江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
更新予定は
月曜~木曜:ドラマ「南城宴」(前後編)
土曜:短劇「玉奴嬌」(各1集)

更新は下記予定です。
 月曜日~木曜日---ドラマ「南城宴」(前後編)
 土曜日---短劇「玉奴嬌」(各1集)

※制作遅延により、「玉奴嬌」はしばらくのあいだ土曜日のみの更新予定です(汗)

ドラマ「南城宴」

 

第18集 前編

 

 

 

 

 

 

 

<18集 前編>

 

 

 拂暁にどう説明すればよいのか。

 趙沅から寧国の駙馬の件を打診された晏長昀は悩みに悩んだ。

 駙馬とは、公主の夫のことを指す。彼の場合、佳陽の夫だ。

 南国の民のためだ、朱銀粉問題を条約締結までに解決すればいいのだと趙沅から説得された晏長昀は、考えておくと返すのが精一杯だった。

 

 

 天青苑へ戻った晏長昀は、悩みを吹き飛ばすかのように剣の鍛錬に打ち込んだ。

 彼の剣技を見た佳陽が称賛する。

「長昀、私と一緒に寧国へ行けば、何でも望みを叶えてあげるわ。大将軍の地位もあなたのものよ」

 拒否したいが、するわけにはいかない。晏長昀はただほほ笑み、小さくうなずいた。

「拂暁!!

 声が聞こえて、晏長昀と佳陽は大門のほうに視線をやった。やってきた趙沅が、灯籠の陰に隠れてのぞき見していた小強子に近づく。

「皇上、どうしたんです?

「仕事で疲れたから、きみと運動でもしようかと思って」

「天気が悪いのに?

 今日は雨が振ったりやんだりの曇天だ。

 小強子は少々雨が降っても遊べる、蹴鞠によく似た”踢毽子”を提案した。晏長昀を巻き込んで恥をかかせようという魂胆だ。

 ところが、思った以上に晏長昀は”踢毽子”が上手かった。佳陽も加わるが、彼女にも趙沅にも羽根の付いた毽子は回って来ない。それどころか、晏長昀と小強子が蹴るたびに、趙沅に泥が飛んだ。

 

 

 趙沅を見送った小強子が駙馬の件を知った。小強子は晏長昀の部屋へ行き、書物を読む彼を問い詰める。だが、晏長昀は自ら望んで決めたと話した。

 実はその時、部屋の戸口に佳陽が立っていたのだ。

 

 

 またもや統領府へ行った小強子は初月の部屋で愚痴を言い、酒を飲む。

「初月妹妹、晏長昀も権力と地位を欲するバカ男だったよ…」

 泣きべそをかく小強子から晏長昀が寧国へ発つと聞いて、居てもたっても居られなくなった初月は、話をしてくると言って立ち上がる。だが、廊下へ出たところで当の晏長昀と出くわした。

 晏長昀は酔いつぶれた小強子のそばにしゃがんだ。

「晏長昀は私なんか要らないんだ…」

「違うよ、彼も苦しい立場にいるんだ」

 晏長昀は寝入る小強子の髪を撫でながら、優しくささやいた。

 

 

 翌朝、偶然にも小強子の部屋の前を通りかかった晏長昀は、扉が開いていることに気付いた。

 部屋を覗いても誰もいない。ただ、晏長昀宛の手紙が卓の上に置いてあった。

 晏長昀、あなたが想像する以上に私はあなたが好き。ずっと一緒にいたい。けれども、あなたは国の大事を成さなければならない人だわ。

 大丈夫、私は記憶喪失を患っているから、きっとあなたのこともすぐに忘れられるわ。じゃあね。

 晏長昀が手紙から顔を上げると、視線の先ににおい袋が吊るしてあった。小強子が作ったにおい袋だ。

 見覚えのある三角の形状のにおい袋に薯蕷の花が刺繍されている。まさかと思い、晏長昀はいつも携帯している少女のにおい袋と比べてみた。

 瓜二つだ。小強子、いや拂暁はあの時の少女だったのだ。

 天青苑を走り出た晏長昀は馬に飛び乗った。

 

 

 小強子の乗った馬車は昌文門を通り、山道へと入った。

 しばらく進むと、馬車の前に六人の男が剣を構えて立ちはだかる。馭者は恐れおののいて逃げ出した。

 突然、馬車の天井が破られた。男が大刀を振り回し、狭い車上で逃げ回る小強子を狙う。

 男は雷豹だった。彼は小強子が秦家復興のための足手まといになると思い、彼女の命を狙ったのだ。

 小強子が玉骨哨を吹く。雷豹が大刀を振りかぶった。

 その刃に、飛来した剣が当たる。

「拂暁!!

