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 ホテル・デルーナ호텔 델루나

【Episode16】(2)

 

~マンウォルの執務室~

作家「あいにくだが、キム・シリクに何があったのか、私は知らなかったのだ。だが、本を出版することで、500年もの恨みを晴らしたりしたくはない。これはなかったことにしよう」

そう言って、作家が自分の原稿を引っ込めようとするのを、パッと押さえるマンウォル。

マンウォル「これをただ、破棄するのはもったいないですわ。うちの支配人が、この小説を全ページ読んだんです。」

明らかに、目をしょぼつかせたチャンソンが、軽く一礼する。(笑)

マンウォル「この物語は、とても興味深いものだと言ってます。淫乱書生の部分だけを見なければ、とっても魅力的な学士として書かれてますよね。」

チャンソン「二つの大きな派閥のどちらにも属さなかった高貴な学者・・・。毎月一度故郷で待つた妻にあてて書いた手紙が際立っていたロマンティックな学者・・・。」

作家「私が調査したんだ。それが仕事なんでね」

この部分に関しては、自信がある感満載の作家様。。。

 

マンウォル「ですから、こうしません? “彼は、権力を得るための派閥には加わらないことに決めた。部外者となった彼は倒錯した淫蕩な物語に夢中になっていった。” ここの部分を変えましょう。

チャンソン「“作者不詳であったハングルで書かれたこれらの物語は、実際には学者のキム・シリクによって書かれたものであった。” これを歴史的な本として書くことはできませんが、小説であれば、非常に魅力的なテーマになります。」

作家「確かに。“シン・ユンボクは女性だった” そういうテーマで書かれた本もあるくらいだ。小説なら、何でも可能だ」

マンウォル「じゃ、早速始めましょう。朝鮮時代のもっともロマンティックな学者であり、最高の物語作者は、鶴のように高貴な男、キム・シリク!!」

そろって、指パッチンするチャンソンとマンウォル。(笑)

作家「“鶴”? このタイトルは、まさにぴったりだと思う。この美しい小説は、私の傑作“鶴の戦争”に通じるものがある。こう呼ぶものもいる “鶴の歌”。」

大袈裟に、拍手してみせるマンウォルとチャンソン。

マンウォル「“鶴の歌” それ、早速歌ってみましょうよ!!」

 

マンウォル「作家様、どうぞ、素晴らしい小説を書いてください」

直々に、見るからに高級なペンを、作家に渡すマンウォル。

万年筆の蓋をあけた瞬間、意識を失う作家。。。

マンウォル「な、なによ、どうなったの???ちょっと、“鶴の歌”!! あんた、その歌、はじめるんでしょ。何してるのよ?」

ソフィ「これは、過労でなくなった方によくみられる症状です。彼がペンをつかんで30秒以内に気絶することを、言い忘れてました」

マンウォル「何? もし、開始して、30秒で気絶し続けるなんてことになったら、どうやって、小説を終わらせるのよ」

チャンソン「・・・他の作家に手伝わせましょう!」

マンウォル「え? 他の作家って誰?」

チャンソン「うちには、一生懸命働きたい小説家がいるんですが・・・ただ、死ぬ前にはできなかったんです」

 

はい、コーヒーお替りさんです(笑)

ソフィ「お客様、私がこれまでに観察したことからみても、あなたの執筆は素晴らしい。ですが、まだ何を書くべきかを決めていらっしゃらないようです。」

決められないんです(笑)

チャンソン「我々には、素晴らしいテーマと優れた指導者がいます。小説を完成させてみてはいかがでしょうか?」

いきなりの提案に、目をパチクリさせるお替りさん。。。

いや、提案というよりも・・・書かないという選択肢はないやろう(笑)

 

ソンビ「つまり、それは、私が架空の物語の登場人物として残るということですかな?」

マンウォル「史実では、キム・シリクは下品な小説を書いて、失格となった学者として知られている。たった1行のせいでね。でも、あんたが500年待っても、それが消えることはなかった。。。」

