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ウー、チュー、ノー、ハー、テー
森岡先生はニーナの指のテクニックに悶え喜ぶ。
「世界の中心はどこだと思う?」とニーナ。
「世界の中心はここさ」と森岡先生は自分のペニスを指さす。
「わたしとあなたはどこにいる?」
「宇宙の果てさ」
「宇宙の果てってどこ?」
「宇宙の中心さ」
「そうよ。宇宙に果てなんかない。果てと思った所こそ中心。中心の中の中心があなたのこの物体」
物体はニーナの手の中でたわいなく暴発した。
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倉橋まみは机の上に便箋を広げて考えている。
わたしも詩を書こうかしら?
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ーーああ、わたしの手
五本ずつ指があるわたしの手
わたしは一生
この手によって助けられ
この手を使って
わたし自身を喜ばせる
他人も喜ばせようかしら?
それは、まあ、適当にね
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倉橋まみは自分の書いた詩を見て頬をプーッと膨らませる。不満なのではない、顔の筋肉を動かして美貌を保とうとしているのだ。女性には暇な時間はない。さらなる美貌を目指してたゆまない努力を続けなくてはならない。
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マライア・キャリーは『バグダッド・カフェ』で歌を歌っている。歌には色がある。その上に艶がある。色と艶は内面から迸り出るものだ。
マライア・キャリーは全く神懸かりになっていて、『つぐない』が途中で『氷雨』に変わったことに気が付かない。アコーディオンで伴奏をつけている村西とおるが慌てて合わせる。
村西とおるはマライア・キャリーの体が目当てだから、そんなことくらいでは怒らない。マライア・キャリーをいつも家まで送り届けて次のデートの約束を取り付ける。
「今度? そうね」とマライア・キャリーはマルボロのメンソールを口にくわえる。村西とおるがシュポッとライターの火をつける。「そうね、来年の今時分かしら」
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森岡先生は自宅で『アメリカン・ビューティー』を見ている。妄想とはいいものだと考えている。気持ちのいい妄想を見ている時なら頭にピストルの玉を打ち込まれても本望だ。
美しさとは何かを考えている。
造形的な美しさと内面の美しさを一緒くたに考えるから世の中混乱するのだ。造形的に美しいものは造形的に美しいだけ、内面などはないと考える。内面の美しさは造形的な美しさに何の影響も与えないと考える。両者は全く別の次元にあるもので、たまさか交わることがあっても偶然だと考える。
そうすれば混乱はない。なんばウォークの百八十円コーヒー屋のガラス越しにジロジロと女の子を見ても、何の罪悪感も感じないわけだ。
女の子と哲学的な話をしている最中に女の子を頭の中で丸裸にしてもいいわけだ。