 晏長昀だ。

 雷豹が馬車を飛び出して馬の尻を蹴った。驚いた馬が走り出す。

「晏長昀、助けて…!!

 小強子が馬車の残骸にしがみつく。晏長昀は縄を投げて彼女の腰に絡め、馬上へ引き上げた。

 馬を止める。小強子は大泣きして晏長昀の胸元をポカポカ殴った。

「もうちょっとで死ぬところだったわ!

 晏長昀は言葉にならず、小強子に口づけた。

 やっと見つけた、もう離さない。

 

 

 晏長昀は、佳陽との政略結婚が朱銀粉の捜査のためだったと小強子に明かした。

「早く言ってくれればよかったのに。ずっとつらかったのよ」

 これからは、危険だからという理由で小強子を遠ざけることはしないと晏長昀は約束した。

「これで私の焦る気持ちが分かったでしょ?

「怒っていないのか?

「怒っていないわ。でも、捜査のためには私たちの仲は秘密にしておいたほうがいいわね」

 四六時中一緒にいたいけれど仕方ない、と小強子は割り切る。

「我慢するんだから、ちょっとくらいご褒美がほしいな」

「どんな?

 小強子は唇を突き出した。

 

 

 

 

 

 

<19集後編に続く>

ドラマ「南城宴」

 

第17集 後編

 

 

 

 

 

 

 

<17集 後編>

 

 

 小強子が恋愛に関する愚痴を言えるのは初月だけだった。

 統領府へ行き、初月の奏でる琴の音に耳を傾けて感傷に浸る。

「私の琴が分かるの?

「分かんない。でも心の琴線に触れる気がする。初月妹妹、晏長昀が今どんな状況にいるか知らないでしょ?

「佳陽公主ね。噂は統領府にこもっていても聞こえてくるわ」

 小強子は、どうやったら晏長昀の気を引けるのかと訊ねた。

「晏大哥のような優秀な男性は、同じように優秀な女性を求めるものよ。佳陽は、しかも公主だから、栄達も望めるし」

「晏長昀はそんな下賤な男じゃない!

 何としてでも晏長昀の寧国行きを阻止せねば。

 初月に聞いても無駄だったとばかりに、勝手に怒った小強子は部屋を出て行った。

 小強子と入れ替わりに、ひとりの娘を連れて呉承がやってきた。

「無憂!?

「小姐!

 雲韶司で初月の身の回りの世話をしていた無憂だ。晏長昀は初月のために、大枚叩いて無憂を身受けしたのだった。

 

 

 きっと佳陽の好みは屈強な男性だ。

 小強子は千羽衛の訓練場へ行くと、隊員たちを集めた。ここには毎日の訓練で鍛えた男たちがいる。晏長昀の危機だと煽り、小強子は計画の協力者を募った。

 皆が嫌がるなか、常勝とほか三人が名乗りを上げた。さっそく私服に着替え、天青苑の門前で待つ。

 佳陽がひとりで門から出てきた。すかさず三人の隊員が彼女に絡んだ。

「待て!!

 常勝が駆けてくる。三人を殴り倒し、よろめく佳陽を腕に抱く。

 常勝は自信たっぷりに佳陽を見つめた。

 その時、佳陽の拳が常勝の左頬に入った。倒れたところを四公子が足蹴にする。

 建物の陰から成り行きを見守っていた小強子は、耳を塞いで小さく仲間たちに謝った。

 

 

 その夜、小強子は佳陽の部屋の扉を敲いた。

「佳陽公主、もうお休みですか? 晏長昀の秘密を教えてあげるよ」

 しつこく声を掛けるので、佳陽は彼女を中へ入れた。

「それで、秘密ってなに?

 小強子は、晏長昀がとんでもない悪党だと話し始めた。

 ところが、どれだけ小強子が彼を悪しざまに言っても、佳陽は良いように捉える。乱暴は勇敢だと言い換え、策謀は頭脳明晰な証拠だと言う。

「彼は文武両道だね!

「いや、品行もどうかと… 同じ部屋で寝起きしていた時、私は床で寝かされたんですよ」

「ああ、倫理観がちゃんとしているのね」

「でもその時、私は男で…」

「じゃあ床で寝るのは仕方ないわね」

 何を言っても通用しない。

「実はね、長昀をいい男だと思っていたけれど、暁大人の話を聞いてもっと好きになってしまったわ」

 佳陽は、女性がひとりの男にしがみついていてはいけないと話す。

「あなたは年齢が若いから分からないかもしれないけれど、機会を見つけたら自分から掴みに行かなくちゃ」

 佳陽から優しく手を叩かれた小強子は、そんなものかとうなずいた。

「公主、お許しを。お休みのところを邪魔してしまいました」

 突然、晏長昀の声がして、思わず小強子は身を縮めた。

 今の話を聞かれた!

