前の記事からずいぶん間があいてしまいました。

以前、「投影」のコンセプトを説明する例をご紹介いたしました。

繰り返しますが、「投影」とは、私たちが自分の心の中にあるもの(心情、感情、考え方、価値観など)を外の物や人に映し出しているという心理学の1つの概念です。私たちは皆、身の回りの出来事や物事や人を、心の内面にあるフィルターで色づけして見ているのです。

「投影」を理解することによって、自分についての理解がより深まり、人生がより「生きやすく」なると思います。


投影については、以下の記事を参照してください。

投影1

投影2

投影3

投影4



今回の記事では、「投影3」と「投影4」のどこで「投影」がされていたのか具体的に説明します。


設定
Aさん(旦那さん)は会社を経営していますが、ここ最近ビジネスがうまくいません。
Bさん(奥さん)は専業主婦です。
AさんとBさんの間に子供が1人います。


Aさんは、仕事で大きなミスをして気分があまりよくなかったため、自分に対して怒っていました。その話をすると、おそらくBさんは心配するに違いないと思い、またそっとして欲しかったため、家での口数が減っていました。


Aさんが仕事でのミスをBさんに話したら、Bさんが「あなたならきっと次うまくできる」と励ましたりしてくれた可能性もあります。ですが、Aさんはどこかで「自分はBさんに心配されるべきなのだ」「話したらBさんに認めてもらえない」という考えがあり、それを勝手にBさんに投影していました。


そしてBさんは、最近口数が減って険しい顔をしているAさんをみて「怒っている」と思い、「その態度は何?こっちまで機嫌が悪くなる」とAさんに詰め寄ります。ここで、Bさんが「Aに何かあったのかな」と思うだけにとどめて普通に接しておけば、それで終わっていたかもしれません。ですが、Bさんは心のどこかで「私は普段から家事を一生懸命やっているのに、Aさんからその見返りがない」という考えがあり、それをAさんに投影しています。


そして、Bさんがどなりちらすことにより、Aさんの最初の投影は現実化されます。結果的にAさんは「やっぱり話したらBさんに認めてもらえない。次このようなことがあってもBさんには話さない」と決心するのです。そして、そのことにより、結果的にBさんの投影も現実化されます。Bさんは「私がここまでしているのに、Aは話してくれないなんてひどい」と思うわけです。


その後、口論になりますが、Aさんは「これ以上口論したくない」と言って1人でさっさと寝室に行ってしまいます。その時に、Aさんが「ああいう態度をとって申し訳ない。実は、仕事でミスをして自分に対して怒っていただけなんだ。Bのせいではないんだ」と説明していれば、ここで終わっていたはずでした。ですが、Aさんは「話してもBさんに認めてもらえない」という考えを引き続きBさんに投影しているため、口論を避けるために寝室に行きました。


Bさんはそれを受けて、「あ、今はタイミングが悪いだけなんだ」と思えば良かったのに、「Aはひどい。」という考えを引き続きAさんに投影しているため、顔を見るたびにさらに詰問していきます。


二人のお互いに対する投影はどんどんエスカレートしていきます。


Aさんは週末友達とゴルフに行く約束を数日前からしていました。それをBさんに早めに言っておけばよかったのですが、「言ってもBさんに認められない」という考えがあり、ストレスを避けるためにも直前まで言わないことにしました。

そして、Bさんは「私がここまで一生懸命毎日家事をして節約しているのだから、Aは週末手伝ってくれるべきだ」という勝手な期待を持っているのですが、Aさんがゴルフに行くと言ったため再び「ひどい。やっぱり私がこれだけやっているのに見返りがない」と思うのです。このような期待を持っていなかった場合、「ゴルフに行く」と言われても気持ちよく送り出すことができたはずです。


再び結果として、Aさんの投影(「Bさんに認められない」)は事実になり、Bさんの投影(「私がやっていることに対するAさんからの見返りがない」)も事実になっています。


そしてAさんの携帯を見たBさんは、知らない女の人とのやりとりを発見します。そして「ひどい。私がここまでやっているのに、もしかして浮気しているの?」という不安が頭の中をめぐります。実際はこのやりとりは単なる仕事関連のやり取りだったかもしれません。ですが、Bさんが不安と自信のなさから「この人誰?」とAさんに詰問してしまいます。そのことによって、ますますAさんの心が離れ、結果としてAさんは浮気に走ってしまう、ということもあります。そしてBさんの投影は事実になってしまいます。



どうですか?


私たちは驚くくらい「投影」を日常で行っています。

「私は誰も信じない」と言っている人に限って、人から信頼されないような人であることがよくあります。

「どうせ誰も私のことを愛してくれない」と言っている人に限って、自分が自分のことを愛してなかったりします。

など。


「投影」を理解することで、自分の心の状態をより深く理解でき、無意識に沸いてきた、必ずしも正しいとは限らない思い込みを修正することができます。そうすることによって相手から引き出す反応を変えることができます。


上の例から言えば、Aさんの立場からすれば、Bさんは口うるさく「彼女のせいで僕はこうした」と行動を正当化したくなるかもしれません。Bさんの立場からすれば、「私がこれだけやったのにひどい」とすべてAさんのせいにしたくなるかもしれません。


ですが、相手のせいにすることで何か解決するでしょうか。


「投影」はある意味、警告メッセージのようなものです。それを理解することで、身の回りの出来事や問題を自分の問題として向き合うことができ、そうすることによって引き出す結果を変えることができます。そして自分に余裕が出てきます。


次回、誰かの言動を批判したり、それらの言動を勝手に解釈することがあったら、一度立ち止まって、自分が何かをその人に投影している可能性があるのではないだろうか、と考えてみてください。きっと何かが変わるでしょう。




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