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ワンシクのオンマの食堂の前に、1台のバイクが止まる。載ってきたのはワンシク。
店の前には、物騒な男たちが2~3人たむろっている。
店の入り口の前に立ち、黒いマスクを外すワンシク。。
~回想~
在りし日、忙しそうに働いているオンマ。
「ちょっと、待っててくださいね」
「はい、ただ今、おもちしますね。さぁ、たくさん召し上がれ」
「ああ、ワンシガ! そんなところで何してんだい? さ、こっちに来て食べな。オンマがサムギョプサル、持ってきてやるから」
ガラス戸にうっすらと映るワンシクの姿は、ちゃんと元の巨漢のワンシクなの・・・(涙)
「・・・オンマ」
必死に涙をこらえるワンシク。
ワンシクが次に向かったのは、マ・ピルジュの会社。
立てかけてあった鉄のパイプを掴むと、まず、門扉の上につけられていたCCTVを壊す。
「おい!」
軽々と門扉を飛び越え、中に入るワンシク。
見張りの男たちを次々に倒し、事務所に入ると、置いてあったゴルフクラブで、そこら辺にあるものを片っ端から、ぶち壊していく。
“代表マ・ピルジュ”の名札の置かれた机の上にあった開発同意書を燃やすワンシク。
鏡に映る、どこか、馴れない自分の顔。
皇帝イ・ヒョクに寄り添うように眠っていたユラを思い出し、鏡に名札を投げつける。
「マ・ピルジュ、ミン・ユラ、イ・ヒョク・・・おまえら、全員、俺が殺してやる!」
吠えるように、泣きわめくワンシク。
その足で、先生の家に足を運ぶワンシク。
「ヒョン(お兄ちゃん)!」
ワンシクの姿を見つけ、駆け寄るドンシク。
「会いたかったよ、ヒョン!」
自分に抱きついてくるドンシクを、辛そうに見下ろすワンシク。
「どうして来た?連絡も寄越さず・・・」
先生の問いかけには答えず、ドンシクの腕を掴む。
「一緒にこい」
「どこに行くの?ヒョン?」
答えないワンシク。
山道を黙って、歩き続けるワンシク。
「ヒョン、どこに行くの?これからは、ヒョンと一緒に暮らすの?」
少し、開けたところで大きな岩を指し示すワンシク。
「ちょっと、ここで座ってろ」
素直に、岩に座るドンシクを見て、そのまま、立ち去ろうとするワンシク。
すぐさま、岩を降りると、ワンシクの手を掴むドンシク。
「どうしたの? どこ行くの?」
ドンシクの手をふりほどく。
「ついてくるな、そこにいろって言っただろ!」
「でも・・怖いよ。・・・・わかったよ。」
もう一度、岩に座るドンシク。
「ヒョン、すぐに戻ってきてね? いい?」
涙をこらえて、その場を離れるワンシク。
~マ・ピルジュの事務所~
「なにがあった?」
知らせを受けて、戻ってきたピルジュ。
「逃げられました」
頭を下げる配下を怒鳴りつける。
「おまえら、一体、なにしてた?!CCTVはチェックしたのか?」
「奴が・・・壊しまして、開発同意書も燃やされました」
「このバカものが!」
殴りつけるピルジュ。
~先生のおうち~
すでに、日が暮れて、夕飯の支度をおえた先生。
「どうして、お前だけでも戻ってきた? ドンシクはどこだ?」
様子のおかしいワンシクを問い詰める。
「もう、あの子の世話をする必要はありません」
「もう暗くなってるんだぞ。一体、どこに置いてきた?」
「あの子は、もう、俺とは一切関係のない子供なんです!・・・ですから、オルシンも気にしないでください」
「なにがあった?」
「オルシン・・・俺は・・・俺はどうしたらいいですか?」
そういって、泣き出すワンシクを驚いたように、見つめる先生。
雨が強く降り、雷が轟く中、じっと言われたとおりに、ワンシクを待っているドンシク。
軒下に座るワンシクと先生。
「あの子は、雷を怖がっているぞ。なぜ、ほっておく?お前の死んだ母親が、お前に、最後まであの子の面倒をみるように言ったんだろう? どうするんだ? まぁ、実の子でも弟でもない。赤の他人だ。あの子に罪はないが、あの子は敵の息子だから、彼を捨ててもしょうがない。誰もお前を残酷だと責めたりはせんだろう」
ピョン先生お得意のシニカルな皮肉ですが、ドンシクを思うと、それすら、ムカつく!