 

 

 悪口を言うつもりは無かったが、だがそれを当の本人に聞かれてしまった。

 晏長昀はわざと小強子の顔をのぞき込み、誰が卑怯な悪党なのだと訊ねた。いつものようにからかいのつもりだったが、今夜の小強子は切羽詰まっている。

「卑怯な手段で私を誘惑しておいて、好きになったらつれなくして、突き離すし! 右往左往する私を嘲笑っているんでしょ!

 突然の告白に晏長昀は戸惑った。

「…そんなにつらいのに、どうして私に固執するんだ?」

「固執じゃないわよ! …公主の言う通りだわ。公主が春夏秋冬の四公子なら、私は二十四節気ぶんの男を侍らせてやる!

 言い放った小強子が背を向ける。とっさに晏長昀は彼女の腕を掴んで抱き寄せた。

「私が公主に近づいたのは朱銀粉の捜査のためだ。信じてくれ」

 小強子は小さくうなずき、信じる、と答えた。

 

 

 晏長昀の役に立ちたい。早く朱銀粉の問題を解決して晏長昀と一緒になりたい。

 小強子はまたしても晏長昀の許可なく動いた。もしも佳陽が何か企んでいるなら、四公子が知らないはずがない。そう考え、男装した小強子は四公子を雲韶司へ連れて行った。

 一階の卓を陣取り、五人で乾杯する。

 二階から、妓女とともに男が下りてきた。四公子のひとり、春日が目ざとく見つけて声を掛けた。

「やあ、寧国以来ですね!

 相手を見た小強子は、もう少しで声を上げそうになった。男は蕭家が営む雑貨店の店主だったのだ。

 店主は人違いだと言い、逃げるように雲韶司から出て行った。

 

 

 これは大金星だ、晏長昀に話さなければ。

 天青苑へ戻った小強子はひと気の無い回廊へ晏長昀を連れて行くと、雑貨店の店主と四公子が知り合いだったことを話した。

 しかし、小強子が思ったような反応は返って来ない。晏長昀は興味無さげに返事する。

 しかも彼は、今後小強子が四公子に私的に近づくことを禁じた。

「…もういい! もう私のことは放っておいて!

 小強子が逆切れた。

 晏長昀はただ、小強子に危険な真似をさせたくなかった。だから関わるなと言いたかったのだが、彼を助けるために行動したつもりの小強子にとっては要らぬ気配りだった。

 

 

 一方、店主のほうも小強子に気づいていた。蕭府へ行って報告し、叱責される。

「余計なことをすれば、おまえの家人の命は無いぞ!

 震えあがり、店主はあわてて帰った。

 雪英が書斎に入って来た。蕭権は一通の書簡を彼女に預けた。宛名は佳陽だ。

「皇上はわざと協定の調印を遅らせている。佳陽公主には、どんな条件を突きつけられても飲めと伝えよ」

 

 

 佳陽は、新しく書き直した草案を趙沅に提出した。

「問題はありますか?

「この価格だと南国の商売が立ち行かない。どうだろう、関税を五割掛けるなら、応じてもよいが」

「構いません。これで決定ですね」

 まさか承諾すると思っていなかった趙沅は驚く。

「ひとつ、条件があります。晏統領を寧国の駙馬として迎えたいのです」

「駙馬!?

 趙沅は大きな声で聞き返した。

 

 

 

 

 

 

<18集前編に続く>

ドラマ「南城宴」

 

第17集 前編

 

 

 

 

 

 

 

<第17集 前編>


 佳陽の散財は凄まじかった。各店舗の商品を買い尽くさんばかりの勢いで、あれもこれもと指をさす。随行の晏長昀と小強子はあっけにとられた。
 だが、その荷物を運ぶのは小強子だ。
 今に見てろ! 十日で佳陽公主を超えてやる!
 天青苑へ帰った小強子は、一念発起してダイエットを始めた。珍しく真剣に体操する小強子に気づいて、呉承、魏添驕が寄ってくる。
「体重を落としたいなら、訓練場五十周はどうだ?」
「筋肉が付いちゃうじゃないか!」
 常勝が頼まれていた秤を運んできた。呉承、魏添驕のふたりに手伝ってもらって、体重を計る。
「…百八斤!」
 いったいどこに肉が付いているのか。とにかく小強子は、十日間で五斤の贅肉を減らすと宣言した。
「どうせ三日坊主だよ」
 三人は小強子の決意を疑ってかかる。そこで小強子は目標を達成できなければそれぞれに銀三両を払うと約束した。


