さまよう刃 | 一事が万事、これだから。

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最近読んだ小説や漫画、観た映画や日常的な事をぐだぐだと書いていきます。

日々脳内お花畑

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会社員・長峰重樹の一人娘・絵摩が死体で発見される。
悲しみに暮れる長峰だが、数日後、犯人の名と居場所を告げる密告電話がかかってくる。
逡巡の末、電話で言われたアパートへ向かう。留守宅へ上がり込み、部屋を物色すると、複数のビデオテープが見つかる。
そこには、最愛の娘・絵摩が犯人2人に陵辱されている映像が写っていた。
偶然帰宅した犯人の一人・伴崎敦也を惨殺した長峰は、虫の息の伴崎からもう一人の犯人・菅野快児の潜伏場所を聞き出し追う。

少年犯罪被害者の悲痛の叫び、正義とは一体何なのか、誰が犯人を裁くのか。
思いも寄らない結末が待ち受けていた。
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原作はだいぶ前に読んでおり、あの小説がどんな風に映像化されるのか
気になって放映したらすぐ見に行きました。

内容的に「あの凄惨なレイプシーンをどこまでやれるか」以外は特に映像化に問題はないと思っていたのが甘かった・・・

主人公である長峰が憎悪を抱き苦悩する原因である娘の例のシーンは、再現は難しいと思っていました。
したらR18ぐらいまでなるし。
原作は読んでて苦しくて、数日かけたほどです。
映画では確かに身体は殆どでないし、娘の顔ばかりだったけど、少年達の嘲笑う声とかが耳について、違う嫌な感じを抱きました。
犯人の自宅でそれをみたときの長峰の狼狽えっぷりはさすがだと思いました。
なんか寺尾さんの演技は泣ける・・・。

ただここからが意外というかそこまでカットすべきシーンじゃないというのが多々あり・・・。

まず一人目の被害者(加害者?)の少年・敦也を殺すシーン。
原作では娘のビデオを見たばかりで憎しみが一番強く出る場面で
股間をメッタ刺しにするんですが、驚くことに包丁で背中刺しただけ・・・
これは違う。
長峰は憎くて憎くてそれが行動に出て返り血浴びるぐらい殺意があったんだよ!!
まぁ映倫的駄目だったのかなー。


日々脳内お花畑

何より解せないというか、ある意味ぽかーんとしてしまったのは
織部@竹ノ内豊と真野@伊東四郎の立場の違いと
長野のペンションのやりとり。


ペンションでのやりとりはとても重要な場面だと思います。
ペンションで働く女性が、長峰が指名手配犯だとしりつつもかくまい
ある種協力と説得をしてくれます。
上野まで追っかけてくれるほど長峰のことを気に掛けてくれるんです。
(映画では川崎になってました)

映画では指名手配犯と知って、事件の内容も知っているから同情もあり
それでも自首をと説得するんです。
そこはいいけど、その説得の内容がすごく説教くさい・・・

「私も母を8歳の頃に亡くし、父と二人で生活してきたので
 長峰さんの娘さんの気持ちが少しは分かる。
 私だったら父親にこんなことしてほしくない~」

みたいな説教にすごいイラっとしました。
そんな事はわかってるんだよ。
分かってても抑えられないからここまできちゃってるんだよ!
原作のキャラの事を全然分かってない!!
大体子供を亡くしているから長峰の気持ちが少し分かるから
(他にも色々理由はあるが)だからこそ気に掛けてくれたのに!

それで長峰がペンションを出るんですが、途中怪我をして歩いているところ
ペンション経営の父親の方に発見されもう一度ペンションへ。
ここでその父親が猟銃の扱いについて教えます。
(原作では長峰は扱いも知っているし、猟銃も持っている)

娘にペンションに戻る事伝えていたので、ああ、ここから原作みたいな
やり取りがあるのかなーなんて思ったらまさかの通報!!!
娘よ!そこで通報してはならん!!!驚きすぎる・・・
途端キャラがただの普通の人間で主要人物ではなくなったような気がする。
ただ驚いたのは、ここで父親が猟銃を長峰に渡し、逃がします。
役割が反対になりしかもある意味悪化している・・・
殺す武器与えちゃかなり重罪だと思うんだけど。
まぁ奪われたって警察にいってたけど。

