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自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。
決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。
自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。
この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。
実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。
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待ちに待った薬丸岳さんの新作。
相変わらず、犯罪の考えさせられるなお話です。
人間が更正してるかどうかなんて、やっぱり分からないですよね。
それを色んな視点で描いてます。
主人公の上司が、嫌な奴と見せかけて実はいい人で
上司も身内を殺された被害者。
思えば、今回は珍しく「こういう人は許せそう」という加害者がいませんでした。
「どうしたら許してくれる?いや、許す事なんて被害者遺族は考えていないんだ。
だから俺達も、謝っても無駄」
みたいなスタンスにムっときたり納得してみたり。
そりゃ、謝れと思っても、謝ったから何か変わる訳でもないしそれで済むと思ってるのかと火に油を注ぐ羽目になるかもしれない。
私は実在する事件で、被害者遺族が加害者を許した事件を一件だけしってます。
授業で習ったんですが、その事件の加害者は本当に深く反省して、被害者遺族に何度も何度も(毎月だっけな?)謝罪の念を認めた手紙を送るんです。
その真摯な気持ちに、被害者遺族は彼を赦し、どうか死刑にしないでくれと請うんです。
でも、勿論死刑になりました。
世の中そういうものだし、人を殺した事に変わりはない。
だからこそ、他の加害者が「謝っても無駄」と思う意味もなんとなくは分かる。
まぁそれでなら平然としてるのが良いかどうかといったら別で。
やっぱりどうしたって被害者の方に感情移入しちゃうから許せないんだけど。
今回いいなーと思ったのは、いい加減そうな上司が実はしっかりしてることと
復讐に駆られていた主人公が、更正して好きな人を追いかけたことでした。
最初は復讐の為に女を利用してただけなんだけど、その子が健気で、やっぱり暗い過去を持っていて。
真実を知っても主人公に尽くすんですよね。
で、色々あって主人公の前から姿を消すんだけど、やっと自分の気持ちに正直になった主人公が追いかけて再開したときはほっとしました。
次の新作が待ち遠しい!