ボニファティウス8世の介入

~ダンテが巻き込まれた内紛にボニファティウス8世はどの様に介入したのか?~

 

1300年にフィレンツェで「教皇派」が内部分裂して「白党」と「黒党」の争いが激化し、ついには「白党」が敗れ、「白党」の幹部だったダンテはフィレンツェを追放されます。

 この「白党」が敗れた大きな原因は、「黒党」に「教皇」ボニファティウス8世が支援し、更に「教皇」ボニファティウス8世は「フランス国王」フィリップ4世の力を借りたため、「黒党」は大きなバックボーンを得たところにあります。

 

 しかし、この2人(「教皇」ボニファティウス8世と「フランス国王」フィリップ4世)、

 実は1302年のアナーニ事件において歴史的にかなり有名な騒動を起こしています。

 

 ではなぜそんな二人が、なぜフィレンツェの内紛にかかわったのでしょうか?

 

ボニファティウス8世とフランス国王が内紛に関わった理由

 1300年、カトリック教会は絶頂期でした。

 

 そして、ボニファティウスは十字軍の遠征の延長として、フランス国王の協力を得て、教皇派の黒党を支援しました。

 なぜ黒党かというと、白党に対抗する勢力を持っていて、しかも押され気味で「教皇」に助けを求めてきたからだと思います。

 フランスが協力したのは、イタリアでフランスも利権を得たかったためでしょう。

 

 では、なぜ絶頂期だったのでしょう?

 

 その理由は大きく分けて3つあると思います。

 ⅰ.敵対勢力を排斥することができたため

 ⅱ.教皇が威信を振るえる体制が確立できたため

 ⅲ.お金が入るようなシステムを構築できたため

  。。。の3点です。

 

a-.敵対勢力を排斥することができたため

 まず、敵対勢力を排除することができたため、「教皇」の威信が高まりました。

 簡単に排除できた対象を分類すると

  ①皇帝 ②異教徒 ③内部の反対勢力

 の3つに分類できます。

 

①皇帝

 1268年に、フランス国王と協力して、「国王」フリードリヒ2世をイタリアから一掃したことにより、キリスト教の本拠地であるローマにおいて、「教皇」の力を牽制しうる「皇帝」を排斥できたことが特に「教皇」の威信を高めたのです。

②異教徒

 また1099年から始まった十字軍遠征により、東方においては思ったほどの効果が得れなかったものの攻撃を示すことで威信を示せ、西方においてはイベリア半島にいたイスラム教勢力をかなりの排斥するなど、キリスト教以外の宗教を排斥することでも「教皇」の威信を高めたのです。

 

③内部の反対勢力

 また12世紀初め辺りから、ヴァウド派やカタリ派など作法の簡素化や思想の変更などカトリックにとって異端ともされる宗派が登場してきました。

 そこで、その異端を排斥するために、ドメニコ会やフランシスコ会など托鉢という形態の崇拝を認め、教会の私有財産を持たない、清貧のある修道会が登場し、異端派を追い詰めました。また、もともとは聖地奪還の十字軍でしたが異端派の排斥が目的になり、フランスなどが活躍して十字軍の名のもとに摘発を行いました。

 後者の十字軍でのフランスの活躍は、「教皇」の威信を高めるとともにフランスの威信も高めるきっかけになりました。

 

a-.教皇が威信を振るえる体制が確立できたため

 教皇が威信を振るえる体制が確立できた背景には、

 ①教皇の唱えることの正しさが証明された

 ②教皇を中心とした指令系統ができた

 の2点にあると思います。

 

①教皇の唱えることの正しさが証明された

 12世紀になると、イベリア半島のイスラム勢力を追い詰めてきたため、イスラム圏で普及していたギリシア時代の哲学など、今までと違う考え方がでてきます。

 そのため、異端信仰が出てきたり、キリスト教の正しさの否定や矛盾が唱えられるようになりました。

 その中で、トマス・アクィナスという方が『神学大全』などの著書をまとめ上げ、「スコラ哲学」によりキリスト教の考え方を新たに体系化しました。それによって、否定や矛盾に十分にキリスト教の正しさを答えられるようになり、「教皇」の威信が高まったのです。

 

②教皇を中心とした指令系統ができた

 十字軍の遠征は、結果はまちまちですが、「教皇」の呼びかけにより動くという指令系統の確立に繋がりました。

 

.お金が入るようなシステムを構築できたため

 教会を使って、お金を集めるシステムも確立しつつあったのです。

 

 更に、ボニファティウスは1300年に聖誕祭という大規模な宗教イベントを立てることで、ヨーロッパ各地から巡礼がローマに訪れ、お金が入るシステムを作ります。

 
※『物語 イタリアの歴史Ⅱ』藤沢道郎 2004.11.25中央公論新社 はボニファティウス8世の人柄が詳しく書いてあります。