雨の匂いだけで気分が下がるし、
気圧の変化で頭痛くて大変だし(台風なんか来た日にゃあ…)、
ベランダに出て夕涼みすることも出来ないし、
散歩だって気楽にできない。
僕は雨が嫌いだ
こんなこと言う人がいる。
『素敵な傘を持てば、雨の日も楽しくなるよ!』
本当にそうだろうか?
例えば先人の言葉に倣い、素敵な傘を買ったとしよう。
雨の日の朝。
わくわくして家を出て、まだ使われてない傘をさす。
色が流された灰色世界を飾り付ける色、柄…
おお。確かにちょっぴり楽しそうだ。
駅に着く。
傘を畳む。
電車に乗る。
雨と風の音の所為で、昨夜はあんまり眠れなかった。
乗り換え駅まで20分…うつらうつら…
…………
気が付けば駅に着いて、人々が乗ってくる。乗り過ごせば遅刻してしまうかもしれない。
「すみません、すみません」と腰を低くしながら、素早く電車から降りる。
……ふぅぅ。
よかった……
と、思うも束の間、次ははぁぁ、と溜め息。
「傘…忘れた…」
楽しかったのは家から最寄り駅までの一瞬。
その後一日悶々とした日々を過ごすことになる。
ほら、雨の日って、楽しくない。
僕は雨が嫌いだ
傘は忘れるもの
家を出るときに雨が降っていなければ傘は持って出ない
天気予報?そんな不確かな情報で、傘を無くしたくない。だって家にはあと一本しか残ってないから。しかもボロボロのやつ。
今日も一日が終わる。
明日は台風だそうだ。
最寄り駅を降りる。
家までの道を歩く。
雨が降っている。
人々は傘をさす。
どしゃ降りだ。
傘なんかない。
髪が濡れる。
家まで歩く。
ひたすら。
歩く歩く。
歩く…。
歩く…。
ぽた。
ぽた。
ぽ…
ふと、気が付く。
僕は下を向いたまま歩き続ける。
ああ、そうか。
顔が濡れるのが嫌なのか。
眼鏡をしているときは、眼鏡が濡れて前が見えなくなっちゃうもんな。
でも今日は眼鏡をしていない
……
ふと、思い付き、顔を上げる。
顔に雨粒がかかる。
不快に思いつつも、更に顔を上げる。
ゆっくりと、天を仰ぐ。
街頭が街を照らす。
月が光っている。
雨が降っている。
雨が頬を濡らす。
……
すとん、と何かが落ちる。
そうか。
これが『生きる』ってことか。
僕は雨が嫌いだ。
僕は雨が嫌いだ。
でも……
雨に降られることは、それほど悪くないかもしれない。