昭和50年代初めに竣工したこのマンションはディベロッパー(施主)の子会社が管理会社を受け持った。
このマンションの管理人として管理会社に雇われたのが20歳代後半の3人だった。その14年後、運営が管理会社から自主管理組合に移行したので、その3人は管理会社の推薦で自主管理組合の従業員に雇われることになった。彼ら3人は令和4年の70歳代前半まで29年間勤めあげることになり、自主管理組合は発足から30年間正規職員の入れ替わりがまったくなかった。3人は管理会社からだと40年以上このマンションに従事したことになった。営繕の1人を除き二人は支配人と会計を含む業務責任者となった。
その彼ら3人は令和4年1月に全員8月に退職すると言い出した。彼らの日常業務の洗い出し把握が必要になる。新しい勤務体系の構築と新従業員の雇い入れに迫られ、管理組合は発足以来初めて人的体制の刷新整備が急務となる。
その中で自分が監事として彼らの業務監査、会計監査をした時、残存する書類から色々なことが判明してくる。修繕工事、備品購入について相見積書がまったく見つからない。1社見積の金額を総会で承認されたら、そのままその業者にその金額で発注。発注側二人と受注工事業者の間で緊張感が失われ、馴れ合いが生まれる土壌があったと判定される。相見積もりを取っていたのであれば、見当たらないので重要書類保存義務が果たされていなかった。
自主管理の場合、マンション管理の実務を行うのは理事会に直雇された実働部隊である従業員だ。監事である自分は全組合員が、理事会がいつしか緊張感が失われ2人に無関心、任せ放しで盲信していたことが原因だと考えた。当然彼ら二人は管理会社から40年このマンション管理実務に携わってきたのだから、マンションの隅々までもっと言えば抜け穴まで熟知している。
1社見積による発注は業者からのキックバックの可能性がある。架空の人物の請負料あるいは給与を発生させて不正受給できる。マンション各室オーナーに専有部分の修理業者を紹介してリベートを得る。マンション転出入にまつわる売却情報をいち早く察知できるので不動産業者に知らせて紹介料を得る。何よりもマンション各室オーナーの個人情報を漏らしていた。これらが長年常態化していたのであれば自主管理組合の財務状況に少なからず影響を及ぼす。
彼らの疑惑を示す書類は相当量あったので、担当役員と相談しながら証拠保全して今後どうするのか理事会に後日監査報告することになる。
以降の話は次のブログ「マンション自主管理組合3」に譲ることにする。