「オルシン!!」
「わ、びっくりした。俺をろう者にする気か?このバカめ!」
傘をさして、野道を歩くワンシク。
「あの子が死のうと、俺に何の関係がある?」
こら!早う、行け!
雷雨が吹きかかると、傘を捨て、走り出すワンシク。
びしょ濡れのまま、じっと座っているドンシク。
「ナ・ドンシク・・・」
「どうして、こんなに遅かったの?ヒョン・・・」
「なんで、ここに座ってた? こんなところで何してる? 雨が降ってるじゃないか!」
「ヒョンがここに座ってろって言ったんじゃないか」
「いくらそう言われてもバカじゃないのか? 俺が来なかったら、どうするつもりだ?」
「でも、来てくれたじゃん。ああ、だめだよ、ヒョン、ずぶぬれだ」
小さな手で、ワンシクの顔の前で、雨除けをつくるドンシク。
ドンシクを抱きしめるワンシク。
「すまない、ドンシク。俺が悪かった。」
ドンシクを寝かしつけるピョン先生。
「出来もしないことを・・・。あんなんで、どうやって、皇宮で生き残れるのか?」
~警護員の訓練~
ランニング中に、隣の同僚に話しかけるワンシク。
「今日、スパーリングパートナーですよね? 俺と交代しませんか?」
「嫌だ、どうして俺が?」
「皇帝の剣闘がどれくらい強いのか、興味があるんです。だったら、今週の夜勤、やりましょうか?」
「本当か?よし」
訓練を見守っているチーム長に話しかけるマ・ピルジュ。
「皇宮の中に、怪しい奴はいませんか?」
「特に誰も。まだ、ナ・ワンシクを見つけられないのか?」
「奴はしつこいから、宮殿に潜入しているかもしれない。あいつは訛りもキツイし、大柄だから、目立つだろう。疑わしい人物がいたら、すぐに知らせてくれ。」
と言いつつ、新入りが気になるピルジュ。
「あの男は、なんという名前だ?」
「チャン・ウビンだ」
「チャン・ウビン、チャン・ウビン・・・」
~皇宮~
「皇帝のお部屋へ行かれる途中ですか、媽媽?」
太后を呼び止め、一礼するユラ。
「誰が彼を雇ったかについて、クレーンの操縦士が告白したのだ。陛下に直接、ご報告もうしあげる」
「そうでしたか。真実が明らかになることは、喜ばしいことです」
「なんと愚かな? そうではないか? あの者が容易に捕らえられることはわかっていたであろう。墓穴を掘ったものだ。さ、行こう」
太后が再び歩き始めると、ボイスレコーダーのスイッチを入れるユラ。
《私に嘘を付けとおっしゃるんですか?》
《嘘ではない。真実を作ることを提案しているだけだ。あなたが、ミン・ユラがあなた方を雇って皇后のクレーンを改ざんしたと言ったら、太后媽媽があなたの息子の手術費を負担してくださるだろう。それだけでなく、あなた方家族が今後、金銭的なことを気にせず、生活できるだけの費用についても、援助してくださるだろう》
まずい、と顔をゆがめるチェチーム長。
訪ねるまでもなく、自ら出向いてきたヒョク。
驚く太后と、勝ち誇ったように、ボイスレコーダーをとめるユラ。
ユラ「太后媽媽。なぜ、ここまでして、私を嫌うのです? どうやって、そのような嘘を陛下に告げようとされるのですか?あの事故を私のせいにするおつもりですか?」
ヒョク「本当に、母上が命じられたのですか?ユラに責任を負わせるために、こんなことまでされたのですか?母上には、深く失望しました。」
太后「違うのです、陛下」
ヒョクに駆け寄る太后。
太后「皇宮に、皇后を連れてきたのは私ですよ。私には、皇后をあのような目にあわす理由がありません。」
ユラ「私に責任を押し付けるおつもりだったのでしょう。もし、このことが、宮殿の内務に発覚したら、媽媽の尊厳が損われるだけでなく、お立場をはく奪するに十分な事件となります。」
悔しそうに、ユラを見据える太后。
ヒョク「母上は、まさに、犯罪に関係されたのです。たとえ、太后の立場についておられようとも、刑罰に立ち向かわなければならない。これもまた、皇室の規律の一つです。母上は、この件を誰よりもよくご存じだと確信しております。違いますか?母上?」
