電話編を記す。
自分は「経営者としての過去」(2021年8月27日投稿)で記した通り亡父の会社で専務兼総務部長をしていた頃、人事の全権を掌握した。従業員数は約100人。総務部長になるまでに現場で従業員のほとんどと交流があったので、互いに人となりがわかっていて人事権の行使は慎重を期したが容易かった。人事とは採用、教育研修、各種保険資格取得喪失、福利厚生、人事考課、昇給昇格、配置転換、賞罰、解雇退職など。
この頃のビジネスシーンではまだ上場大企業でも教育研修について訓練プログラムが確立したばかりだった。それはバブル崩壊前、空前の人手不足が起きていて、政府の労働行政が労働力の流動性を高める政策に転換し始めた時だった。端的に言えば、終身雇用制度を緩めて誰もが転職しやすくした施策だった。人材派遣会社も出現しだした。1980年代末頃の話でインターネット登場まであと5年余り待たなければならなかった。当然メールも同様だった。
自分が人事権を持っていた時に新規採用の従業員には当時明確な訓練プログラムがなかったので、すべて今でいう「OJT(On the Job Training)」を行っていた。OJTは現従業員についてもらい現場実務をしながら業務を詳細に習得していく方式をいう。その中には内外から直営営業所24ヶ所にかかってくる電話応対も含まれていた。新人研修は配属営業所責任者に任せていた。これが当時自分の会社の従業員研修の現状だった。
自分は全社のおける新人研修の総責任者だったので、電話応対についておよそ現場(各営業所)で教えていることは見当がついていた。
1. 電話は3コール以内にとる。
2. 社名と名前を告げる。
3. メモをとる。
4. 問い合わせなどお申し出内容の確認をする。
5. 相手の電話番号、名前を聞いて復唱する。
6. 声のトーンを1段階上げて明るくハキハキと話す。
というのが、およその注意事項となる。上場大企業の電話応対訓練プログラムも基本的に同じような感じだろうと思っていた。
人事担当部長の自分としては日頃から現場責任者にはよく言っていたのだが、相手が本当は何を訴えたいのかを相手の話し方や声のトーンで汲み取ることをつけ加えていた。
インターネット、メール登場直前、亡父が一代で築いた会社が亡父自身のせいで倒産した。自分はそこから6年間、耐え難いほどの状況に放り出された。亡父の不起訴勝ち取り、会社や自分の債務整理、自分の家族と自分の生活基盤の確保など状況は深刻だった。
その月から生活費を稼がなければならない。下請けだった取引先でトラックも乗った。生保営業マンもした。大手スーパーでレジや野菜果物の陳列、消費者金融の管理担当(督促電話、回収訪問)、大規模集客施設での雑踏警備、データ入力募集のため人材派遣会社応募など。
ここで人材派遣会社面接で電話応対で大切なこと1つ言って下さいと言われ、相手の本当に訴えたいことを汲み取ることと返事をした。でも面接者の質問意図は電話応対基本6項目を求めていて、自分が亡父の会社で独りよがり7つ目の項目としていたことは求めていず、電話応対基本事項を知らない応募者とされて不採用となってしまった(笑)。人事責任者失格である(笑)。
上場大企業の当時の訓練プログラムが電話応対基本マニュアルにずっとなってきたことが伺える。大手企業は新卒訓練プログラムでは4月から3ヶ月間みっちり教育訓練すると聞く。その企業の方針に沿った即戦力の新人従業員に3ヶ月後叩きあげて実務に臨ませるそう。
そして中小企業は新人が入る前からの訓練プログラム経費を節減するため、入社までに即戦力に出来上がっている新人がほしいという狙いがある。
まあ、企業の考え方と事情で決まるのだから何とも言えないが、若い人ほど就職マニュアル本で勉強しているのだろうと思う。さて、あなたの電話応対についてのビジネスマナーはどんなものですか?