父が母のもとへ戻って来て、さらに10年近くの歳月が経った。

父は携帯電話一つ持って、どこかに出かけては不動産の個人営業をして、妾とその子の生活費等や自分の小遣いをしぶとく稼いでいた。

 

自分は破産免責後1年余り倒産した父の会社の下請け会社でアルバイトをしていたが、リスクヘッジしていた自分の資金を元手に小さな電子部品卸販売会社を創業した。父が関連の知り合いがいると勧めてきたからだ。

突然父は自分の会社に腹違いの弟を連れてきて当分の間、アルバイトで働かせてやってくれと頼んできた。

 

20歳も離れた大人になった弟に初めて会った。弟は自分が兄だと知ってか知らずか簡単な挨拶だけで済ませた。

 

弟は多感な中学生の頃に父の逮捕に遭遇し、その時弟と父の苗字が違うことに気付き、弟は自身の出自を知ることになる。

ぐれたそうだ。非行に走ったそうだ。以降空手の道場に通うことになったことも小耳にはさんだ。

 

しかし、弟から醸し出される雰囲気は無気力、無関心、無責任で遅刻、無断欠勤が多く、とても社会人として通用する青年ではなかった。

父と妾に翻弄されている投げやりな人生だと感じた。無理もないことだが、自分にはどうしてやることもできなかった。

 

ある日突然辞めて来なくなった。これが大人の弟を見た最初で最後だった。

 

ここまで我が子可愛さに父は弟と妾をつれて、海外旅行にも1~2度連れていった気配もあったが、もう妾と弟に家を買い与えるだけの稼ぐ力はなくなっていた。

父が70歳前の頃のことだった。

 

以降の話は次のブログに譲る。