ソンビ「それが?」

マンウォル「でもね、あんたが、愛情深い夫であり、高潔な学者だったというのは架空じゃない。小説でこの世に残るっていうのは、悪い話じゃないと思わない?」

ソンビ「それで?」

マンウォル「だから、小説なのよ。私たちがその中で、背が高くてイケメンだったと書いたとするでしょ。でも、そんなの、どうやって、みんなにわかるのよ。あんたに似てるとか思う人、誰かいる?」

最初から、多少、盛るつもりね(笑)

ソンビ「私に似ていると思った男がいましたよ。」

マンウォル「いいわよ。誰? 誰?」

ソンビ「若者は、彼を、ソガンジと呼んでましたな」

マンウォル「・・・ソ・ジソプ?あんた、今、自分のことをソ・ジソプに似てるって言ったの?ああ、まったく、あんたって・・・(思い返して) そうね、あんたは彼に似てるわ。うん、そっくりよ」

ソンビ「この角度から見た時が一番似てるんですよ」

マンウォル「オモオモ、たしかに。もうちょっと、向こうをむいてみて。そうそう・・・・、そうよ、それよ。あんたの真っ黒な後ろ髪は、彼にそっくりだわ。あ~~、キムソンビ、最高よ、かっこいい」

顔を見ないようにして、必死におだてるマンウォル・・・。

 

それから、当時の逸話などを、作家やお替りさんに、身振りを交えて聞かせるソンビ。

作家様は、自分が書かなければ、気絶しないのね。

はりきって話を続けるソンビや、話を熱心に聞いている作家様、お替りさんがPCで原稿に起こしているのを見ながら、嬉しそうなソフィ。

 

~スカイバー~

出来上がった原稿を読んでいる二人。

マンウォル「へぇ、キムソンビが、武術をやってたなんて知らなかったわ」

チャンソン「かっこいいですよね」

マンウォル「ちょっと、これ、ロマンティックにしすぎじゃない・・」

チャンソン「きっと大ヒットしますよ」

そこに、最後の原稿があがってきたと、ヒョンジュンが持ってくる。

マンウォル「さぁ、見てみましょうね」

読みながら、満足そうなマンウォルとチャンソン。

 

はい、“夢の電話”の出番です(笑)

作家「ああ、キム編集長?実は、私がある新人作家から受け取った原稿の草案があるんだよ。私の書斎の本だなの2番目を見てほしい。朝鮮時代の学士 キム・シリクについて書かれた小説で、作家の名前は、ペ・ソンフンだ。ああ、うん、うん。いいだろう・・・」

 

早速、出版されました!

『鶴の歌』が本屋さんに並んでます。。。

人々が、手に取っていく様子を、嬉しそうに、並んで見ている作家様、ソンビ、お替りさん。

 

~スカイバー~

カウンターに座るマンウォル、チャンソン、ソフィ、ヒョンジュン。

ソンビ「本も無事に出版され、二人の作家様たちも、笑顔でここを去っていきました。今日は、感謝をこめて、皆さんにカクテルをつくったので、どうか召し上がってください」

それぞれの前に置かれたTearsを手に取る一同。あ、マンウォル以外(笑)。

マンウォル「私は、これが好きじゃないって言ったでしょ」

ソンビ「それでも、今回は特別な機会なんですから、どうか飲んでくださいよ」

チャンソン「今回は、どんな意味を込めているんですか?」

ソンビ「心からの別れの涙です。

一同「・・・・・・」

それを聞き、ゆっくりと、ソンビを見上げるマンウォル、ソフィ、チャンソン、ヒョンジュン。

ソンビ「私、朝鮮時代の学士キム・シリクは、自分の恥をそそぐことができました。去りがたい思いをこめたこの涙と共に、そろそろ、来世へと旅立とうと思います」

ヒョンジュン「キムソンビ様・・・」

ソンビ「このカクテルで、涙を洗い流し、別れを言おう・・・。いままで、本当にありがとう」

皆に頭を下げ、自分の分の“Tears”を口にするソンビ様。。。

 

