私には、今年85歳になるおばぁちゃんがいる。
血は繋がっていない。
けれど、私が生まれてからずっと
孫として可愛がってくれている。
今、おばぁちゃんは500キロ離れたところに住んでいる。
私が忙しくなってからは、
毎月荷物を送り、週に数回電話をし、
年に数回会いに行くくらいしか出来ないけれど、
たいそう喜んでくれる。
近年、おばぁちゃんは独りで猫たちと暮らしている。
体調を崩してからも、
集団行動が苦手なことと、
おじぃさんと過ごした家を離れたくないという理由で、
ヘルパーさんにサポートしてもらいながら、暮らしている。
おばぁちゃんは猫が大好きだ。
すでに小さい頃、にゃーにゃーばーばーと呼んでいたから、
きっとずっと昔から猫好きだったのだと思う。
おばぁちゃんには血の繋がった子供がいない。
だから、余計に猫が可愛くて仕方がないのかもしれない。
今日、いつものように電話が鳴った。
しかし、おばぁちゃんの声にはハリがなかった。
心配して話を聞くと、
ヘルパーさんが産まれたばかりの子猫を
汚いと言って洗って、 乾かさずに放置したので、
体温が低下して子猫が死んだ、というのだ。
惨い。
常日頃、猫に批判的な人間が
知識もなく、無責任なことをしたおかげで、
1つの命が消えた。
母猫がいるんだから、
母猫が子猫を綺麗にするだろうよ。
洗うには寒すぎるし、小さすぎるだろうよ。
大切に育てていた子猫がいなくなって、
調子が悪くならないか、非常に心配。
周りも承知のはずなのに。
おばぁちゃんの病気は治らない。
だから、気力で生きてもらうしかないことを。
人の世話になり生きていかなければいけない時、
その代償として、悔しい思いをしなければならないのだろうか。
「お尻が汚いゆうたかて、洗わんだってよかったんや」
誰にもぶつけることの出来ないおばぁちゃんの言葉が
受話器から嗚咽と共に流れていった。