とにかくペンションのやり取りがこんなんですごいショック。
そこを再現しなかった意味がわからない。
特に問題もないのに。

でもそれ以上にショックだったのは織部と真野のキャラクター。
原作では織部はまだ若い警官で、何故あんな惨いことをした少年達を守り
長峰を殺人犯として捕まえようとする事に懊悩します。
真野は上司として、それが警察の仕事であり法というものだということを諭します。
ところが実は長峰に娘をレイプした少年達の居場所をリークしてたのは真野だったんです。
後日織部はその事実をなんとなく察して、でもそれを他言する事はなく
法について考えさせられるという結末なんです。

感情と法の狭間で悩みつつも、それでも警察の仕事を成した織部と
法を守るのが警察の仕事だと言いつつも、長峰に協力した真野。
その人間味がよかったのに、映画ではリークの電話2回はマコト本人からだし、
(少年二人に虐められ、逆らえず少し協力してしまっていた)
最後のリークの電話に至ってはなんと織部本人。
ボイスチェンジャーとか何も使わず、普通に「織部です」って電話かけてんだもん・・・
まぁ織部がかけたという設定はいいとして、直接的な表現はやめてほしかった。
やっぱ謎の人物からのリーク→実は織部だった・・・っていう設定にして欲しかった。せめて。
マコトが長峰宅の電話番号知ってる理由も出てこないし
(恐らくは原作のように携帯電話が車に落ちてたとかなんだろうが)
この設定は頂けなかったなぁ。

ラスト。
実は長峰さんは殺す気がなくて、猟銃は空砲。
それとは知らず真野が撃ち殺す。

えええええええええええ。
なんか死を上回る恐怖を与えてこそが本当の後悔に繋がるとかなんとか言ってるけど違うよ!
長峰さんは殺しても気は晴れないし、娘が浮かばれる訳でもないと分かっているし
更正させたいとか、死んで詫びて欲しいとかそんな気持ちないんだよ!!
ただ自分の憎しみに歯止めが利かなくなって殺意が突っ走ってるんだよ!!
なんだその設定は!!!
既に人一人殺してるのに何を今更!

すごいショック・・・。
レイプシーン再現なんて無理=原作通りにはいかないって
さして期待せずに見たのにそれでもショックだった・・・。
寺尾さんの演技が折角素晴らしいのに、内容が駄目駄目すぎる。
なぜ其処まで原作を改編させたのか分からない。
レイプや殺害方法は、映倫にひっかかったから駄目だったとしても
ペンションのやり取りをほぼ無くして、真野と織部の立場を反対にした意味がない。
そのせいでペンションの娘は完全脇役だし、真野さんもほぼ脇役。

しかも織部がやたら悩んで目立つから、
「娘の復讐に燃える父親と、それを追いかける警察」
というより
「娘の復讐に燃える父親に同情して感情に流された警察」
だった。
織部が主役っぽかった。

最終的に織部は仕事辞めたのかなーなんて思わせぶりなシーンもあった。
少年・快児の裁判をみにきて終了。
裁判なんてどうせ少年法のせいで死刑になる事もないんだから
どんな判決かは分からない的なシーンいらないし。

ここまで省略するならいらないと思ったシーン
・少年にレイプされ、ショックで自殺した娘の父親
(原作ではこの父親も復讐のため動く)
・快児とペンションにいた少女
(実はレイプ被害者だったがただの売春してる少女になってた)




やっぱ原作ありの本は映画みてから原作のがいいかな。
それで原作みてもう一度映画みるの。
やっぱこれは違うあれは違うって考えもたないほうが楽しめるし。
しかもこれPG12じゃないんだよね。
クローズZEROすらPG12なのに何故・・・?
よっぽどこっちのが親同伴必要な作品だと思う。
いっそR15ぐらいにすれば、もっと原作に忠実になれたのだろうか。

ちなみに一緒にみにいった母親は未読。
それでもいまいちだったらしい。
ペンションの父親が渡した猟銃はもともと弾が入っていなかった説を説いてました。
(弾2つ入っているはずなんだけど)
だったら猟銃渡す意味は?ときいたら
「ペンションのお父さんの気持ちがなんとなく分かる」
みたいな事を言われました。
子を持つ立場だと別の視点があるのだろうか。