 以来、小強子は食事制限と運動で五斤の減肥に励んだ。焼き鳥などの好物に見向きもせず、ひたすら体を動かす。
 いいにおいがしてきた。空腹を抱える小強子は、においにつられてフラフラと歩いていった。
 においの元は佳陽が宿泊する棟だ。中庭で串焼きを焼いている。少食だと言う佳陽のそばには晏長昀が座っていた。
「ひと口食べてやめるなんて、もったいない…」
「最近、暁大人は食事を節制しておられると聞きましたが、どうも成果が出ていないようですね」
 小強子は恨めしそうに佳陽を見た。
 晏長昀が薯蕷の串焼きを小強子に渡し、四公子のもとへと中庭に下りた。小強子はひと口だけと言いつつ何度も串焼きにかぶりつく。
 となりで佳陽がスイカに手を伸ばした。塩を付け、かじる。それを見た小強子は真似をしてスイカに塩を付けたが、食べつけない味に口をゆがめた。
「ふふふ、寧国ではこうやって食べるのが習慣なのよ」
「…公主、質問していいですか?」
 この際だと思った小強子は、なぜ晏長昀のことが好きなのかと佳陽に訊ねた。
「すでに四人も男性を侍らせているでしょう?」
「彼らは自ら進んで私に侍っているのよ。それに長昀はほかの男性と違って、目に輝きがあるわ」
 理解し難いかもしれないが、これが魅力と実力だと話す。
 込み入った会話をしたからか、小強子はあくびが出た。
「最近、ダイエットのせいか眠くて」
 小強子がそう言うと、佳陽は御黛香の入った小箱と保湿効果があるという化粧品を彼女に贈った。
「これを使い切る頃には、お肌がピチピチになっているわ。男性の誰もがあなたに夢中になるわよ」
 ちらっと晏長昀を盗み見た小強子は、笑顔で礼を言った。


「これが昼に使う化粧品で、これが夜用、と」
 たくさんの化粧品を贈られた小強子は、佳陽に懐柔されたも同然だった。
 気分よく回廊を歩いていたら、突然、晏長昀があらわれて御黛香の小箱を取り上げた。
「何するのよ!」
「これを使ってはいけない」
「何で!?」
 前回の使用で変化が無かったかと問われた小強子は、あった、と答える。
「ほら見て、ちょっと使っただけでお肌がツヤツヤになったよ!」
 小強子は化粧品のことを言う。
 付き合っていられない晏長昀は、御黛香の小箱だけを持って行った。


 御泉殿に上がった晏長昀に、趙沅は通商協議の草案を見せた。先ほど蕭権が持参した草案だ。
 一見問題が無いように見える草案だったが、目を通した晏長昀はあることに気付いた。すべての商品に御黛香が付いてくるのだ。
 趙沅も晏長昀も、南国の国益だけではない別の思惑が蕭権にあるのではないかと疑う。
「ところで、御黛香の調査は?」
「過度に使用することで自制が効かなくなる可能性があります」
 あの夜の小強子のように、だ。
 晏長昀はもう少し時間が欲しいと言う。


 朝から腹ペコの小強子の前に劉一刀がひょっこりあらわれた。目の下にくまを作り、元気が無さそうだ。
 いくら眠っても疲労が解消されないと訴えるので、小強子は数日間、部屋で休めと彼に休暇を与えた。


 約束の十日が過ぎた。体重を量った結果、呉承、魏添驕、常勝の三人は小強子に三両を寄越せと要求した。
 ダイエットに失敗したのだ。
「みんな私の前で兎肉丁や回鍋肉、串焼きを食べてたくせに…」
「全部で銀九両、びた一文まけないよ」
 不承不承、小強子が財布に手を突っ込む。
「千羽衛内での賭博は厳禁だぞ!」
 晏長昀だ。彼は条例第九十六条の規定を挙げ、違反者である三人から各銀十両を没収する。三人が去ったあと、小強子も銀十両を差し出した。
 その手に、晏長昀は罰金の三十両を乗せた。
「腹が減った。兎肉丁と回鍋肉、串焼きを買ってきてくれ」
 残りは小遣いにしていいと言われ、小強子のご機嫌が治る。


 小強子が離れるのを待っていた佳陽は、晏長昀に声を掛けた。
「長昀、なかなかのやり手ね。こんなに優秀なひとが統領だなんてもったいない。私と寧国へ行けば、望みをすべて叶えてあげるわ」
「いえ、私は南国の臣ですので」
「大丈夫、いい方法があるの」
 佳陽が晏長昀の肩に手を触れる。
 その時、ふたりのやり取りをやきもきしながら盗み見ていた小強子が声を上げた。
「晏長昀、食べたければ自分で買いに行けば!」






<第17集後編に続く>