認められないこの気持ち | さやみる推しのNMB妄想小説 別館
今日は朝から仕事
この仕事を始めて2年ほど
最初は全然出来なかったけど
最近はお客さんから褒められたり
上の人から仕事を任されたりした
それも全部先輩たちの指導のおかげ

「山本お疲れー企画書読んだで
ばっちりやわよーやった」

こんな笑顔で気の利いた一言を言える
私の教育係の先輩…田中さん
イケメンで優しくて人望があって
みんながついて行きたくなる人
私も尊敬している
いつかは田中さんのようになりたい…




でも、私には田中さんを裏切ってる





「山本俺ら飯行くけど来いよー」

「あ、私買ってきちゃいました
奢ってもらえるのに残念ですー」

「そうか?お前いっつも買ってるなぁ
ちゃんと食べろよぉー?」

ホントに色んな人を見てるな
心底感心して屋上のベンチへ
のんびり食べようと思ったら
後ろから誰かに目を塞がれる
分かってる振り返らなくても
この甘い香りと柔らかい手、1人だ

「渡辺さん、何してるんですか」

「んー?彩ちゃんが一人で行くところ
見えたから」

「追いかけないでください
田中さん達ランチ行きましたよ
行かないんですか?」

「んーいいよー
あ、彩ちゃんまたそんな栄養ないものを
はい没収ー」

「あ、ちょっ!」

「代わりにはい、お弁当っ作ってんで」

「…」

「ん?」

「田中さんに作ればいいじゃないですか」

「んー、まぁ大ちゃんも私のご飯飽きてきたやろー」

渡辺さんは田中さんの…奥さんだ
一昨年結婚したばかり
私が入社した時新婚さんで
周りの人達もずーっと冷やかしてた
バリバリに仕事出来る田中さんと
愛嬌がよく温厚で場の空気を良くする
渡辺さんは誰が見てもお似合いだった

「もぉーなんで怒ってんの?」

「別に怒ってません」

「怒ってるやん…こっちみてくれへん」

「…」

「そんな顔しないでよ…ごめんね」

渡辺さんは悲しそうに謝る
またその顔させてる自分がムカつく
でも私の機嫌を気にするところに少し優越感を
感じてしまって思わず頭を引き寄せて
キスをした

「…」

「フフフッ強引やなー彩ちゃん」

「職場なんで名字で呼んでください」

「2人しかおらんのに?
最近彩ちゃんずーっと連絡返してくれんし
目も合わせてくれへん
嫌いになったん…?」

「違いますよ」

「…」

「…」

「…ねぇ」

「…好きやで、美優紀」

「フフッ」

もう、分かっただろう
私達はそういう関係だ
きっかけは入社して半年経った頃
彼女が私の教育担当で
私が大きなミスをした仕方ないことだと
周りが励ましてくれたけど
私納得できなかった
自分が悪い、自分のせいだと責めた
そんなとき彼女が飲みに連れていってくれた
お酒が入りほろ酔いな2人

「彩ちゃんはさ彼氏おらんの」

「あぁ、別にいらないんで」

「もしかして、、女の子が好きやったり?」

「…引いてもらっていいですよ」

「んーんやっぱりそうか〜
女の子からもめちゃめちゃモテてるし
女の子の扱い上手やもん!」

「ハハッそうですかね」

「私も彩ちゃんのこと好きになりそうやもん」

「からかうのやめてもらっていいですか?
新婚のくせに」

「そうやけどさ
彩ちゃんの事見てたら心配になる
1人で抱え込んじゃうし、周りのことみて
それに…」

なんだか腹が立った
全部お見通しかよ…バカにしてんのか

「彩ちゃんがさ困ってたら私」

「困ってますよ」

「え?」

「渡辺さん好きになっちゃって」

「…え?」

「ハハッキモいでしょ冗談ですよ
渡辺さんも気をつけた方がいいですよ
私みたいに歪んだやつに向き合いすぎると
傷つくことに…うっ」

話してる途中頬をつねられた

「キモくない、引いてもない
嬉しい…」

「は?何言ってんすか
女が女好きだって言ってるんですよ
体の関係だって求めようとするくらいの
分かりますか?
傷つくのを心配してんのか知らないっすけど
そーいう優しさが残酷で…」

「今までどんな人と関わったんか知らんけど
昔の人と私を同じにしないで」

「はぁ、、」

「…ンッ!?」

「私が求めてるのはキスとか体の関係
職場の先輩でましてや既婚者の人に
そんな願望抱いてるんですよ?
倫理的に問題しかない
会計しましょ」

固まる渡辺さんをほって
会計をしてタクシーを拾う

「はい、どうぞ」

タクシーに乗せ
扉を閉めようとしたら腕を引っ張られた

「ちょ、私は」

「彩ちゃんの家の住所はやく」

「いや、、だから」

「先輩命令」

(お客さーんどこまでなん?)

