『俺の教室にハルヒはいない』読み終わりました!
感想を一言で言うと、
”面白い”
です。
けど、わかりやすい「面白さ」がないから、この面白さを他人に伝えるのは難しいかも。
とりあえず内容。
タイトルから予想していたものとは反して、主人公が「涼宮ハルヒみたいな人間を欲している」というわけではありません。
むしろ学園モノのフィクションが苦手で、ラノベでは珍しくオタクではない高校生が主人公です。
ある日、主人公の妹が観ていた深夜アニメで、
「ただの人間には興味ありません」
というあの名言を聞いてしまったことから、主人公は「普通の人間はどうしたらいい?」という疑問を抱く。
以来、学園モノアレルギーになってしまった主人公は、登場人物が学生というだけでアニメやマンガなどを拒絶するようになり、結果としてオタク的な知識がまったくないまま過ごしていた。
ある日、ふとしたきっかけからアニメ業界の人たちと知り合い、その人たちの話を聞く内にオタク的なものへ興味を持ち始めて――
というのがおおまかなあらすじ。
ハルヒとはほぼ関係のない内容で、作中で出てくるハルヒとは非日常を表すシンボル的な扱いです。
まぁ三毛猫が出てきたり、「私、あなたとどこかで会ったことある?」と質問されたり、ハルヒを彷彿させるパロディがちょいちょいありますが。
ストーリーについては、起伏がない、と言ったらそれまでなんだけど、なかなかどうして面白いです。
シリーズ化することを前提として構成されてるようで、この巻だけでは完結していません。
けど面白い。今後の展開がすごい気になります。
次の巻で方向性が決まるんだろうけど、だからこそ展開を想像するのが楽しいです。
恋愛を中心に話を進めていくのか、あるいは恋とは関係無く二人のヒロインを応援することがメインになるのか。はたまたオタクとして目覚めた主人公がアニメ業界に入ろうと努力していくのか……。
最後のはありえないとしても、考えればキリがありません。
さて、この作品の最大の魅力は、「設定の絶妙さ」だと思います。
決して非日常ではない、ただの日常。
けれど、アニメ業界に携わる人たち――実際にいることを頭ではわかってはいても――は、一般人からするとどこか空想的で、彼らと交遊関係があることはやはり非日常と言ってもいいかもしれません。
また、主人公の性格もいいです。
今までいそうでいなかった「聞き上手」という特徴は、作中でも述べられてますが、人から好かれやすい性質を持っています。
「優しいから」、という理由でハーレムを形成していた主人公たちよりも説得力があり、なおかつ、「平凡さ」と相乗効果を発揮する素晴らしい設定です。
当然、このタイプに「え、なんだって?」を使うことは許されません。となると、他の作品よりも早い段階で恋愛関係が構築される可能性が高いです。
「え、なんだって?」の次を行く最先端の主人公像になるかもしれませんね。
不満な点を言うのなら、文章でしょうか。
まず、会話の合間にいちいち地の文が入るのは正直読みにくいです。
いや、セリフの合間に地の文が入ること自体はいいんです。ただ、この作品ではその挿入の仕方が下手というかなんというか……。
わかってることの再確認みたいな感じでいちいち地の文が入るため鬱陶しいです。会話がぶつ切りにされてる印象があります。
もしかしたら非日常と対比して、あえてリアルなセリフにしたのかもしれませんが、男と女の二種類しかいないかのように登場人物が似たような話し方なので、セリフだけでキャラクターを判断することが難しいです。
それだけでなく、本当にこの人脚本書いてたんだろうか、って疑うくらいセリフに魅力がありません。教科書に出てくる英会話みたいに「あなたは○○ですか?」「はい、そうです」みたいな。
ただ、それが逆に地の文が悪い方向でキャラ立ちしていない分、ラノベでありがちな「キショクワルイ」文章になっておらず、「ライトノベルが苦手」という人でも読みやすいかも。
あとは「誰がどうした」といった描写ばかりで、「この人具体的な風景を浮かべながら書いているのだろうか?」と疑ってしまうくらい淡々としていることでしょうか。
他作品と比べるのは自分でもナンセンスだと思いますが、『変態王子と笑わない猫。』の何巻だったか……筒隠家に閉じ込められた主人公とヒロインが、洪水だかで避難しようとする場面のことです。
柱だったか木が廊下に倒れてる描写がありました。当時ぼくは興奮しました。感動したと言っても構いません。「まるでこの人見てきたように書いてる……!」って。
特に必要な描写ではなかったはずですが、さりげない、たったその一文でものすごくリアリティが生まれてるんです。
で、話を戻しますと、『俺の教室にハルヒはいない』にはそういった描写が見当たりません。
頭で考えてるんだろううなーって思いました。
あー……あと、主人公の口調の切り替えがよくわかりません。自己紹介を済ませアスカ相手にいきなりタメ口きいたかと思えば、最後の方で電話がかかってきたとき敬語に戻ってしまうみたいな。
全体的に作者自身がこの作品を掴みきれてない感じがします。
まぁ個人的な印象論はさておき。
とにかくこの作品は読んだ方が早いです。
この不思議な読後感はこの作者ならではだと思います。
おすすめです。
「きっと何物にもなれない」ことにコンプレックスを抱く主人公と、夢を追うヒロイン、そして既に働いている人たちはこれからいったいどのような物語を紡いでくれるのでしょうか。
次巻が非常に待ち遠しいです。