ユラ「陛下、ですが、陛下のお母様でいらっしゃいます。それが私の怒りを抑えようと、努めている理由です」
太后「黙れ!そなたが私の心配をするというのか? 何様のつもりだ」
今度は、おばば様も外に出てきました。
おばば様「一体、何の騒ぎだ?」
ユラ「媽媽・・・それが・・・」
ユラが一歩、前に出て、おばば様に報告しようとするのを引き留める太后。
太后「わかった、ミン主席。そなたと私で、個人的に話をしよう」
無視して、報告を続けるユラ。
ユラ「皇后陛下のクレーン事故について、太皇太后陛下に報告するためにここに参りました」
おばば様「おお、そうか。では、今すぐ、中に入りなさい」
勝ち誇ったように、笑みをみせると、階段を昇っていくユラ。
~太皇太后の居室~
ユラから報告を受けるおばば様。
「それは君主制廃止派の派閥によって編成されたものなのか?」
「その通りでございます、媽媽。調査の結果、太后媽媽は事件に関与していないことが確認された。」
「そうであろう。太后はそのようなことはせぬ」
先日来、ヒョクと連れ立って歩いていたユラのことが気になっているおばば様。
「ミン主席は、なぜまだ、独身でいるのだ?綺麗で、仕事もできる。多くの引き合いがあるであろう?私にも、思い当たる人物がいないわけではない。紹介してもかまわぬか?」
「媽媽のお申し出に感謝致します。ですが、もうしばらくは、陛下と皇后媽媽のお力になりたいのです」
「そなたがしたくないというのであれば、私には何もできんの」
「それでは、 私はこれで失礼します」
おばば様、探りを入れ始めてます。
一方、太后に土下座するチェチーム長。
「申し訳ございません。太后媽媽。死に値する罪を犯しました。あの者が私を裏切るとは思いもよりませんでした」
「お前の失策ではない。私の警戒が甘かったのだ。ミン・ユラを見くびっていたようだ」
太后の視線の先は、ヒョクがいるであろう、高台の東屋。
その東屋で、ピルジュと話をしているヒョク。
「お前が始末したんだろうな」
「ご心配なさらずに。陛下。この件は誰にも命じず、自分で処理いたしました」
「クレーン事故の件は、ミン・ユラにも黙っていろ。私がお前に命じたことは・・・」
「もちろんです。陛下」
ヒョクの視線も、下のほうの、太后と土下座しているチェチーム長に向いている。
「まだ、ナ・ワンシクの死体を見つけられないのか?少なくとも、これで、メンツを保つべきだな」
~太后の居室~
ユラと話をつけようとする太后。
「望みはなんだ?」
「ショッピングモールの運営を含む管理権限をいただきたいです」
「なにを言うか。あそこは、ソジン皇女が管理しているのだぞ」
「もし、ソジン皇女様にまかせていらっしゃったら、ショッピングモールに、この先はありません。私でしたら、代表になることを喜んでお引き受けいたしましょう。条件はただ一つ。1ヶ月後に売上が50%増加した場合、その株式の10%を私に与えるというのはいかがでしょうか?」
「気でも狂ったか?株を寄越せだと?」
「私なら、太后媽媽の会社をもっともっと成功させることが出来ます。そんなに過ぎた要求でしょうか?」
「おまえに操られた陛下と、一体、どこまで行けるのか、見ものだな」
「どうぞ、見守っていてくださいませ。私も、それが知りとうございます」
悪女の微笑みを浮かべ、一礼し、退席するユラ。
「あの下品な魔女が、宮殿でのさばっているというのに、皇后は何をしているのだ。皇后は今、どこにいるのだ?」
その頃、ソニは発声練習中・・・。
「ああ、なんだか、声が出にくいし、体重も増えちゃったわ」
反対側の通路を歩くアリ王女に気づき、手を振るソニ。
笑顔で、手を振り返すアリ王女。
「媽媽、お元気でいらっしゃいますか」
隣でシッターさんも一礼。
「まぁ、ごきげんよう。アリお嬢様」
「昨日 "アリラン"を歌っている媽媽のビデオを見ました。とても、かっこよかったです。とても素敵でした。本当に感動しました。ほとんど泣きそうでした」