「あ、えっと…」



「なぜ、私の家に先輩が…」

状況が分からない…なんだこれ

「あの、田中さん心配しますよ」

「ちゃんと連絡した
彩ちゃんの家に泊まるって」

「は!?泊まる!?いや、え、、、」

「だってあの時バイバイしたら彩ちゃん
もう話してもくれへんつもりやったやろ」

「…」

「洗面借りる」

「どうぞ、、」

もぉよー分からんあんだけ言ったのに
じゃあしていいってこと?
いや、そうじゃなくって
頭のパニックを抑えようとしてたら
洗面台を見てフリーズしてる渡辺さん

「どーしたんですか?」

「なんでこんな歯ブラシあんの?」

「あー泊まっていった子が置いていったやつ」

「…」

「分かったでしょ
渡辺さんのこと好きになっちゃいましたけど
私別にモテないわけじゃないんで
なんとでもなりますからだから同情を…

ンッ!?


お、おいっ!なにを」

「…やだ、寂しい」

「は?」

「他の子見ないで…」

この言葉何度も色んな子に言われた
その時いつも微笑んで
君しか見えないよなんて甘い言葉を
囁けたのに…実際好きな人を前にすると
こんなにも…ドキドキするもんなん…?

「なに、言ってるんですか
渡辺さんは結婚してて私はそんな人に
手を出そうとしてる馬鹿で…」

「バカちゃう…もう責めないで」

「やめてください、我慢できなくなる」

「いいよ」

「…ほんとに、やめてください
ダメなんですそんなことしたら私は」

「彩ちゃんのせいじゃない
2人のせい…
でも私女の子とえっちしたことないから
教えてね…?」

そうやって恥ずかしそうに笑う彼女に
完璧に心を打たれ抱いてしまった



その日から定期的に体の関係を持つ
私と二人で遊ぶ、二人で一緒にいても
誰も何も言わない
仲のいい先輩後輩でよかったなーと
田中さんも何度も美優紀の面倒ありがとうと
私にお礼を言う
その度胸が張り裂けそうだ
こんなにも支えてくれて育ててくれてる
先輩の大切な奥さんに私は手を出してる
裏切ってるんだ
田中さんが最低な旦那なら奪ってやるくらい
言ってやったけど、こんなにも素敵な人はいない
渡辺さんを幸せにしてくれる人分かってるよ
私の入る場所がないこと
渡辺さんが体の関係を持つことを続けてるのは
体の相性がよかったから
女同士だから関係を疑われることなんか
ほとんどないから…
でも、その考えが私を苦しめてるんだよ
男ならきっと正当に責められ避難された
でも女だから
まともに奪ってやるとも言えないし
許されるんじゃないかと思ってしまう

「彩ちゃん?」

「…」

「今日さ大ちゃん出張やねん」

「…」

「寂しい」

「うちくる?」

「うんっ!」

所詮わたしはそんな立場だ…
でも彼女は悪くない私を利用しないから
私が本当に好きになってしまったから
苦しんでいるのを知っているから
だから受け入れてくれているんだ
定期的に私を誘うのもきっとそうだ
ホント何もかもが嫌になってくるよ

また今日も抱いてしまった
寝顔を見ると罪悪感に襲われる
こんなに純粋な人を私が黒くしている
最低だ最悪だ
声を殺して泣いていると
優しく包み込まれた

「また一人で泣いてる」

「ほっといてください」

「反抗的やなーもぉ
ほら、大丈夫ここにいるから」

そうやって抱きしめられると
全て何も悪くないんじゃないかと魔法をかけられる

「美優紀…」

「ん?」

「好きになって…ごめんなさい」

「…」

「…」

「彩ちゃん
好きになってくれて…ありがと?」

あぁ、、、もういいや
今日はもう彼女腕の中で眠ることにする
夢の中で…せめて夢の中だけは
どうかお互いが笑ってますように