ストーカーのお話② | スロッターからの転身 〜嫁の介護師へ〜

スロッターからの転身 〜嫁の介護師へ〜

おっさんスロッターがくも膜下出血で倒れた嫁の介護をすることに。
また嫁と連れスロする日を夢見る奮闘記!



用意ををすると言っても上着を羽織るだけで良いのだが、さっき顔を合わせているので一眼ではおれと分からないような格好をしようと考え、ニットを被ることにした。


ドアの内側で末っ子の合図を待つ。


向こう
行ったでぇ!


声でかいわ!
ヤツにバレる。

おれの住んでいる場所は、閑静な住宅街と言えば聞こえは良いが、ただ単に田舎なので夜も19時を過ぎると人通りが極端に少なくなる。

そのため、家の中で騒ぐと外まで丸聞こえになってしまうのだ。

階段の上の末っ子に向け、口に人差し指をあてながらシーっとしてから出撃した。





本来ならばこんな危険なことをするべきではないのだろう。
末っ子の言う通り、すぐさま警察に連絡をするべきなのだ。

しかし、インターフォンを鳴らし、堂々と家の前に車を停めていたにも関わらずスットボケやがったのがどうにも気に食わない。

絶対に誰かが出てくるとわかっているのに。だ。

そこは主として一言いってやりたいと思ったのだ。



さてどうしてやろう。


敷地内でしゃがんで待ってやろうか。

で前を通りかかったヤツに向け

おいっ!


いやいや、近所にバレる。
何より、おれはもう大人なのだ。

46歳の立派なおっさんである。
ここは一つ、穏やかにいこうではないか。


当然車は既になく、別の場所に停めてある様子。

静かに敷地を出て辺りを見渡した。

誰も居ない。

家は南から三軒目。北の方向にはあと十軒ほど民家が軒を連ねている。


近い方から攻めてみよう。

南へ向かうとすぐにT字路にぶつかる。
そこで左右を見回した。

すると、左の空き地の前にさっきの軽が停めてあるのが見えた。

見つけた!

自分でもビックリするぐらい躊躇いなくズカズカと近寄った。


が、中に人の姿は見当たらない。

どうやらまだウロウロしているらしい。

歩いてきた方に目をやると、人らしき影が見えたが暗すぎてヤツなのかがわからない。

よし、確かめよう。

また躊躇わずに人影の方へ歩いて行った。
向こうはおれに気付いておらず、次の通りの入り口付近で立ち止まっている。

すると、こちらに気づいたのか背を向けて歩き出そうとした。


待てゴラァっ‼️


と、言いたのをグッと堪え、

おれ
兄ちゃん、ちょっと待って。

ヤツ
は?


何してるん?

いや、別に何も。

いやいや、さっきからウロウロしてるやん。

はぁ、まぁ、歩いてましたけど。


あれ、(白の軽)兄ちゃんのやろ?

え?あの車ですか?
違いますよ。

さっきあの車がうちの前に停まってたんやけど。
インターフォン鳴らしたやろ?

いや、違いますよ。

嘘つけ。
その後家の周りウロウロしてたやんけ。
二階から全部見てたんやぞ。

ああ、それは僕ですけど。
あの家の人ですか?

おぉそうや。
車はお前のと違うんか?

はい、違いますよ。

ああそう。
ほな車の横で持ち主が帰ってくるの待っててもええか?


え?まぁ、ええんとちゃいますか。

ええねんな?
ほぅ。ほな待っとくわ。


おれが車の方へ歩きかけた瞬間、

あの、すいません。
ウソついてたのは謝ります。

僕が鳴らしました。

見え見えのウソをつき続け、シラをきりと通そうとしたのだろうが、流石に車で待たれてはバレると思ったのだろう。やっと認めやがった。

何の用やねん。気持ち悪いやんけ。

僕、アムロ(仮名)というんですけど、あの、娘さんと友達というか、よく会わせていただいてて、あと弟(長男)さんとも。
あ、弟さん、居ます?

(あほか、見たらわかるやろ。車ないやんけ。)



(しかしやっぱり娘が目的か!このストーカーめ!)

ああ、聞いたことあるわ。
なんか、タイヤがどうとか。
(長男がスタッドレス タイヤを譲って貰うと言っていた)
でも、娘は白の軽の男の人は知らんって言うとったぞ。

ああ、仕事の関係で車がコロコロ変わるんです。タイヤは、その、電話が調子悪くて、弟さんからの連絡もないもんですから・・・

そのアムロ君が何をコソコソしてるねん?
娘か?

僕、近所に住んでるんです。でも、訳あって今は別のところに住んでるんですけど、たまたま帰って来たもんですから。

ふぅん。
で、何でピンポンダッシュやねん。

いや、親御さんとか出てきたらイヤやなぁと・・

(アホやろコイツ。)

なんでやねん。娘に用があるんやったら堂々と呼んだらええやんけ。

はぁ、実は、今日の夕方電話で話してまして、で、僕の電話がおかしくて、出れるんですけどかけることができないんですよ。だから弟さんにも連絡できてなくて・・・

へぇ。(どうでもええわい)

で、あれか、アムロ君は娘が好きなんか?

まぁ、そう・・・ですね、はい。

それ、ストーカーやぞ。

・・・

あのな、娘が誰と何しようがどうでもええねん。
おれは細かいこと言わんから。
あとは二人の問題やんけ。
さっきも言うたけど、会いに来たんやったら堂々としてたらええやん。
ややこしいことするから、いま家の中大騒ぎやぞ。もうちょっとで警察呼ぶとこやったわ。
もうええ大人なんやから、好きにしたらええ。
そのかわり、娘に危害を加えたら、そのときはわかってるよな?

危害って、そんな・・・

で、このこと娘に言うてもええか?

え・・・
いや、それは・・・

言うぞ。

・・・はい。

とにかく、長男も娘も今居らんからもう帰れ。

はい。すんませんでした。




概ねこんなやり取りをし、追っ払うことに成功した。


家に戻り、すぐに娘にLINEを送信した。





伏せてあるのは相手の本名だ。

その後娘と電話でことの顛末を話したのだが、夕方に電話をしていたことも確認がとれた。

そして、狙われていることを伝え、あいつはやめておけとクギを刺しておいたのは言うまでもない。



おそらく、電話で話していたときに娘が家を出る時間を言ったのだろう。
それに合わせてやって来て、職場まで送って行こうとしたものと思われる。

しかし、残念ながら娘は出た後で、待てど暮らせど出て来ないもんだから家の周りをウロウロしてたというわけだ。

インターフォンを鳴らしたのは、出かける娘が出ると思ったのだろうか・・・謎のままだ。

まぁ何にせよ、頭が悪過ぎる。






僅か30分ほどだったが、目眩も吹っ飛ぶほど頭に血が上った出来事であった。

病は気からとはこういうことなのか。

そして、帰ってきた長男にもこのことを伝えたのだが、長男から聞いた話でさらに胡散臭さが強調された。



つづく・・・