息を飲むユラ。
「今、私がここで見たものはなんなのだ?」
「媽媽・・・」
「今すぐ、答えよ!お前はずっと私を欺いてきたのか?」
鳳凰のかんざしを髪から抜き取ると、鏡めがけて、突き刺すおばば様。
ひょえ~~~。一発必中!← 何度見ても、おばば様のテクニック、お見事!
「なんというメギツネめ!なぜ、このようなことをするのだ?なぜ?」
「申し訳ございません。とんだところをお目にかけてしまい、注意が足りませんでした」
「どれほど恐ろしいことをしでかしたのか、わかっておらぬのか?」
「媽媽、わたしは陛下を愛しております。陛下も私を愛して下さっています。それの何が問題なのでしょうか?」
開き直った!
「陛下は、皇后を好いておるのだ。お前が欲しがることなどできぬ。」
「陛下を欲しがられたのは皇后媽媽です。陛下と私が先でした。陛下が結婚される前から、私たちは愛しあっていたのです」
「話にならぬ、今すぐ、皇宮から出ていけ!今すぐ!」
「陛下がお命じになれば、出ていきます。陛下が私を捨てると言うのなら、皇宮を去りましょう。ですが、陛下をおいて、私を追い出せる方は他にいらっしゃいません」
「何を言うか・・・」
あまりのことに、言葉を失うおばば様。
~ソニの居室前の廊下~
ソニを助け起こすワンシク。
「平気です、下がってください」
気丈に、ワンシクがかけたジャケットを返すソニ。なんとか、足を引きずり、自分の部屋に戻ろうとするが、力が入らない。
ソニを抱きかかえるワンシク。
「何をするのですか?」
「下ろして。いいから一度下ろしなさい。」
腕の下に手を回さないこの抱え方、腕の力いるよね?
「下ろして」とジタバタするソニを抱っこしたまま、部屋の中に入り、ベッドに腰を下ろさせる。
「出ていって下さい。すぐに」
そのまましゃがみ、ソニの足首の様子を見る。
「医療チームに言って、氷を持ってこさせます」
「平気だって言ったでしょう!」
「いえ、すぐにでも冷やさないと、もっと悪化します。媽媽」
「出ていって! 私の言葉をなんだと思ってるんですか」
頑ななソニに、仕方なく一礼し、立ち去るワンシク。
すぐさま、ユラを呼ぶソニ。
ソヒョン皇后が祀られている霊廟。
「いつまで私を苦しめる気だ?死んだのなら、さっさと逝ってくれ。俺の記憶にとどまるな!」
遺影から、飾ってある花から、ありとあらゆるものを叩き落とし始めるヒョク。
とうとう、骨壷にまで手を伸ばした時、
「陛下、お止めください」と、ワンシクが止めにはいる。
「放せ、すぐさま放せ」
ワンシクを殴り付けるヒョク。
「落ち着いてください」
「放せと言ってるだろう。放っておけ」
避けようともせず、一方的に殴られたままのワンシク。
サンドバッグ状態で、倒れ込む。
放心状態で座り込むヒョクと、きちんと胡座をかくワンシク。
ちょっと、落ち着いたヒョク。
「今夜のことは・・・」
「ご心配には及びません。陛下。ミン主席に、すぐに片付けるように伝えますので」
ヒョクの左手から血が滴り落ちているのに気付き、自分のハンカチで押さえるワンシク。
「皇后媽媽も、足に怪我をされました」
「聞きたくない」
立ち上がるヒョク。
ワンシクの口許も傷ついている。
「今夜、私に同行するか?」
~ソニの居室~
ユラを呼び出しだソニ。
「陛下がお怒りになられた? なぜです?」
「わからないわ。ミン主席が言ったとおり、陛下のお好きなものを準備したのよ。陛下のお好きな、フリージアや音楽、カンジャンチヂミ(ジャガイモのチヂミ)・・・」
「陛下は、本当にこれらのことに腹を立てられたのですか?実は、今日、皇后媽媽が準備されたものは、亡くなられた前の皇后媽媽がよく陛下のためにお出しになっていたものなのです。陛下のお好きなものと聞かれたので、ただ、お答えしたのですが・・・誤解してお伝えしてしまいました。」
もちろん、ねらい通りに上手くいった、とは言うはずないです(笑)
「ああ、だから、陛下は、私がソヒョン皇后をコピーしようとしていると思われたに違いない。お二人は、とても仲がよろしかったと聞いています。陛下は、思い出されてしまったに違いありません。」
してやったり!
