医師は絵をかきながらいろいろと説明してくれたけれど、
私が聞いても分からないことばかりだった。
何となく、そうなのか、と思う程度で、
専門的な話は聞いたって分からない。
だからと言って、分かるように話してくれと言ったところで
仕方がないと思ったし、たとえしっかりと説明を受けて
癌の症状を理解したとしても、私にはどうしようもないのだ。
これから先は専門家の医師にまかせるより方法がない。
それでもおおよそ分かったことは、
腎臓の癌には幾つかの種類かあって、
私の癌はその中でも滅多にない珍しい癌だということだった。
使う薬も定まっていない。
どんな薬が効くのか分かっていない。
とにかく、やりながら様子をみましょうという話だった。
医師の話し方から察するに、あんまり自信なさそうに思えた。
でもそれは、私の不安がそう感じさせただけなのかもしれない。
癌の大きさは直径4センチほどの円形で、
腎臓の上の方に伸びている太い動脈にまで及んでいる。
そして左右の肺にまで、ぼちぼちと幾つもの細かい転移がみられる。
転移がある場合、手術で切るのはむずかしいらしい。
切ったところで転移が広がるばかりだと医師は判断した。
とりあえず、スーテントという抗がん剤の服用での治療が始まった。
1日3錠を2週間服用して、その後1週間の休薬。
それが終わったら、また2週間の服用という具合だ。
それで要所要所でCTに入り、癌の進行具合を診る。
そういうのを基本的な治療として、あれから5か月が過ぎようとしている。