2024年1月21日 三谷サービスエンジン60周年 | ひまsunのブログ

ひまsunのブログ

講談師『日向ひまわり』の日常あれこれを書いています!

石川県野々市市に本社を構える、

株式会社 三谷サービスエンジンさんの設立60周年を祝う会に呼んでいただいた。

 

午後は石川県立音楽堂の邦楽ホールを貸し切っての寄席。

夜は音楽堂のすぐ隣にあるANAクラウンプラザホテルでパーティー。

 

早くからお声をかけていただき、

昨年秋より本格的に担当者の方と打ち合わせを重ね、準備をしてきた。

 

能登半島地震から3週間後の開催となる、60周年記念祝賀会。

 

「どうゆう決断に至っても対応できるよう準備しておこう。」

こちらからは一切連絡をせず待つことにした。

 

1月4日、無事を知らせるメッセージと共に、

「予定通り、やります。」

というメールが。

 

現地の様子をお聞きすると、

能登に比べて金沢は被害が少なかったこと。

「こうゆう時だからこそ、みんなに元気を。」

という思いによる開催決定だった。

 

色々な考え、受け止め方がある。

だけど、この状況にあって

これが全て正しいとか全部間違っているという白黒の判断は

誰にもできないじゃないかと思う。

 

「寄席のひと時、心がほぐれ、楽しい時間を過ごしてもらえたら、、、。」

会長のこの言葉を聞いた時、

「全力でお手伝いしよう。」

と気持ちが固まった。

 

幸い、金沢駅のすぐ側にある音楽堂もホテルも問題なく使用できることが確認でき、

21日の本番を迎えた。

 

邦楽ホールの寄席。

出演者は三遊亭こと馬さん、日向ひまわり、三遊亭萬橘さん、

トリが柳亭市馬師匠。

 

今回、窓口係(先導役)をやらせていただいたので、

萬橘さん、市馬師匠への依頼をしたのは私だった。

 

萬橘さんは都内の寄席でもよく会うし、気心が知れている。

でも、市馬師匠ときちんとご一緒するのはたぶん前座以来で四半世紀ぶり。

 

「付き合いの浅い私がお声がけしていいんだろうか。」

と思いながら事務所へ連絡をすると、奇跡的にこの日はフリー!

出演していただけることになった。

 

「一席、一席、たっぷり聴きたい。」

というご要望の元、このプログラムに決まった。

 

11時前に金沢へ入り、すぐさま音楽堂へ。

邦楽ホールは一階席、桟敷席、さらに二階席の合わせて700席強。

 

惚れ惚れするというか、うっとりしてしまうほど素敵な会場の造りに、

「ここで一席務められるなんて幸せすぎる〜!」

と大興奮。

 

落語会が定期的に行われており、

スタッフの方が寄席の対応に慣れていらっしゃったので

舞台確認はあっという間に終わった。

 

その後、ANAホテルへ。

夜のパーティーの冒頭に読ませていただく、

『講談 三谷サービスエンジン 60年の歩み』のマイクチェック。

 

講談師の私にできるお祝いの形は、だいたいこのパターン。

修正を重ねて仕上げたをネタをサプライズでお届けする。

 

確認を終え、再び邦楽ホールへ。

寄席とパーティー、意識があっちとこっちに飛んで

段取り下手の私はハラハラドキドキし通りだった。

 

そんな頼りない私を

ご担当いただいた三谷サービスエンジンの部長さんが

何から何までサポートしてくださった。

ありがたかった。

兎にも角にも、高座に集中するだけだ!

 

13時前に萬橘さんが楽屋入り。

14時過ぎに市馬師匠も楽屋へ。

 

まずは会長のご挨拶。

演芸好きの会長さん。

出囃子に乗って上がると座布団へ。

スーツに会社の半纏を羽織り、手には扇子を持ってご挨拶。

とても嬉しそうだった(笑)

 

挨拶が終わると前座のこと馬さんが【子ほめ】。

 

二番手はひまわり。

高座へ上がると一階席は満席で二階にもお客さまが半分くらい。

後で招待券の半券を数えたら634人もお越しだったそうだ。

すごい!!

