72歳になった父は正月に38度後半の不明熱を出した。ぐったりとして歩くこともままならない様子だった。

 

2~3日経っても熱が引かないので、近隣の内科クリニックへ連れて行った。風邪でもインフルエンザでもなく、不明熱との診断だった。医師から2週間分処方された解熱剤を飲むと、平熱に戻り元気になった。2週間後、解熱剤が切れると、48時間後再び不明熱が出てきた。

 

内科クリニックの紹介で私立総合病院にいって、検査をうけたが、心臓に不整脈があるのと大腸にポリープがあるぐらいだった。内視鏡でポリープの切除をして、一泊入院して翌日午前には熱も出ないので退院となった。その24時間後再び不明熱が出てきた。

 

これはただ事ではないと思った妹と自分は内科クリニックに紹介状を書いてもらい、国立医療センターに行った。

最初は総合内科で診てもらい、呼吸器内科、泌尿器科、循環器内科など各科を回るがわからず、最後にこの病院にしかない、感染科にいった。エイズなどを診る科だ。通常の血液検査ではなく、血液培養検査が行われた。

 

ここで血液中に黄色ブドウ球菌が検出される。この菌が体内の一番弱い部分に付着する。父の場合、不整脈のある心臓の僧帽弁の先にこの菌の塊が引っ付いた。

 

病名は感染性心内膜炎で関東でも症例が4例、関西ではなしだった。治療法は内科的には点滴で抗生物質を投与し、外科的には心臓僧帽弁置換開胸手術だった。結果的に内科的治療では効果なく、外科手術となった。手術は10時間となった。数日後、心タンポナーデを起こし、再手術となり、11時間かかった。

 

術後、退院までに腹違いの弟を父はこっそり呼び寄せ会っていた。

 

退院後1年半穏やかな日々を過ごすが、突然不調を訴え胆管炎を起こしていた。胆管炎自体は内視鏡手術で治ったが、その時内視鏡で食道ガンが見つかる。2ヶ月後、食道ガン切除手術を受ける。15時間の手術だった。

 

75kgあった体重は心臓手術で60kgになり、食道ガン手術で50kgになった。

肺炎、血胸を経て父の体重は40kgに近づいた。主治医から栄養失調の診断を受け、一時入院となる。

 

父の体重は40kgあたりを行ったり来たりし、抵抗力は皆無に等しかった。もう何か父の身に起きたら、どうなるかは一目瞭然だった。

 

以降の話は次のブログに譲る。