ユラ「私さえ、そのようなことをしなければ・・・。いくら、皇后媽媽のためとはいえ、私の過ちでした。どうか、私を罰してください、媽媽」
ソニ「いいえ、ミン主席の気持ちはわかっていますから、責任を感じないで。誤解はすぐにでも解決しなければならないわ」
~ガレージ~
ヒョク専用の秘密のガレージにやってきたヒョクとワンシク。
ヘルメットを選ぶヒョク。
「危険なのはわかっているが、やらねば、もっと危険になるんだ。俺を止めようと思うな」
かなり、病んでる人の発想です。
「できる限り、ガードいたします。」
「ウビン・・・」
バイクのキーを投げるヒョク。
キャッチするワンシク。
ものすごいスピードで疾走するヒョクのバイクを、追いかけるワンシク。
ヒョクが思い起こしているのは、前皇后との幸せな日々。
同じく、ワンシクも、オンマとの楽しかった日々を思い出しながら、ヒョクのあとを追っている。
~長樂亭~
「皇后の部屋で騒ぎがありました。お二人は諍いをされたようです」
「諍い? なんの件で?」
チェチーム長から報告を受ける太后。
そこへ、警備チーム長がやってくる。
「媽媽」
「何事だ?」
「陛下の行方が、不明です」
驚き、立ち上がる太后。
「なに? いつからだ」
「宮殿を出られてからは、陛下を追跡できておりません。高速道路のカメラが、陛下ががオートバイに乗っているのを捕まえました。」
「オートバイ? なんという失態だ・・・。警護チーム長ともあろうものが、どのようにそんなことを言うことができるのだ?陛下がどこにいるのか、すぐに調べるのだ、すぐに!」
~高速道路~
疾走するヒョクたちを追跡してきた皇宮警察の車両。
橋の反対側に待ち構えている警備チームの配置をみて、ようやくバイクを止めるヒョク。
~皇宮内の広場~
物々しい雰囲気で、ヒョクたちの戻りを待っている太后や、皇宮職員。
「どうかされたのですか?」
呼ばれてきました~と言った感じの呑気なソニ。
ソジン皇女「皇帝が行方不明になり、宮殿中が大騒ぎだったのに、皇后は知らなかったのですか?ちょっと待って。そういえば、陛下は、皇后の部屋に行かれたと聞いたけど。もしかして、喧嘩でもしたの?」
ギロリと、ソニのほうを振り向く太后。
ソニ「いえ、喧嘩なんかしてません。ちょっとした誤解なんです。」
ユラ「陛下がオートバイで出て行かれたので、太后媽媽がずっと心配をされているのです」
ソニに説明するユラ。
ソニ「それで、どうして心配されるんですか?まさか、陛下は無免許とか?」
ユラ「以前、陛下は、ひどいオートバイ事故に合われたことがあるんです。それ以来、バイクに乗ることは、固く禁じられているのです」
戻ってきたヒョク。
慌てて、迎え入れる太后。
「陛下、一体、どうされたのです? どうして、オートバイなどに・・・。まぁ、手にケガを?どうやって、ケガをされたのです?」
「なんでもありません」
ヒョクと一緒にいたワンシクに目を止める太后。
思いきり、ワンシクの横っ面を張り飛ばす。
しかも2発。
「陛下を守ることが、そなたの義務であろう。単なる警備員ごときが、陛下の安全に危害を及ぼすことをなぜ、するのだ?」
「オマ媽媽、私が外出することを提案したんです。 彼は何も悪いことはしていません」
庇うヒョク。
