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真っ青な海に真紅のルビーを沈めてみても調和は生まれない。

真っ赤な夕焼けに藍青色のサファイアを投げてみても革命は起こらない。

漆黒のアスファルトに輝くダイヤモンドを落としたら、たちまち強欲が生まれて辺りを巻き込む糧になる。


ある時、嘘が命を持って、偶像と恋に落ちて、見栄っていう性器に孤独っていう性器をブチ込んだらあっという間にダイヤモンドが産まれた。

ダイヤモンドはいつも考えていた、『命の重さって何だ?真実って何だ?信頼って、希望って、愛って一体何なんだよ?』と。

ダイヤモンドには産まれつき目と鼻と口が無かった。
その代わりに好きな物も嫌いな物も全てが聞こる耳があった。

毎夜聞こえてきたのはあえぎ声。
そして、直後に自分と同じダイヤモンド達の産声。
また一つ不幸が生まれたと。


純粋さと裏腹な醜さに自らが気付いた時。
仲間は60億以上に増えていた。

周りは高く、より高く上に行こうと炭素への退化の様にゾワゾワと音をたて、黒ずんでいったのがわかった。

彼は仲間とは逆の人々の膝より下、地面からおよそ50cmの空間が好きだった。
好きというよりは居心地が良かった。

嘘や裏切り、憎悪や嫌悪が溜まるその空間は母親の腹の中の様で、彼を不思議と落ち着かせた。

ただ、アスファルトは嫌いだった。
凍てついたその表面はこの世界で唯一無機質だったからだ。

純粋な彼はただひたすらに密度と硬度を上げていった。
聞くもの感じるものを全て吸収した結果、もう自力では浮いていることが出来なくなっていた。

彼は寿命だった。
命の重さも、真実も、信頼も希望も愛も何も理解出来ないまま。
彼は堕ちた。

ゆっくりと、生きた証をせめともと重力に逆らいながら堕ちた。


きらびやかな一閃は人々の目を奪い、彼の朽ち果てた体は格好の餌食となった。

ほとんど停止した思考の中、彼は思った。
確かに自分は醜い。
しかし、世の中には醜さも、高貴さも、欲深さも、何もかもが上にも下にも果てしなく広がっているのだと気が付いた。

無論、命も愛も。


彼は無いはずの目から涙が出た。

始めて泣いた。


漆黒のアスファルトに輝くダイヤモンドが一つ置ちた。