 

お客さま、落語も講談も生で聴くのは初めてという方が多かったと思う。

でも、どなたさまも好意的だった。

優しく寄り添ってくださる空気を感じた。

邦楽ホールが作り出す雰囲気も

お客さまを寄席演芸の世界へ誘ってくれたんだと思う。

 

とはいえ、開演二本目で講談40分、、、

こんな長講、お辛い方もいらっしゃったと思うが、

【加藤孫六 出世馬喰】を読ませていただいた。

 

家康の怒りを買い、田舎で細々と暮らす浪人者の父親の遺言は、

「何としても一角(ひとかど)の武士となり、加藤の家を再興してくれ。」

 

この言葉を胸に懸命に生きる息子の孫六。

後に立派な武士となり、大名にまで出世をする。

 

お客さまが孫六の成長に温かく寄り添ってくださり、

最後まで気持ちよく読むことができた。

ありがとうございます!!

 

休憩を挟んで、萬橘さん。

マクラでお客さまを笑いの渦にグワッと巻き込んでからの【時そば】。

 

彼に任せればどんな状況であっても大丈夫だと思ってしまう。

舞台袖でお客さまの反応を見ていた私は、

「面白いでしょ〜!!」

と自分の手柄のように喜んだ。

 

トリは市馬師匠。

とにかく、すべてが大きい。

大らかで伸びやかで揺るぎなくて磐石。

、、、語彙が乏しくてすみません。

 

師匠が高座で一言発した途端、会場の空気が変わった。

それを間近に体感できた幸せは言葉では言い表せない。

 

マクラでは相撲の話題から相撲甚句へ。

市馬師匠の歌声、気持ちいい〜

お客さまはすでに大満足なご様子。

 

市馬師匠のネタは【妾馬(めかうま)】。

お殿様に嫁いだ妹がお世継ぎを産んだ。

その祝いの席に呼ばれた兄・八五郎。

後半、妹の幸せを心から願う八五郎に胸がいっぱいになる。

 

高座を終えると、お客さまの温かい拍手の音が会場に響き渡った。

 

市馬師匠と次回、いつご一緒できるかしら。

今回が25年振りだったから次は、、、25年後?

私、いくつになって、、、75歳手前かぁ。

せめて、10年後あたりでお目にかかりたい。

 

市馬師匠、萬橘さん、こと馬さんを見送り、

17:15、ANAホテルへ。

 

お客さまも音楽堂からANAホテルへ移動。

17:20に宴会場の扉が開き、入場。

17:30『講談 三谷サービスエンジン 60年の歩み』スタート。

 

何とタイトなスケジュール💦

正月の寄席の掛け持ちといい勝負だった。

 

台本(和綴にしたもの)を取り出し、原稿に目をやったが、

読み返す時間はない。

上がった息を整えることに集中した。

 

鳴り響いていた歓迎の和太鼓が止むと場内が暗くなり、

釈台を置いたステージへ上がり、頭を下げた。

 

舞台がスポットライトに照らされ、

顔を上げると張り扇を一つパーンと叩いた。

何も知らないお客さまがザワつきながらこちらをご覧になっている。

 

一呼吸おいて、

「時を遡ること60年、マイカー時代が到来しようとしていた1963年。

 金沢の駅前に新たな給油所が誕生いたしました。」

読み始めた。

 

緊張で足は震えていたが(これはいつものことなので通常運転)、

お客さまが高座へグッと意識を向けてくださっているのが分かり、

それが活力となった。

 

ネタは20分。

でも、古典とは原稿の作りが違うので長いとダレてしまう可能性がある。

「大丈夫かなぁ。」

お客さまの反応が心配だったが、

最後までしっかりお付き合いいただき、読み終わると大きな拍手をいただいた。

 

「いやぁ、会社の歴史をこんな風に伝えるなんて、、、面白かった。」

「25年務めていますが、知らないことがありました。」

「よかったよ〜。」

「寄席でやったネタ、あの続きがまだ聴きたかった。」

*孫六はフルで読んだので続きはないのです

 

【出世馬喰】も【60年の歩み】も想像していたより

ずっと好意的に受け止めていただいていたようだ。

楽しんでくださったことが分かり、すごく嬉しかった。

何より、無事終わったことにホッとした。

 

お集りの皆さまはどなたさまも一様に明るかった。

だけど、その背景には

たくさんのものを抱えていらっしゃるに違いなかった。

 

これからも一席一席大切に務めていきたい。

そしてお客さまにお楽しみいただき、

笑顔になってもらえたらいいなぁと思う。

 

ひまわり