「いいえ、例え、陛下が間違った決断をしたとしても、彼は陛下をおさえることができなかった。
それは警備員の責任だ。これを、処罰せずに、見過ごすことはできません。警備チーム長、この者を宮殿の独房に閉じ込めよ」
連れていかれるワンシク。
引き上げようとする太后が、ソニを責める。
「陛下が宮殿を出られたことさえ、気づかなかっただと?」
「申し訳ございません。オマ媽媽」
「今夜のことは、太皇太后陛下のお耳にはいれないように」
そこにいた職員や関係者に命じる太后。
「はい、媽媽」
「はい、媽媽」
ヒョクに話しかけるソニ。
「陛下。」
無視して、引き上げていくヒョク。
その様子を見て、ほくそ笑むユラ。
悲し気に、ヒョクの後ろ姿を目で追うソニ。
~独房~
ワンシクの独房にやってきたヒョク。
慌てて立ち上がるワンシク。
「大丈夫か? すまない、私のせいで、こんな目に合わせて・・・」
「太后媽媽のおっしゃることが正しいのです。私は、陛下を守るためにここにいます。 引き留めるべきでした。ですが、後悔はしておりません」
「イライラしていたが、お前のおかげで、気分が良くなった。感謝している。・・・扉を開けよ」
係員に命じるヒョク。
「陛下、私は3日間の拘留と観察を受けると知らされております。太后媽媽の命令に背くことはできません」
「これは、皇帝の命令だ。そして、お前は、私の警護人だ。警護人がこんなところにいたら、私は安心して眠れない。それは、私にとって、不利益だ。出ろ」
牢から出たワンシク。
「ありがとうございます。陛下」
「随時、私に同行するように。チョン・ウビン」
手を差し出すヒョク。
握手に応えるワンシク。
物陰から、その様子を見ている警備チーム長。
太后に報告するチーム長。
「あの警護人を釈放しただと?」
「はい、陛下自ら独房に行かれ、扉を開けさせました」
「陛下は、他人を信頼することには、慎重を期すというのに・・・。陛下が警護人を近づけているというのか? 名をチャン・ウビンとか言ったか?」
「はい、媽媽」
「どうも、嫌な予感がする。その警護人をよく見張っておくように」
「はい」
~おばば様の居室~
ヒョクを問い詰めるおばば様。
「ミン・ユラとの関係は? 彼女は、陛下を助ける主席補佐官ではなかったのですか? 陛下の女だったのですか?」
「ええ、そうです。ミン主席、いえ、ユラは私の恋人です。」
「それは、ありえぬ! 陛下は既に結婚しているではないか!」
「私は、皇后を愛していません」
「じゃあ一体なぜ、皇后と結婚したのですか?」
当然の疑問をぶつけるおばば様。
「ユラを守るためには、それしか選択がなかったのです。皇后は、とりあえず、今のままで留まることができます」
「どのように、そんな無責任ことを言うのだ? 陛下を好きで、陛下だけを信じて、嫁いできた皇后はどうすればいいのですか? どうして、こんなに残酷に、人を裏切ることができるのですか?」
「ハルモ媽媽、わたしを幸せにしたくはないのですか? 私に、力を貸してください。この宮殿で、私が息ができるのはユラのおかげなんです。どうか、私たちの関係を認めてください。私は、背中を向けたくないんです、ハルモ媽媽」
半ば強迫、半ば開き直りの発言に、驚きを隠せないおばば様。
こんななっさけない顔が演技できちゃう人物が、大韓帝国の皇帝で、あなたの孫だそうですよ!
