字がうまくなりたい | 千日の鍛、万日の練

千日の鍛、万日の練

2019年7月より居合の道に入った男。
ろくに運動経験もないにわか初心者が、
無双直伝英信流を学びながらどう成長し居合の道を歩むのか。
誤った知識や戯言も含めて成長を振り返るための一日記。

先日先生から尺八をお借りしたが、その際に尺八とは別にいただいた物がある。

それは、扇子をスキャンした紙。
何種類かあったが、それぞれの扇子には英信流の種目が書かれていたり、多少の説明書きを加えたものもあった。
扇子に書かれている字は、先生のもの。
誠に達筆である。

居合がすごくて、柔術もすごくて、合気もすごくて、
棒術とかもいろいろすごくて、尺八もすごくて、字もじょうず!


あなたは超人かなにかですか

いくつか持って帰ってよいと言われたので見繕っていると、目に留まったものがあった。
その扇子には、大日本帝國海軍の五省が記されていた。
内容を、意味を添えて紹介する。

大日本帝國海軍 五省

一.至誠に悖(もと)るなかりしか
〔誠実さや真心、人の道に背くところはなかったか〕

一.言行に恥づるなかりしか
〔発言や行動に、過ちや反省するところはなかったか〕

一.気力に缺(か)くるなかりしか
〔物事を成し遂げようとする精神力は、十分であったか〕

一.努力に憾(うら)みなかりしか
〔目的を達成するために、惜しみなく努力したか〕

一.不精に亘(わた)るなかりしか
〔怠けたり、面倒くさがったりしたことはなかったか〕



う~~ん、これはいい。

この五省は、現在も海上自衛隊幹部候補生学校の伝統として引き継がれているようだ。
それぞれの意味の部分は同校のHPより引用した。

これらの内容は、シンプル且つ重要な事柄ばかりである。
そのうち、実物の扇子を持ってきて先生に一筆いただきたいほどだ。

自分で書ければいいのだが、私ははっきり言って字が汚い。
以前、友人の結婚式の受付で筆ペン記帳させられたときは情けない気持ちになったものだ。

居合を始めてからというもの、日本人としての嗜みと素養をしっかり持ちたいと思うようになり、字についても少しずつ練習している。
このブログのタイトルは宮本武蔵の五輪書に記されている言葉を略したものだ。
その武蔵、武だけではなく画人としても相当なものだ。
武蔵は、兵法の完成には諸芸、すなわち思想や芸術を学ぶ必要があるとも言っている。

冒頭で、先生のことを超人か何かですかと冗談交じりに書いたが、居合の先生方というのは武蔵の言う通り、書などにも精通しておられる方が多いというイメージがある。

私はこういう世界に気づくのが遅すぎた。
まだまだこれからだと人からは言われる年齢なのは理解できるが、それでも20代の有り余るバイタリティや行動力を以てこの世界に臨みたかった。
歳をとったからこういう世界に向き合える面もあるのかもしれないが、歳を重ねると人間というのはどこか色々な事に達観した気になってしまう。
もっともっと無垢な頃からこの世界と向き合えていたら、今の私はどういった自分になっていたのだろうか。

とりあえず字に関しては、せめて名前と住所くらいは人に見せられる字で書けなければ・・・。
先生の字はレベルが高すぎて、崩して書いてある字も多いためそのまま真似ることは難しいが、ある程度の見本としてこの五省を書いて練習しようと思い立った。

いつか立派な字が書けるようになるぞという思いを込め、ここで敢えて恥を忍んで現時点での私の字を晒しておこうと思う。

これでも随分マシになった方である。
練習の甲斐あってか、件の結婚式記帳のミミズでももう少しまともに這うような字に比べれば見違えてきた。

とはいえ乱筆は乱筆。
画数の多い漢字になってくると顕著にバランスが崩壊する。

草書はまず解読すらできないので、楷書や行書の代表的なところで臨書してみようかと思っている。
九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)や、蘭亭叙(らんていじょ)あたりが良いのだろうか。

いずれ、今日晒した乱筆と比較してみて上達を実感できる日が来ればと思う。
少しずつでもいいので、勉強を継続して立派な字が書けるようになりたい。

日々、精進。