「私、歌の才能だけはあるみたいなんです」
「もしよければ、皇后媽媽から歌を習ってみたいです。教えていただけますか?」
「もちろん。いつでも聞いてください」
「私、宮殿にいらした媽媽を歓迎する贈り物を準備したんです。ヨモ(シッター)、私にちょうだい」
「申し訳ありません。お嬢様、プレゼントはお持ちしませんでした」
「え? 持ってこなかったの? なぜよ? あなたに出来ることはないの? ホント、つかえないわね」
いつものアリとは大違いの口の利き方に、面食らうソニ。
っていうか、まんま、ミニ・ソジン皇女。
そして、やはり、さすが、韓国ドラマの子役ちゃん。
黙って、頭を下げるシッターさん。
「申し訳ございません」
「いいから、すぐに取ってきて!今すぐ!」
小声で、アリに話しかけるソニ。
「ねぇ、アリお嬢さま」
「はい、皇后媽媽」
一瞬にして、いつものアリ。
「私のために、何を準備してくれたのかわからないけれど、ヨモ(シッターさん)に、そんな口の利き方をしてはいけません」
「なにか、間違ったことをしましたか?」
注意されて、涙ぐむ王女。
「いくら、この方が、あなたの乳母であっても、アリお嬢様よりも年上です。失礼なことは正しいこととはいえません、ですから・・・」
「おやめください、皇后媽媽。アリお嬢様は、何も間違ったことはされておりません。」
ソニを止めるシッター。
「子供にこんな失礼なことを言わせてはだめですよ」
「お嬢様は、ただの子供ではありません。皇女様のたった一人のお嬢様なのです。私の間違いを指摘されただけです。それ以外のことについてはどうか、おっしゃらないでください。それでは」
退席しようとするシッターの手をふりほどくアリ。
「手を離して! なぜ、邪魔をするの? あなたのせいで、皇后媽媽に嫌われてしまうわ。もう、いいから、どいて!」
シッターを突き飛ばすようにして、先に部屋を出ていくアリ。
あとを追うシッターの後ろ姿を見ながら、
「なぜ、あんなに冷静なのかしら」と不思議に思うソニ。
「ああ、寒い! なんだか、寒くなってきたわ」
~東屋~
ソニ「そんなことはありえません!」
おばば様「なにがあり得ないというのだ?私は、すでに心を決めたぞ」
「ハルモ媽媽!」
「それ、スリーゴーだ」
「ああ、助かった!」
花札に興じるおばば様とソニ。
おばば様のインチキを見破りながら、楽しそうに相手をしてあげるソニ。
そこへ、太后がソニを探しに、わざわざ出向いてくる。
楽しそうに、花札をしている2人を見て、あきれ果てる。
~太后の居室~
しずしずと、太后の前に座るソニ。
「今のは一体、なにごとです? なぜ、尊厳を保とうとされないのですか、皇后」
「ハルモ媽媽が退屈だとおっしゃったので、一緒に、楽しく過ごさせていただいておりました」
「皇后、どこにいても常にあなたの尊厳を維持しなければならないことを忘れてしまいましたか?たとえ、天皇と夜を過ごしたからといって、あなたが勝ったと仮定するのは早すぎますよ。
自分自身を美しく、皇帝にとって魅力的なものにすることはあなたの義務の一部です。」
「申し訳ありません。オマ媽媽。自分でもどうも、上手く振舞うことができないんです」
「これぞ、まさに邪悪なヘビが、陛下の周りに集まる理由です。」
「どういう意味ですか?」
「チェチーム長。皇后と一緒に出掛けましょう」
~武道場~
ヒョクと武芸の稽古をつける警護員たち。
単に、皇帝が相手だから、と言って、加減をしている風には見えないので、そこそこ、ヒョクも強いんだと思われます。。
「次!」
2人がかりでも、倒すヒョク。
「これではおもしろいくない。お前たちは、毎日訓練しているが、私には、少しも改善したようには見られないぞ! 次! かかってこい!誰もいないのか?」
ピョン先生《イ・ヒョクが好み、最も優れているのは剣だ。もし、お前が一人で、ヒョクを狙うとしたら、ここしかない》
もしかして、ピョン先生は、皇宮で警護員だったのかな?