~長樂亭~
「陛下によく思われたくて、愚かなことをしてしまったんです。」
太后に、昨晩のことを説明するソニ。
「(陛下がお好きだという)フリージアの花や音楽や、ジャガイモのチヂミを用意したんです。きっと、それらが、陛下にソヒョン皇后を思い出させたに違いありません。」
「陛下がそれらを好きだとどうして知ったのだ?・・・もしや、ミン主席から聞いたのか?」
「はい、媽媽。ですが、ミン主席は、私の助けになると思って話してくれたんです。それに関しては、ミン主席を叱らないでください」
「そなたには、イライラさせられる。どうして、そんなに呑気でいられるのだ? この宮殿では、誰も信頼できないことを知らないのか? なぜ、結婚式の日にクレーンが故障したと思っているのだ? 偶然ではなかったのだぞ。」
「それでは、なんだったというのですか?」
「あの日、何者かが、油圧システムを故障するように手配した。 意図的だったのだ」
「媽媽、それは、わたしを傷つけるためにされたものだとおっしゃってますか? 誰がそのようなことを? どうして?」
「それが、そなたの立場の本質なのだ。睡眠中にも攻撃される可能性もある。嫉妬や羨望、多くの人々への憎しみに、すべて自分で耐えなければならぬのだ。もし、自分の(皇后という)立場を維持したければ、側にいるすべての人を洞察するという覚悟を持つのだ。まずは、そなたに一番近い人物から疑うのだ。理由もなく、そなたに親切にしてくる者、その者がそなたの敵になることもありうる」
そんなこと言われても、 まだまだ実感のないソニ。
~ショッピングモール会議室~
いきなり、ぽーんと、ヘロや役員たちの前に放り投げるソジン皇女。
ヘロ「これは、ビンセント・リー作家の小説では?」
ソジン「アメリカの私の情報源によると、彼の小説が韓国語に翻訳されるそうよ。」
まるで自分の手柄のように話すソジン。
ヘロ「彼は変わった経歴を持つ作家として有名ですよね。メールを通して、米国の彼のエージェントとだけ通信する。誰も彼の顔を見たことがない。」
ソジン「だ・か・ら・よ! そこが、私のねらいよ。うちのショッピングモールで、彼のサイン会をすることを提案するのよ。ね、今までの中でも、最高級のアイデアでしょう!オ室長、この件、あなたにまかせようと思うの。」
ヘロ「え?」
ソジン「なんで? 完璧なオ課長にすれば、お安いご用でしょう? あの日だって、皇帝の質問には、淀みなくスラスラ答えてたじゃないの」
ヘロ「探します!私が探しだしてみせます!」
ヘロも意地っ張りだからね(笑)
~ニュース映像~
「帝国の結婚式での事件の原因を究明するための捜査チームは、原因は単純な誤動作であると結論付けました。現場を調査した後、皇室広報担当が発表しました・・・」
出版社で、ニュース映像を見ている謎の青年。
そこへ、出版社の担当者に食らいつきながら、入ってきたヘロ。
「少しでもお時間をいただきたいんです」
「ああ、だからダメだと言ったでしょう」
「そこをなんとか!」
「だめだったら、だめです」
その様子を目で追う青年。
「ちょっと待ってください。ビンセント・リー作家様がこの代理店と契約したことを知って、ここに来たんです。」
いきなり自分の名前を言われた青年、素知らぬふりを通すものの、固まる。(笑)
担当者に食い下がるヘロ。
「彼が、ショッピングモールでサイン会をしたなら、それは素晴らしいプロモーションになるでしょう。」
「興味ありません。帰ってください。、もう結構です」
「いいえ、もし、彼のプロモーションに、皇室が関われば、彼にとっても、話題性は十分ですよね」
「お願いします、なんとかお願いします。」
名刺を担当者に強引に手渡すヘロ。
「もう結構ですから、かえってください。どうか出てってください。・・・ナ代理」
部下に命じて、ヘロをつまみださせる担当者。
「電話してくださいね!」
ヘロの声が響き渡る。
「いやぁ、失礼しました。 この業界では、どうしても情報が行きかうんです」
