ホンモノの醤油はこうして作られる!~堀河屋野村さん訪問~ | おうち和食十二か月 おうち和食研究家・井上 憲子

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「おうち和食十二か月」は、生徒さん宅にお伺いする家庭教師スタイルのお料理教室です。グループレッスンも承ります。
おうち和食研究家 近茶流懐石教授 / 野菜ソムリエプロ / 調味料ソムリエ  井上憲子   

美味しく手軽なおうち和食に欠かせない上質調味料。

なかでも醤油はおうち和食のキモ、と言っても過言ではないでしょう。

 

私が愛用しているのは

昨年、ライフスタイルメディア・コモリエでも

ご紹介した「三ッ星醤油」

 

昔ながらの手作業で作られています。

 
今回、念願叶って
この三ッ星醤油を作っている和歌山県御坊市の堀河屋野村さんにお邪魔することができました。

 

風情のある佇まい…。
 
江戸時代、
紀州藩の廻船問屋を営んでいた頃
お客様へのお土産として作っていたのが
醤油や径山寺味噌。
その頃の製法そのままに
大豆、小麦、手麹にこだわり
今も「ホンモノの醤油」を作り続けていらっしゃいます。
 
醤油作りの工程を整理すると・・・
 
蒸した大豆と
焙煎して粉砕した小麦を合わせたものに
種麹を加えて「醤油麹」をつくる
「醤油麹」に食塩を加え「もろみ」をつくり、寝かせる
「もろみ」を攪拌しながら、熟成させる
「もろみ」を圧搾し、「火入れ」をする
 
この工程をどのように進めているのか
18代目の圭佑さんが蔵を案内してくださいました。
まずは、
「三州釜」と呼ばれる直径1メートルを超える和釜(写真左上)で
大豆を薪でじっくりと炊き
鉄のほうろく型の鍋で(写真右上・ちょっとわかりにくいですが)
小麦(写真左下)を炒ります。
 
大豆はもちろん小麦も国産、自ら産地に出向き
納得のいく材料を厳選されているとのこと。
 
炊き上がった大豆と粉砕した小麦(写真左下)を合わせて
種麹と混ぜ(写真左上)、
麹を4日間かけて育てていきます。
 
その間も朝に夕に手入れを行い、麹を育てるのです。
麹室も(写真右)昔から使われている部屋そのまま、
当然空調設備もありません。
寒い時期には、火を焚いて室を暖めるのだそうです。
(麹室の中には、薪をくべるためのドラム缶が!)
 
ていねいに育てられた醤油麹は塩水と混ぜて
高さ2メートルはある木桶で仕込みます。(写真右下)
木桶を使うのはもろみが呼吸しやすいから。
やはり生きているのですね。
「櫂入れ」という作業で攪拌し、もろみに酸素を送り込みながら
発酵・熟成のため、ふた夏越します。
 
その後、圧搾してから
和釜で薪を使っての火入れ。
そして、ようやく三ッ星醤油が完成するのです。
  
大豆も小麦も農産物。
同じ時期に採れた同じ品種であっても
同じように火を入れても
仕上がりは微妙に変わってきます。
和釜で薪火で、となればさらに難しいことでしょう。
そして、空調設備もない昔ながらの麹室での麹つくりや
大手メーカーなら機械で行ってしまう櫂入れの作業。
大変な重労働であることは容易に想像できます。
 
それでも・・・
それだけ手をかけても美味しいものをつくりたい、
という圭佑さんの情熱は
お父様からも受け継がれたものなのでしょうね。
 
蔵を訪問させていただいて
本当に良かった!
美味しさの秘密を実感し、ますますファンになりました。
 
堀河屋野村のみなさま
お忙しい中、どうもありがとうございました!
 
          蔵の中には醤油発祥の寺・興国寺のお札が…。