~リムジンタクシー乗り場~

ソンビ様の最期の出で立ちは、鶴のような真っ白いスーツです。。。

ソンビ「君には苦労をかけてしまうと思うが、先に逝くことを許してほしい」

ソフィに握手を求めるソンビ。

ソフィ「お元気で、キムソンビ様」

もうすでに、涙でぐしゃぐしゃなヒョンジュンが、たまらず、ソンビに抱き着く。

ソンビ「70年経っても、まだ、赤ん坊のようだな」

両涙を指で拭ってあげるソンビ様。

チャンソン「お気をつけて。」

チャンソンの目礼に、嬉しそうに礼で返すソンビ。

 

半分、怒っているようなマンウォル。

目があっても、何も言わず、微笑むだけのソンビ。

 

ソンビ「さぁ、行くとするかな」

リムジンタクシーに乗り込み、笑顔でトンネルをすすんでいくソンビ。

ずっと、手を振り続けているソフィ。

引導使者「元気でな」

それぞれ、思い思いのお別れをする。

 

~マンウォルの執務室~

飲まなかった“Tears”が机の上に置かれている。

カードが1枚伏せられいる。

≪チャン社長 私の名前を守り、鶴のように神秘的な学者としての記録を残してくれて感謝する。ここに、チャン社長に感謝をこめて、“Tears”をおくろう。冷たく凍りついていた満月(マンウォル)が、暖かさの中で落ち着いたこと以外、もう何も望むことはない≫

 

“Tears”を口に含むマンウォル。

マンウォル「本当にまずい・・・」

ワイングラスを握りしめながら、ボロボロと涙をこぼすマンウォル。

声をあげて泣くマンウォルの背中にいつまでも、手を置くチャンソン。

 

~ヒョンミの病室~

ガラス窓から、眠るヒョンミの様子を眺めて、帰ろうとしたユナ、振り返ると、そこに、ヒョンジュンが立っている。

ヒョンジュン「どうして、最近、ホテルに来ないんだ?」

ユナ「どうぜ、すぐ無くなるのに、どうして行くのよ。もし、ヒョンミさんが亡くなったら、あなたもここを離れるだろうって思って、確認しにきたの」

ヒョンジュン「キムソンビ様も去ったよ」

ユナ「・・・・・」

ショックを受けるユナ。

ユナ「ほら、あなただって、キムソンビ様がいなくなって悲しいでしょ?あなたがいなくなったら、私も同じように思うのよ。だから、このまま、残るって言ってよ。ね?」

ヒョンジュン「キムソンビ様がもう僕たちと一緒にいないのは悲しいけど、でも、僕たちは喜んで送り出したよ。この世に留まること以外に悲しいことはないからね。」

ユナ「私がいるのに、どうして悲しいのよ?」

ヒョンジュン「僕とヒョンミを見てごらんよ。僕と君が望んでるのはこういうこと?」

片方が年老いていき、そして、また、そこでも別れが待っている。

ユナ「わかったわよ。行けばいい。私は、このままだと、あなたを見送ることなんかできないのよ。キム・ユナの両親は、私に外国に留学に行けって言ってるの。だから、行くことにするわ。これで完璧よね?あんたは来世に行き、私は留学する。ここが私たちのお墓だとして、お互い、ここでお別れしましょう」

それだけ言うと、立ち去るユナ。

 

~薬局~

ソフィの因縁の一族の最期の末裔だと思っていた男性の忘れ形見は、まだ、生まれてないようです。

大きいお腹のまま、店に出ている薬剤師さん。

店の外から、様子を見ているソフィ。

床に落ちた箱を取るのにも苦労しているのを見て、思わず、代わりに拾ってあげる。

薬剤師「ありがとうございました」

黙って、店を出ようとするソフィに、話しかける薬剤師。

薬剤師「あの・・・」

振り向くソフィ。

薬剤師「先日も、薬局の外から、あなたがこちらを見ていたのを見てました。もしかして、この子の父親に関係のある方ですか?」

ソフィ「栄州ユン氏で、以前、嫁だった者です」

 