ヒョクの前に進み出るワンシク。
ニヤリと笑うヒョク。
なんか、突然、劇画調のアニメが入ってきたよ(笑)
実写シン・ソンロクも悪そうないでたちだけど、劇画の中のヒョクも、かなり悪そうだわ(笑)
たかだか2か月ちょっとしか、本格的な武芸の練習してないんだよね、ワンシク。。。
並みいる先輩たちが、あっという間に、ヒョクに倒されたことを思えば、かなり応戦している。
っていうか、ヒョクの剣、折っちゃった。
そのまま、今度は、真剣を手に取るヒョク。
もう一本をワンシクに投げる。
鞘から抜くと、いきなり、襲い掛かるヒョク。
手に汗握る攻防って奴をしばらく続けたあと、ワンシクがヒョクの頭をめがけて、ぎりぎりのところで、剣を交わす。
その隙をつき、ワンシクの剣を払うと、喉元に突き付けるヒョク。
「私の負けです、陛下」
「誰に習った?お前の動きには、覚えがある」
「警護員試験の準備をするために、トレーニングセンターに通い、学びました。ご許可をいただければ、もう一度、手合わせをお願いしたいです、陛下」
チーム長が近づいてくる。
「何をバカなことを。お前ごときが、陛下に手合わせを願いでるとは何事だ。申し訳ありません。陛下。今の配置から、彼を外します」
「私に合う相手を見つけられて、気分がいい。こいつが俺を見る目が気に入った。かなり気も強い。彼こそ、男だ。チョン・ウビンとか言ったな」
「はい、陛下」
立ち上がるワンシク(ウビン)。
「私の個人的なトレーナーとなるよう提案する。どうだ?」
「光栄です。陛下」
頭をさげるワンシク。
その様子を、陰から、じっと見ているマ・ピルジュ。
********
ダイニングの壁にかけられた、ヒョクとソニの婚礼衣装での肖像画をじっと見つめるユラ。
そこへ入ってくるソニ。
「太后媽媽といっしょにおでかけになられたと伺いましたが・・・」
「ええ」
「お買い物ですか?」
「オマ媽媽が、わたしのために、これらをすべて買ってくださったの。陛下が望む服装なので、陛下に愛されるようにと。こんな私のために、これほど最高な義母がどこにいるでしょう?」
「太后媽媽は、皇后媽媽をとても、かわいがっていらっしゃいますね。陛下についても、なにか、おっしゃっておられましたか?」
「ええ、まあ...オマ媽媽は、陛下が私を好きになるようなヒントをいくつか教えてくれました。本当に、なんだか、恥ずかしくて・・・。それで、お願いしたいことがあるんですけど、ミン主席は、ずっと陛下の秘書をされていたので、陛下の好みもよく知っているでしょう。陛下が一番お好きなものは何かしら?陛下が私を好きになってくれるようなもの・・・なにか知っていたら、教えてくれませんか? 私、本当にいい奥さんになりたいんです」
「さぁ、お仕事以外の陛下のことはよく存じ上げないんですけど、多少のことなら、思い当たることもあります。お教えしましょうか?」
絵にかいたような挑発的な笑みを向けるユラ。
素直に、笑顔になるソニ。
なにもしらずに、毒蛇の穴に飛び込む蛙。。。
~ネット記事~
タブレットの記事を見るおばば様。
《オ・ソニ皇后陛下 “アリラン”初公式イベントにて》
《デイリー皇室》
「皇后のパフォーマンスは相当話題になっているな。 さすがだ。彼女のおかげで、私たちの皇室の承認率は急上昇した。」
ヒョクと太后と、後ろにひかえているユラ。
「中国大使でさえ、彼女にかなり感銘を受けたようです。明日、皇后と私は昼食に招待されました」
「おお、そうか」
「ミン主席。陛下と皇后の両者が一緒に出席できるような機会をもっと作りましょう。それから、皇后が単独でも出席する公式行事を予約してください。」
「はい、そのとおりにいたします、媽媽」
表情の固いユラ。
「陛下、あなたは今すぐにでも、皇后を訪れなければなりません。私は、皇后がすでに準備を整えてあなたを待っていると信じていますよ。」
