ある日、マイケルは、指輪をチェンに売ることにした。
が、いつもでたっても、お金が支払われない。
チェンに連絡するが、連絡は取れない。
指輪は転売されたらしく、転売代金債権も譲渡されていた。
転売代金債権を譲り受けた、マリリンに電話を掛けた。
「あら、またあなた、今度はなによ?」
「マリリン、チェンから転売代金債権を譲り受けただろう。
あの指輪はオレがチェンに売ったものだ。
先取特権の物上代位権を行使して、それ差し押さえる。
「あんたぁ、バカぁ。
そんなこと、出来ないわよ。
判例は、こう出ているの。
動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、
第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、
目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。
(「民法304 条1 項ただし書は,先取特権者が物上代位権を行使するには払渡しまたは
引渡しの前に差押えをすることを要する旨を規定しているところ,この規定は,抵当権とは
異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については,物上代位の目的債権の
譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべきである。そうすると,動産
売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備
えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないも
のと解するのが相当である。」
登記のような公示手段がない動産先取特権は、債権を譲り受ける際には、
リスクを予測できないから、アンタの言うことは通用しないわよ。
アンタはチェンを探し出した、お金を貰いなさい。
ホント、バカね」
ガチャっ
プープープー
オーマイガッ、なんてこったい・・・
受話器の機械音が言霊のように響いてきた。