薬剤師「この子は、決して、栄州ユン氏の一族ではありません。私の名前を引き継ぎます」

ソフィ「でも、もし息子さんなら、その子は、家系を引き継ぐ唯一の相続人になりますよね。」

薬剤師「娘であっても、相続人であることは変わりませんよ」

ソフィ「でも、彼らは家系を引き継がせないでしょう。結婚したら、結婚した相手の家族の一員になって・・・」

薬剤師「・・・朝鮮時代か、何かの方ですか?最近では、そんな風に考える人は誰もいませんよ。もし、この子の祖父母が、赤ちゃんに会いたがったら、その時は、訪問を認めるでしょうね。でも、この子が男の子であろうと、女の子であろうと、この子は、ただ、私の子供です。

力強い母親の言葉を聞き、言葉を失うソフィ。

 

言われるがままに、娘を婚家に手渡し、そして、命を縮めてしまったことを思い出し、混乱し、涙があふれてくるソフィ。

薬剤師「どうかされたんですか?」

ソフィ「なぜ、私は、私の娘のことをそんな風に考えられなかったのかしら。申し訳ないわ。。」

自分を責めるソフィの手を握りしめる薬剤師さん。

ソフィ「ただこの子が・・・あなたのお腹の中にいるこの子が、無事に生まれ、素晴らしい人生を送られることをお祈りしています」

 

感動もつかのま・・・

 

~レストラン~

いつものごとく、チャンソンと食事にきて、料理の写真を撮っているマンウォル。

今日は、冷麺?

壁には、キム・ジュニョンのポスター。

撮った写真をチャンソンに見せながら、どれをSNSにアップしようか、相談しているマンウォル。

チャンソン「これがいいんじゃない?」

マンウォル「これ?」

チャンソン「ずいぶん、たくさん写真を撮ってるけど、そんなにフォロワーがいるの?」

マンウォル「もちろんよ、ヒョンジュンでしょ、ユナに、サンチェス」

チャンソン「それだけ?」

マンウォル「ねぇ、そっちのゆで卵のほうがおいしそうに見えるわね」

チャンソン「すっごくたくさん写真を撮ってるから、100万人くらいフォロワーがいるのかとおもってましたよ」

マンウォル「ねぇ! あんた、一度だって、“いいね”を押してくれたことすらないくせに。よくもそんなことが言えるわよね」

チャンソン「僕は、SNSはやりませんから。かの有名なファーガソン曰く・・・」

マンウォル「結構よ!ファーガスンだか、なんだか、とにかくいいことを言ったんでしょ。でもね、それは、その人の考えなの。私は・・・・」

急に、スマホの画面をみて、息をのむマンウォル。

チャンソン「どうしたんですか?」

マンウォル「いいねって・・・。彼が“いいね”を押したのよ」

チャンソン「誰が? サンチェスが?」

マンウォル「キム・ジュニョン・・・、キム・ジュニョンが押してくれたの。これ、見てよ。私が、コンドゥレ(アザミ)飯をアップした時の写真をみて、彼が“いいね”を押してくれたのよ」

キム・ジュニョン以外には、本当に、サンチェスと、キム・ユナと、ヒョンジュンの3人しかフォローしてないのね、しかも、もしかしてユナとヒョンジュンはニコイチ?(笑)

