ゴルフとの出会いは小学生1年の頃近くの市民グラウンドで父が9番アイアンの打球練習のボール拾いをするのに駆り出された。まだサラリーマンだった父は上司に誘われお付き合いでコースに出るための練習だった。当時の打球練習は人が誰もいない時ならどこでもクレームなんかまったく出なかった。

 

大学生になった頃、父の会社は発展を遂げ放漫経営しだした頃だった。道楽の1つがゴルフになった。ゴルフ会員権を購入した父はゴルフ三昧した。シングルになった。自分もゴルフ打球場に誘われ、大学でクラブに入ったらどうだと勧められた。ゴルフは同好会があった。見学でわかったことは金持ちの男女学生が集まっている同好会だった。男女数人の学生はすでにシングルだった。彼らは自家用車通学で車は外車、聞いてのけぞった。我が家も父のおかげ??で一時金持ちというか成金だったのでゴルフのフルセットを買ってやるから大学でゴルフを始めたらといわれた、将来仕事上ゴルフはお付き合いの道具になると言われたが頑なに拒んだ。

 

大学3年の終わり、父の会社に就職をきめ就活しなかったため暇な時間ができた時、打球場に引っ張られていき、初めてゴルフボールを打った。スキーと同じでど素人。ボールはうまく当たらない。真っすぐ飛ばない。嫌々やっているから全然面白くない。うまくなりたいとも思わない。

父の会社に入っても現場を渡り歩いたためゴルフをする時間的余裕もなかったし、やりたい、やったほうがよいとまったく思わなかった。

 

しかし、アラサーに近づくにつれ現場から営業事務的な仕事になり、得意先やら取引先との打ち合わせや要望申し入れの会合が出てくる。窓口の責任者や担当者は自分より年長の人ばかり。食事、スナック、ラウンジ、クラブやゴルフの接待が必要になる。ついにゴルフから逃げることができなくなる。ゴルフ接待をしだした頃は接待された側があまりにも下手くそな自分にたびたび気を遣わせたためさすがに自分も必死に打球場にいって猛練習した。

何とか足手まといにならないようになるまでゴルフの上手な口の悪い友人たちと練習ラウンドによく行った。自分はティーアップしたボールの手前の地面を叩いた。空振りもよくした。それでもドライバーのスイングの風で当たらなくてもボールはティーからコロコロと1ヤード先まで転んでいく。すかさず後ろから「ナイスョット」、たまたまドライバーが当たって距離が出ても少し横にそれてOB、「よう飛んだのに」と自分が残念そうにこぼすと「飛ぶくらいバッタでもイナゴでも」と容赦ない。いじられてカーっと頭にきたら、今度は池ポチャとゴルフの難しさと奥の深さを思い知る。

30歳直前のころには得意先の参加者100人を超えるコンペでは優勝したり、接待ゴルフではコンスタントに1ラウンド90台で回れるようになった。

 

自分のスコアが上がると接待ゴルフで一緒にラウンドする人の中には自分より少しスコアの悪い人が出てくる。スクラッチで握ると勝ってしまう。接待で相手を負かして気分を悪く帰ってもらう訳にはいかない。なのでわざとOBして負ける。こんなことをするためにゴルフしているのか?こんなことのために猛練習してきたのか?

 

自分はゴルフを続けてきて良かったなと思えることがある。それはコースに出た時でフェアウェー、グリーン、周りの木々や山の緑が目の保養になること。もう1つ、ゴルフは紳士淑女のスポーツでコース上やクラブハウス内ではルール、マナー、エチケットがしっかりしていること。

それでも自分はゴルフが好きになれなかった。

 

父の会社が倒産不可避と判断される1~2年前、ゴルフをやめた。その後、キャディーバッグとゴルフクラブは知り合いにもらってもらった。ゴルフや道具に何の未練もなかった。未だに大学の同期が数人、上場の大会社で副社長や専務をやっている。彼らはこの歳でシングルだという。元気でけっこうだなと言ったが、ついでにテッペンを取れとけしかけておいた。

 

自分は二度とゴルフはしたくないが、数年前ゴルフトーナメントのテレビ中継を見た。全英オープンを制した渋野日向子、マスターズを制した松山英樹だ。それからゴルフ中継は見ていない。再び日本人選手がメジャーを制したら、Youtubeで見てみようと思う。