このマンションの管理規約は国土交通省が作成したマンション標準管理規約を参考にして出来ている。全国の他のマンションと同じである。このマンションの管理規約にも当然総会成立要件が規定されている。
マンションの部屋の大小にかかわらず1室1議決権となり、開催する総会について出席議決権数と欠席委任議決権数の合計が議決権総数の半数以上であれば、総会は成立する。いわゆる定足数だ。これを総会開会宣言直後に総会資格審査を行い、出欠委任集計を発表しなければならない。定足数に満たなければ流会となる。
そして通常の総会普通決議は出席議決権数と欠席委任議決権数の合計の過半数で決することになる。
次に管理規約では総会の議長は理事長が務めることを規定している。
総会の議決権を有する区分所有者は管理組合運営に関心がないこともあって、年に一度土曜か日曜の午前中に開かれる総会ですら個人的な都合で欠席するのがほとんどで、管理組合発足以来30年間の現実だった。だから欠席委任状の99%は長年議長委任される。総会では出席した役員と欠席委任で圧倒的多数を制してしまうので、定期総会にしろ臨時総会にしろ理事会が総会日時や上程議案を決議して開催を決めれば、事実上総会前にすべて決まってしまう。総会は形式的な手続きになり、長い年月を経て形骸化している。
区分所有者は忙しいという私的都合を欠席理由にせず、出席して会議の目的である議案について質疑応答し意見を述べてくれれば、少しでも活発で有意義な総会になるが無理な願いだ。長年、役員以外の総会出席区分所有者は役員より少なかった。ただ、会議の目的を示して招集されている総会なので、出席区分所有者は議案から逸れた質疑応答や意見表明などはできず、動議も認められないのが明文化されていないが管理規約の趣旨だった。
4月1日臨時総会まで、あと10日となった。
相変わらず毎朝打球をしているAのところへEFが足繫く通っていた。欠席する全区分所有者に議長委任せずAに委任してくれるように頼みにいっていて、その結果を毎朝Aに報告していたことが1ヶ月ほどしてわかる。
理事のDと自分は1日おきに交替で日々管理事務所に行って、少しずつ返送されてくる出欠票兼委任状の有効性確認、仕訳、集計に立ち会っていた。自分は役員で職責上、出欠票兼委任状の開票作業を立会いしている。欠席する区分所有者が誰に委任するかもすぐわかる。
今まで議長委任しかしたことのない欠席区分所有者の中からAに委任している人達がパラパラと出始める。自分と会えばよく話する人でさえコメント欄で自分を批判する者まで出てくる。凄まじい委任状争奪戦が始まっていた。Aは上場企業の株主総会でいうプロキシファイトをしかけていた。
役員にはAが委任状争奪戦を仕掛けていると伝えた。自分もそう思っていたが、AがどんなにAグループや協力者を総動員しても出席議決権数と欠席委任議決権数の合計の半数以上を制するのは不可能というのが、全役員の見解だった。管理組合運営のことを何も知らない区分所有者はAに理事会のデマを吹き込まれて、次々とAに委任していった。
3月25日に役員欠格事由で理事を失職したBはまず区分所有者として登記情報を法務局に届け出て更新し総会出席権議決権を回復する。
欠席委任状は続々と返送されてきていた。4月1日臨時総会は目の前だった。
以降の話は次のブログ「マンション自主管理組合25」に譲ることにする。