チャンソン「ほんとだ・・・本当に3人しか、フォロワーがいないっていうのに、どうやって、彼は、あなたの投稿を見つけて、“いいね”を押したんだろう」

マンウォル「私、もう、これ以上、望むことなんてない。グルメ王に知ってもらえたのよ」

チャンソン「いつから、そんなにキム・ジュニョンのことが好きになったんですか?」

マンウォル「ん? あ~~、はじめて、彼に会った時から、とにかく全部が気に入ったの。キム・ジュニョンが私のよく知ってる人に似てたから。。私が好ましくない遊興のせいで苦労してた時に、突然、若い男が現れて、囲碁の勝負で私を助けてくれたのよ。その人は、おいしい食べ物を回る趣味も勧めてくれた。その人が、キム・ジュニョンにそっくりだったのよ~~」

固まるチャンソン。

チャンソン「それって、僕ですよ」

マンウォル「何言ってんの?」

チャンソン「200年前の満月堂に行ったんですよ。月の木の花を取りに。そう話したじゃないですか。そこで、囲碁の試合に勝って、グルメマップを書いてみせたのは・・・僕ですよ」

マンウォル「笑わせないでよ。私ははっきり覚えてるの。キム・ジュニョンみたいな、でっかい体格だったもの。すごく優しくて、親切だったもん。どう誇張したって、あんたは、あの人の半分くらいしかないじゃない。そんなこと言って、どうするつもりよ?」

呆れて、笑いだすチャンソン。

チャンソン「ははっ、麻姑神が、あなたの記憶をそんな風に変えたんだ・・・」

やってくれるね、麻姑神(笑)

マンウォル「こうしてみると、私たち一緒に、結構、おいしい店に食べに行ったわよね。みんな、良かった・・・。」

あ~あ、やっぱり、しみじみしてきちゃった。。。

マンウォル「最後にね、あんたが飲まなきゃならないものがあるの」

そういって、薬の小瓶を手渡すマンウォル。

もう何度目だろうね、この瓶を、チャンソンが手にするのは・・・。

じっと見つめるチャンソン。

マンウォル「あとで、必ず飲まなきゃだめだからね。 飲むのよ。」

だまったままのチャンソン。

マンウォル「さ、食べましょ。冷麺、冷たいうちにね」

チャンソンも気持ちをきりかえ、食べ始める。

チャンソン「ええ、食べましょう。ああ、辛子つけますか?」

マンウォル「キム・ジュニョンは、平壌冷麺には、酢がおいしいって言ったもの」

チャンソン「それ、ペク・ジョンウォンじゃなかったですか?」

マンウォル「そうだったっけ?」

チャンソン「あいご~、確かに、1300歳ですね。お気に入りの男性が言ったことも混乱するなんて・・・。どれくらい?」

そういいながら、ちゃんと、お酢の瓶をスタンバイさせてるチャンソン。

マンウォル「ちょっとでいいって・・・。わ~、おいしいそう。あんたは、なにか付け加えないの?」

チャンソン「平壌冷麺は、まず、スープを味合わないと・・」

一口飲んで、満足そうにうなずくチャンソンを、微笑んで見つめるマンウォル。

 

~デルーナ~

スタッフから、社員バッチを預かるソフィ。

「スタッフの中で、客室長が一番最後まで残られるんですね」

「お客様もほとんど、逝ってしまわれたわね。いままで、本当にありがとう」

「お先に失礼します・・・」

「じゃあね」

そんな挨拶を交わしているところに、「客室長様・・・」と学生服に着替えたヒョンジュンに背後から声をかけられ、驚くソフィ。

ヒョンジュン「これから、ヒョンミを迎えにいかないと・・・。テソクから連絡があったんです」

ヒョンジュンの手を取るソフィ。

ソフィ「妹さんをここに連れていらっしゃい。社長様には、私から言っておくから」

頷くヒョンジュン。

 

