ベンチャー企業やスタートアップ企業に投資する投資ファンド(venture fund:VC)で、投資事業組合を設立し、個人投資家、機関投資家、金融機関から出資を募る。投資先企業に資金調達や経営支援を行い、高いリターンを目指し、出資した投資家に利益還元する。

 

自分が和歌山にいた約3~5年前に、ある零細企業経営者がスタートアップ企業を別に設立し、地域が抱えている社会的問題を解決するため新しいビジネモデルを創出して社会貢献しようとしていた。そしていち早く和歌山全県に近畿圏に全国に広げるため急成長させる必要に迫られた。急成長させるための一番の問題は運転資金問題だった。

 

この経営者とは会社の顧客の関係なので利害関係なかった。彼は自分より6歳年少で自分とは10年以上前からの顔見知りで、7~8年前には自分の経歴を知るところとなる。自分の経歴を知って、成功体験でやってきた経営者や会社幹部より経営者として失敗体験して失敗を糧に生きてきた人は雑草のように強いとお世辞を言われ、自分は不可抗力の失敗体験で病気までしたのだからと心の中で苦笑したものだった。でも彼は精一杯気遣って評価してくれたのだと思う。

 

この自分の経歴を知っている彼はスタートアップ企業を設立するとき自分に相談してきた。相談事は大きく分けて2つあった。1つはVCに挨拶にいく取っ掛かりがないので困っている。2つ目はVC担当者への概略説明と後の正式なプレゼン書類資料の作成方法がわからないこと。

 

1つ目は自分の大学時代の同期に大手企業の法務部担当の常務取締役兼子会社の代表取締役が現役でいる(2023年退任)。法務部というのは企業買収や機関投資家となってキャピタルゲインを得るところ。VCと密接に連携しているからすぐに紹介する。結果VCを紹介してくれて彼について初回だけVCへ。

2つ目は初回の概略説明の資料は彼自身が作成して持っていっていく。彼も結構パソコンができるので。プレゼンする正式書類資料は自分が作る。自分は過去に経営者として自ら国や都道府県庁に許認可の申請書類を散々作成している。そして銀行に融資を申し込むための事業計画書も同様だ。特に行政への各種申請書類はA4サイズで厚みは10㎝くらいになる。申請書類にしても事業計画書にしても今はワードとエクセルが必須。特にワードはかなりのレベルが作成に要求される。だからプレゼンに至る正式書類は自分が責任をもって作成すると約束する。

 

初回、2回目とVC担当者に彼は説明に行ったが、2回とも上からダメ出しを食らい憤慨して帰ってきた。自分が経営者だった頃はVCに頼んだことなく、VCのことはよくわからないので、彼の怒りがもっともなことなのかわからなかった。

 

彼の状況を聞きながらVC向け事業計画書を作成していた。銀行融資は利息を含めて返済義務があるが、出資は返済義務がない。事業内容、市場分析、経営戦略、財務計画など数値を入れて書き上げる。調査分析手法には専門的な方法があるので、それらを駆使する。各中央省庁で発表されている統計資料も必要となる。新しいビジネスモデルの解説も必要となる。

後は経営者の抱負や熱意、経営陣の詳細紹介、中期財務計画の数値などを彼に入れてもらうだけで完成となるところで事業計画書を引き渡してミッション完了となった。後は彼が好きにすればいいことだった。

 

のちになって聞いたが、結局創業メンバーが集まらず、そしてこの3年間の間に彼にさらに新しいアイデアが浮かぶと移り気でどこかの時点でVCに事業計画書を持っていけなかったようだ。新しいアイデアもVCに盗用されるとか言うので、これでは彼は零細企業経営者の域を越えらず限界だと思った。どうやら彼の道楽に終わったようだ。彼の名誉のために言っておくが、彼は零細企業経営者としては大成功者だ。彼とは和歌山と大阪で年に1度くらいのお付き合いは続いていくだろう。

自分が渾身の力で作成した事業計画書A4用紙50ページ分はUSBメモリの片隅にお蔵入りとなった。