れた。
もっと言うと「自分がやってて楽しいんだから見てる人も絶対楽しいに決まってる」と思い込むことにした。
そうすると不思議と、そういつまた雑音が聞こえなくなった。プロレスに取り組むのがますます楽しくなった。
そういう意味で、この出来事は俺の社会人プロレスキャリアの中で、本当に重要な出来事だった。

そしてこの年の冬。シングル戦で初めてのメインイベントを経験することになる
…んだけど、その話はまた次回。