「まぁ、私はサインが嫌いなんですよね。人々も、私の神秘性が気に入ってるはずですよ。もし、あなたが、私の秘密を守れないようであれば、別の代理店で契約するだけです」
青年が立ち上がると、
「いえ、いえ、いえ、めっそうもございません」
ひれ伏す勢いで押しとどめる担当者。
「どうか、我々にお世話をさせてください。誰も、作家様を煩わせるようなものはおりません。ご心配には及びません」
ヘロの名刺をその場で、床に投げ捨てる。
~ソジン皇女の居室~
「アリお嬢様がお見えになりました」
ソジンがマッサージチェアに座っている時に、ソジンの部屋を訪ねてきたアリ。
「オマ媽媽、おはようございます」
わざとらしいほど、にこやかに挨拶をするアリ。
「オマ媽媽、どうすれば、そのように滑らかなお肌でいられるのでしょうか?まるで、卵の白身のように(つるつるに)見えます」
「卵の白身?」
「人は、まさに、そのような素晴らしい肌に生まれてこられるべきなのは事実です。オマ媽媽の肌のために、フルーツを買い求めました」
淀みなく説明するアリ。
アリ「イモ! フルーツはまだなの?!」
相変わらず、シッターには、タカビーなアリ。
綺麗にカットされたフルーツが運ばれてくる。
ソジン「あんたたちは二人は、ほとほと完璧なチームね」
アリと、シッターを、呆れた様子で見るソジン。
「陛下にお会いになる前に、これを注意深くお読みください」
英字新聞のようなものを、アリに渡すシッター。
“中国はいかにして、貿易戦争に勝利したのか”
“米国対チャイナは貿易戦争について話を・・・”
スラスラと英語で読んでいくアリ。
「なんで、あんたは7歳の子供に、こんなものを読ませてるの?これを読めたら、この子が皇帝にでもなれるっていうの?」
文句を言っているところに、記事を読んでいたアリが立ち上がる。
「なんてことでしょう、オマ媽媽・・・。米中間の貿易戦争の停戦が終わったので、米国の株式市場は0.32%下落したそうです。」
それを聞きながら、したり顔のシッター。
「そんなの、私たちに関係ないでしょ!ただ、外に行って遊んでおいで! あんたは、この子の育て方を間違えてるわ!」
「アリお嬢様は、大変賢い方です。全て、たちどころに習得されます」
「はい、はい、そうでございますか。アリお嬢様はそうなんですね」
嫌味たっぷりに言い返すソジン。
~ヒョクの執務室~
朝のご機嫌伺いに訪れたアリ。
「陛下、よくお休みになれましたか?」
「ああ」
「私は、この地球環境のことが心配であまり良く眠れませんでした。昨日読んだ“The New York Times”によると、パリ協定にて、2300年までに温室効果ガス排出量の目標削減率に到達しなければ、地球の寿命は突然の急降下に直面する可能性があるそうです。その調査結果で読みました。私は非常に心配しています、陛下。」
あまりの小賢しさに、どんと机に、目を通していた本を叩きつけるヒョク。
「もう出ていきなさい」
「はい、陛下。本日もお身体に気をつけてお過ごしくださいませ。お食事も召し上がってください。では、失礼いたします」
オドオドした様子で出ていくアリ。
「乳母、この子にあのようなことを勉強させる必要はない。年齢に合った人形遊びでもさせたほうがましだ。
それから、今後は午前中に、私を訪問する必要はない。」
シッター「え? ・・・はい、陛下」
それを聞き、泣きそうなアリ。
入れ替わりに、
「陛下、皇后媽媽がおみえです」と告げる執事。微妙な雰囲気のまま、出ていくアリとシッター。
ヒョクの前に進み出るソニ。
「怪我をされた手はいかがですか?」
「大丈夫だ」
「陛下、昨晩のことをお詫びにきました。私は、ソヒョン皇后の真似をしようとしたんじゃありません。」
「その件については、今、話したくない」
「では、私は、陛下のお怒りをやわらげるためには一体どうすればよろしいでしょうか。どうか話してください」
「何もしなくていい」
「え?」