はは、と苦笑するヒョク。
「皇后は、あなたの目に留まるよう、美しく自分を磨いておりますよ。 可愛らしいと思われますでしょう? オマ媽媽?」
「もちろん。私のほうが期待で興奮しているくらいだ」
退席する際、ヒョクの背中にす~っと指を滑らせる大胆なユラ。
見逃さないおばば様。
ユラの合図で、化粧室にやってくるヒョク。
個室に鍵をかけ、自らキスをしかけるユラ。
「陛下。私を罰してください。嫉妬深くしないとお約束しましたのに・・・」
「いや、それがどれほど難しいか理解している。俺も、狂人のように、君に会いたくてたまらない」
「ダメです。太皇太后媽媽と太后媽媽が、陛下を見張っておられます、どんなに辛くても、今夜は、皇后のところで、お休みにならねばなりません。」
溜息をつくヒョク。
「どうか、行ってください。皇后媽媽を長く待たせることはできません。」
個室から先に出るヒョク。
見送り、鏡の前で、化粧を直すユラ。
音もなく、化粧室に姿をあらわしたおばば様。
息を飲むユラ。
「今、私が目撃したことを説明してみよ!」
「媽媽・・・」
「今すぐ、答えよ!お前はずっと私を欺いてきたのか?」
鳳凰のかんざしを髪から抜き取ると、鏡めがけて、つきさすおばば様。
ひょえ~~~~。← 本日の見せ場!
さすが凶器。
た、たしかに、時代劇だと、かんざしは女性の武器だものね。
~ソニの居室~
やたら、黄色いフリージアが飾り立てられてる。。
その様子に、戸惑っているガウン姿のヒョク。
「いらっしゃったんですね、陛下」
「いったい、これはどうしたことだ?皇后」
「陛下がお好きだというフリージアです。とってもいい香りですね」
花瓶のフリージアを整えているソニの姿を見て、前の皇后を思い出してしまう。
「好きじゃないんだ。片づけてくれ」
「え?(小声で) 今は違う花が好きなのかしら?」
今度は、ソニが戸惑う番。
「それでは、この歌はいかがですか。陛下がお好きだという歌です」
CDをかけるソニ。
「陛下と音楽の好みが同じなんて、知りませんでした」
これも、前の皇后とダンスを楽しんだ思い出の曲。
もう、わかります。
ユラのたくらみです。。
「消すんだ!」
「この歌も好きではないんですか?」
「うるさすぎる! 今すぐ、消してくれ」
「わかりました、わかりました」
すぐに消すソニ。
「体調がすぐれないようですね。どうぞ、これを召し上がってください。陛下がお好きだと聞いたので、ジャガイモジョン(チヂミ)を作りました。この花や葉も庭で私が選んだんです」
何から何まで・・・前の皇后を思い出させるものばかり。
「すぐに片づけろ!」
みずから、ジョンや飲み物を乗せた夜食の膳をひっくりかえすヒョク。
「どうしたんですか?陛下」
「いいから、片づけろ!!」
フリージアの花瓶も床に叩きつけて、割るヒョク。
ショックで口もきけないソニ。
「一体、どういうつもりだ? 誰の真似をしようとしているんだ?」
部屋から出ていくヒョク。
「陛下・・・」
追いかけるソニ
「陛下、どうされたんですか?ちょっと待ってください。私の話を聞いてください」
すがるソニの腕を振り払うヒョク。
悲鳴をあげて、廊下に倒れるソニ。
足を痛めたソニが、必死に追いかけようとする。
「陛下・・・」
立ち上がろうとしても、すぐにしゃがんでしまう。
そこへ、静かに駆け寄るワンシク。
ソニを後ろから支える。
「大丈夫ですか? 媽媽」
またもや、都合の悪い場面を、ワンシクに見られ、顔をそむけるソニ。
自分のジャケットを脱ぎ、ソニに羽織らせるワンシク。
情けなさと、混乱と、この人に頼ってはだめだという自制と、複雑な思いを抱え、それでもプライド高く、きつくワンシクを見据えるソニ。
このソニの表情、好き!
そんなソニから、目をそらさないワンシク。