~病室~

息絶えるヒョンミ。

自分がベッドに横たわっている姿を見て、意味がよくわかっていない様子のヒョンミ。

「ヒョンミや、オラボニが来たよ」と声をかけるヒョンジュン。

その声に誘われるように、病室を出るヒョンミ、幼いころの姿に戻っている。

「ヒョンミ・・・」

「オラボニ(お兄様)・・・」

笑顔で抱きつくヒョンミを、泣きながら抱きしめるヒョンジュン。

少し離れたところから、見守るユナ。

ヒョンジュン「オラボニがどれだけ、お前のことを待っていたか、わかるか?行こう・・・」

立ち上がった先に、ユナが立っている。

必死に涙をこらえるヒョンジュン。

ヒョンジュン「ユナ・・・」

なにも言えず、その場を走り出し、壁に隠れるユナ。

その嗚咽を、ただじっと聞いているヒョンジュン。

 

~ホテルデルーナ~

マンウォル「あなたが、チ・ヒョンジュンの妹のチ・ヒョンミね。優しいお兄さんのおかげで、道に迷わずに逝くことができるわね」

チャンソン「ユナは?ヒョンジュンが逝くことを知ってるのか?」

ヒョンジュン「さっき、病院で会いました。ああ、これをユナに渡してもらえますか?」

ユナにもらった懐中時計を、チャンソンに差し出すヒョンジュン。

ヒョンジュン「それから、どうか伝えてください。ユナに残された時間はどれも、すべてとても貴重だから、ちゃんと勉強して、幸せになるようにって。」

頷くチャンソン。

マンウォルにも微笑むヒョンジュン。

最後に、母のようにだきしめるソフィ。

 

~麻姑神シスターズの薬局~

泣きながら、飛び込んできたユナ。

ユナ「ハルモニ~~~」

あら、ピンクさんだ。

ユナ「残された時間を全部あげてもいいから、どうか、願いをかなえてください。」

微笑む麻姑神(ピンクさん)。

 

~リムジンタクシー乗り場~

出発直前、すでに、ヒョンミはタクシーに乗っている。

ユナが来るのを信じ、待っていたヒョンジュンがあきらめて、乗り込もうとした、その時。

ユナ「チ・ヒョンジュン!!」

振り返るヒョンジュン。

ユナ「これを持って行って・・・」

ユリの花束を手渡すユナ。

ユナ「あなたも私のお墓に花を残してくれたでしょ。だから、私もこれをあげる」

そう、一緒に、キム・ユナのお墓参りに行ったよね。

ユナ「私、麻姑ハルモニに頼んだの、それで、これをあなたにあげるために大きな借りを作ったんだからね。麻姑神様はね、私の願いをかなえる代わりに、私に、この先、本当にいい人生を送らなければならないって言ったの。だから、私のことは心配しないでね。」

ヒョンジュン「ありがとう。心配したりしないよ。」

お互いに、必死に涙をこらえるヒョンジュンとユナ。

ユナ「元気でね。チ・ヒョンジュン」

ヒョンジュン「がんばれよ」

ヒョンジュンの乗ったリムジンが走り去ると、今までこらえていた分、号泣するユナ。

それに気づきながら、前を向き、涙をこぼすヒョンジュン。

座り込み、大きな声を泣き続けるユナの傍らに、じっと立っている引導使者。

 

 

★『ホテルデルーナ』16話(2)雑感★

実は、この最終回、一番最初に見た時、まさかのボロ泣き。。。

13話を訳し終わったあたりで、我慢できずに見たんですが、14話、15話あたりを見た感じでは、泣くとは思ってなかったし、今も、このドラマ自体、“いつ見ても泣ける”という雰囲気のドラマではないと思ってます。

では、なにが、涙腺決壊のきっかけになったのか、と言うと、ソンビ様のメッセージカードです。。。

これは、だめでした。。。

(あと、OST効果もあるとは思いますが)

 

ソンビと、ソフィが、マンウォルを理解し、見守っていたからこそ、彼女は、修羅の孤独に耐えてこれたんだなぁって思ったら、泣けて、泣けて。。。

チャンソンを迎えてからの日々を、ソンビなりに祝福していたのだとわかり、マノルと一緒になって、嗚咽をあげてました。

 

本当の、最後が近づいてきました。

 

 

★『ホテルデルーナ』16話(3)に続く★