「もし、少しでも申し訳ないと思うのなら、何もしないでくださいと言ってるんです。このように、ここにも来ないでください。そして、私を待ったりしないでください! 公式の職務以外には、皇后の部屋を訪問することもないでしょう」
「それは・・・どういうことでしょうか。私たちは新婚なのに・・・。陛下がいらっしゃらないというのは・・・」
「私にも、皇后についての考えをまとめるのに、時間が必要なんです。とにかく、出てってください」
「あまりにもひどすぎます。ソヒョン皇后を思い出させたのは間違っていましたが、そこまで怒る必要はないはずです。私は何度も謝罪しました。私は、なぜ陛下がそんなに、過度に怒っているのかわかりません。」
「皇后は、“過度に”と言われたか? 誰が? 私が?」
「ちゃんと、お話しください。陛下の嫌いなものや好きなものを私におっしゃってくださればいいんです。私が、陛下に近づきたいと思う気持ちをどうしてわかってくださらないのですか?」
「やはり、皇后も同じなのだ」
「え?」
「なんでもない。私はもう皇后と話をする気がしません。朝から、腹を立てたくはない。出て行ってください」
「ええ、今すぐ出て行きます。私だって、陛下のせいで、これ以上傷つきたくありませんから。」
行きかけて、もう一度振り向くソニ。
「陛下がこんな肝の小さな人だとは思いませんでした!」
「肝の小さい・・・」
初めて言われたんだろうね(笑)
ソニにしたら、まだ、言い足りないくらいだけど。。。
痛む足を引きずりながら、執務室から出てきたソニ。
その後ろをずっと、見守って控えているワンシク。
ソニの居室に入る直前に、腕をつかんで呼び止める。
「なにか用ですか?」
ワンシクには、なぜか、どこか頑なな態度をとってしまうソニ。
「ここに腰掛けてください、媽媽。 足首の様子を見せてください」
ハンカチを上がり段に敷くワンシク。
強引に足袋を脱がせると、案の定、内出血を起こしているくるぶし周辺。
「昨晩より、悪くなってますね。これでもまだ、痛くないと?」
カイロをあてるワンシク。
「痛いわ・・・。痛い。すごく痛くて・・・泣きそうよ」
なんとか、泣くのを我慢するソニ。
「じきによくなりますから。泣かないでください」
「足首が痛くて泣いてるのよ・・・。足首が・・・本当よ」
究極の意地っ張りぶりが可愛くて、つい、口元がほころぶワンシク。
「わかってます・・」
そこへ、ユラが通りかかる。
「皇后媽媽・・・」
立ち上がるソニとワンシク。
「ミン主席・・・」
「足首のことが気になって来てみたのですが、チョン警護人に手当してもらっていたようですね・・・」
「そういうわけではなくて・・・」
敷いてもらっていたハンカチを拾い上げると、「中に入りますね」と、居室に入ってしまうソニ。
「昨晩より悪くなられているようです。どうか、きちんと手当してあげてください」
「そうします」
立ち去るワンシク。
すれ違いざま、なにか違和感を感じるユラ。
ワンシクの後ろ姿をじっと目で追ってみる。
「午後1時と夕方には福祉施設を訪問します。皇后媽媽は、陛下と宴会に出席しなければなりません。その足首で大丈夫ですか?」
「もちろん。 当然、私は参加しなければなりません。」
「陛下から、別の仕事を言いつけられたので、今日は宮殿の外で仕事をすることになっています。申し訳ありませんが、私は同行できません。」
「とんでもない。心配しないでください。お仕事がんばってくださいね」
「それでは・・・」
ユラが去り、一人になったソニ。
「あ~あ、がまんすべきだったのに。今夜、どんな顔して、陛下に会えばいいのよ?」
つい、さっき、怒りにまかせてヒョクに悪態をついてしまった自分に、溜息をつくソニ。
~ショッピングモール~
「これから、皇帝に代わって、このショッピングモールの新CEOに就任した、ミン・ユラです。やることがたくさんあるので、公式の就任式は控えます。」
そこへ、飛び込んできたソジン皇女。
「一体、どんなゴミが来たですって?」
バッグを床に叩きつけるソジン。
「最高経営責任者(CEO? 誰があなたが最高経営責任者(CEO)だと言ったの?私をからかってるの? ミン主席が、経営管理について何を知ってるっていうの?ここで、ゲームでもやろうっていうの?」
がなりたてるソジンに対し、一切、動じないユラ。
「今までの売上報告を見ると、イ代表様こそ、ただゲームで遊んでいただけの方のようですね。責任を取るのは、あなたのほうでは?」
「なんですって?」
「太后媽媽がイ代表にもう一度チャンスを与えたいと思っているので、イ代表は、共同最高経営責任者に留まれることに感謝するべきです。ですが、太后媽媽とは違って、私は忍耐強くはありませんよ。」
「嘘つき!オマ媽媽が、私にそんなことするはずないわ!私が、真相を暴いてやるから!あんた、待ってなさいよ!」
~おばば様の部屋~
太后と話をするおばば様。
「なぜ、すぐに私に言わなかったのだ? ミン・ユラが陛下の恋人であると・・・」
ショックを受けてるおばば様。
「ミン・ユラは、皇后になることなどできない悪魔です。皇后が入宮する前に、あの者を取り除きたかったのですが…、申し訳ありません」
「申し訳ないのだ。皇后に、とても申し訳なくてたまらない・・・」
涙ぐむおばば様。
そこへ、「オマ媽媽~~~~」と絶叫しながら、飛び込んでくるソジン皇女。
「どきなさいよ! オマ媽媽~~~」
小さな子のように地団駄を踏みながら、部屋に入ってくる。
「皇女。 なにを、そんなに大騒ぎをしているのですか?」
サングラスを取ると、マスカラが流れまくって、これ、身内でも引く姿だな。
「ミン・ユラが、ショッピングモールに割り込んで、自分が代表みたいに振舞ってるんですってばぁ~~」
「ああ、皇女とその件に離す機会がなかったのだ。私が許可した。私が命じたのだ」
「そ、そんなぁ~~~~」
とうとう、座り込んで大泣きを始めるソジン。
驚くおばば様。
「一体、どういうことだ?説明してみよ」
「私は、徐々に宮殿の問題から、ミン・ユラを降ろすために、ショッピングモールの担当に、ミン主席を置いたのです。」
「お母様が、これを解決してください。お母様は、私が代表になるために、何をしたか、ご存じのくせに!」
それ以上、何も言うな、とギロリと、ソジンを見下ろす太后。
「ソジン皇女が何をしたというのだ?」
おばば様は知らない様子。
「なんでもありません。媽媽・・・。皇女が必要以上に、感情的になっているだけです。皇女、あとで、個人的に話しましょう」
「私、道を踏み外すかもしれませんわ。どうか、見ててくださいませ」
まったく、子供がそのまんま、大きくなった子供です。。。
「どいてったら!」
ただならぬ孫娘の様子に、深くため息をつきながら、嫁を見据えてるおばば様。
~プール~
まぁ・・・チェ・ジニョクペンの皆さま、眼福な胸筋が触れられそうな距離にあるように感じますね。
シン・ソンロクも十分節制した、自然な筋肉のついてる身体ですが、ジニョガは、このワンシク役のために、特別に作り込んでますからね。
ヒョクと、水泳対決なのかな。
ヒョク相手に、水泳でも互角なところを見せるワンシク。
ピョン先生の家の裏手の川で鍛えたんだよ(涙)
二人の泳ぎを見ている警護長のもとも、部下が「これば、チョン・ウビンのファイルです」と持ってくる。
「ご苦労」
早速、目を通す警護長。
(チョン・ウビン)
「ソウルのマッポ出身か・・・。体育系の専科学校に通っていた・・・。一人っ子か」
「お前は、水泳もうまいんだな・・」
「ちょっとでも気を抜いていたら、抜かれていたよ。そこまでして、皇帝を負かしたいのか?」
「私は、競争には、勝者と敗者しかいないと言われてきただけです」
「あははは。やはり、お前と競争するのは本当に楽しいぞ。もう一度レースしよう」
~ソニパパのチキン屋~
表に貼ってあった、アルバイト募集の貼り紙を手に取るヘロ。
「なんなの、これ? アッパ、なんで、人なんか雇おうとしてんのよ?」
「うちも、皇室とは義理の関係にあるわけだから、それに恥じないよう、海外でも、いくつかの活動をするべきだろう」
でたよ、アッパの山っ気が!
「これが、オンニを皇室に嫁がせようと一生懸命になった理由なの?VIPカードを使って、あたかもアッパがやってように見せるっていうの?なんで、アッパは他人のお金で贅沢に生活しようとしてるの?」
「別に、これは“他人の金”ってわけじゃないだろう。みんなのものだ。これは、俺が貼ったんだぞ。なんで、お前が剥がすんだよ」
こんな会話を、店内でする父と娘。。。(苦笑)
「いいかげんにしなさいよ」
そんな二人の会話をじっと聞いていた 謎の作家ジョナサン・リーこと、謎の青年。
実は、そう謎でもないけどね(笑)
ささっと、表に出てきて、貼り紙を剥がす青年。
《アルバイト募集》
~ソジン皇女の部屋~
ウイスキーをがぶ飲みしているソジン。
同じく隣で、座っているアリ。
アリ「そんなに飲まれては病気になってしまいます。何か悪いことが起こったのですか?オマ媽媽?」
ソジン「そう呼ばないでって言ったでしょ!あんたにそんな風に見られるのに耐えられないのよ、いいから、出て行って!」
アリ「どうして、そんなに叫ばれるんですか、オマ媽媽? 怖いですぅ。」
泣き出すアリ。
ソジン「出ていけって言ったでしょ。 私の言うことが聞こえないの?私の視界から消えなさい!」
ソファから追い立てるソジン。
シッター「何をされているんですか!」
アリと入れ替わりに、シッターが入ってくる。
シッター「何も悪いことをしてなかったのに、なぜ泣かせたのですか?」
ソジン「あの子はね、生まれてきちゃだめだったのよ!」
シッター「どうして、そんなに残酷なことをおっしゃるんですか? アリお嬢様は、皇女媽媽の娘じゃありませんか」
ソジン「今日から、その契約は無効になったのよ。もし、あなたが幸せでなければ、陛下のところへ行って、自分で言いなさいよ!これからは、私は、こんな話にならないような母親にはならないからね」
シッター「お言葉に気を付けてください。アリお嬢様が聞かれたら、どうなさるおつもりですか」
ソジン「なんでよ。 あの子があんたの娘だから、心配なんでしょ。」
酔っ払っているとは言うものの、それなりに秘密にしてきたことを、ぶちまけはじめたソジン。
ソジン「どうする? なんで、陛下のところに行って、彼に後宮にしてくれるよう、頼まないのよ」
シッター「皇女媽媽・・・」
怒りをおさえるシッター。
騒ぎを聞きつけたのか、部屋に入ってくる太后。
太后「これ以上、大騒ぎするなと言ったはずですよ。皇太后媽媽に、この事実がわかったら、私たち全員が宮殿から追い出されるでしょう。だから、口を閉ざさなければなりませんよ」
ソジン「なぜ、私ばかりが、いつも犠牲を払わなければならないのですか?一生のうちに一人も赤ちゃんを産んだことがない私が、一晩で、母にさせられたんです!たとえ、ショッピングモール全体を手に入れたとしても、満足したりしないでしょう。私は、代表の座と引き換えに、あの子を自分の子供にすることを同意したんです。それなのに、オマ媽媽は、そのささいな立場さえ、私から取り上げようとなさるんですか?」
太后「この件は、私にまかせない。それまでは、とにかく辛抱なさい!私も、ミン・ユラをそう長い間、置いておこうとは思っていない」
うんざり気味の太后。
この人も、案外、取って出しな人なんだよね(笑)
★Ep12に続く★