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■第17話(1)

 

「もうすぐ、剣が現れます。その剣で、あなたは三蔵を刺すようになるでしょう。」

「その剣は決して破壊することはできない。お前の義務のために、三蔵は犠牲になり、死ぬことになる。
斉天大聖、お前は、その剣で、それを実行するのだ!」

「俺が三蔵を殺すために使用しなければならない剣、これがこの世界に戻ってくることはない」

(前回までの回想シーンはここまで)

一人、屋台で酒を飲みながら、指輪を見つめているソンミ。

「もう閉店ですよ」
店の灯りが落とされると、少し離れた席で一人で飲んでいる男性の隣で、男性の怨霊がソンミのほうを見ているのに気づく。

この幽霊の雰囲気とかって、『主君の太陽』の幽霊とかの雰囲気に似てる。

「私だって今や、あなたのような霊に対応できる力を持ってるのよ」
酒をかけると、消滅する霊。

少し酒がかかってしまった男性客に謝るソンミ。
多少、不愉快そうな顔で出ていく男性。

「こんな程度じゃ、世界を救うには十分とは思えないわ」
溜息をつくソンミ。


~ルシファー会長室~


ス・ボリ師「斉天大聖は、天界からの剣を受け取った」
牛「犠牲として、三蔵を殺すための剣なんだろう?あいつは、剣を使うよりも死を選ぶかもしれんぞ」
師「緊箍児(きんこじ)は、期待以上に働いたようだ。はじめに、雑貨屋の主人はこれがそこまで強力なものだとは言わなかった」
牛「雑貨屋の主人が、私に緊箍児を勧めた。それ以来、私は悪用されてきた。チン・ソンミは、私が五行山に送ったから、三蔵になったわけではなかった。彼女の運命は、生まれたときから決まっていた。これについて、見事に嘘をついたな。」
それを知ってから、魔王は魔王なりにソンミに責任の一端を感じ続けてきたんだもんね。
師「ははは、それについては、感謝しているよ、お前は、神仙になるため、多くのポイントを手にした。」


牛「今になってみれば、私は、それに対して、そこまで関心はない。あんたのために働いたのは、エネルギーの無駄遣いだったようだ。元の自分に戻ろうと思う。ごきげんよう」
もの言いは静かだけど、魔王の激怒ぶりを感じるマ秘書。
ス・ボリ師にも、なにか事情がありそうで・・・。

~牛猿ハウス~
ひとり、帰宅した魔王。
牛像に、ソンミのコートがかかってる。
「三蔵が来ているのか・・・」

階段に座って待っていたソンミ。
通されてもいないのに、リビングとかで待てないと思ったのかな。

「お待ちしてました。お話ししたいことがあって来ました」
「私の牛像は、コート掛けではない」
ソンミのコートを猿像にかける魔王。
「申し訳ありません。コートをかけるのに、あまりにもちょうどよくて・・・」
「一人で来たのか?」
家の中の気配を見回す魔王。
「孫悟空はいないようだな?」

いいチャンスだと思う魔王。
「はい、今日、私、また、世界の崩壊を見たんです。なにかがおかしいんです」
「さきほどは、空が変に見えたな。君の召喚が近づいているのだろう」
「世界は、悪鬼ではなく、人間によって破壊されるんです。とても、強い悪魔のような人間がそれをするということでしょうか?」
「結局、人間が世界を破壊するということだろう。だから、人間である君が世界を救う必要があるのだ。つまり、人間は自分の手で解決する必要があるということだ。いずれにせよ、君の問題には関わるつもりはない」
「どうして、そんなことをおっしゃるんですか?なにもかも、あなたから始まったことなのに。」
「私は騙されたせいで、ずいぶん、憂慮したのだ」
「たとえそうであっても、どうして手をひくことが出来るんですか?一度、介入したなら、最後まで助けるべきです」
「助けてくれと言われても、私はかなり弱くなりすぎた」
途端に心配になるソンミ。
「まだ、回復されてないのですか?」
「ああ」
息子を探し出すためにも、早く力を復活させたい魔王、また、餌に逆戻りのソンミ。

「なにか、私にお手伝いできることはありますか?」
「一つだけ・・・ないこともない。助けてくれるのかね?」
手袋を外し始める魔王。
「どうやって、お手伝いすれば?」
「三蔵、チャ・ウンが羅刹女に変わったわけを聞いたかな?」
「自分の子供を救うために、人間の子供の魂を集めてきて食べたとか・・・」
「そのとおりだ。彼女は、子供たちの魂を、自分の子供に食べさせた。そして、その子は、私の息子でもあった。妖怪というのは、人間のエナジーを食べて強くなるものなのだ。実際、私が今日消費したエナジービーズよりも、生きている人間からのエナジーを食べるほうがいいのだ。さらに、そのエナジーが非常に特別な人からのものであれば、なお、いいだろう。」


投げ捨てられた手袋を見るソンミ。
その時、また、 予知映像が浮かんでくる。
倒れている誰かの側で座りこみ、号泣している魔王の姿。

「魔王様が泣いてます・・・」
 

「え?」← この時の無防備な言い方、ちょっと好き。


「すごく悲しそうに泣いてる姿が見えました。だれかが死んでしまったみたいです」
いきなり、思いがけないことを言われて、殺気が消えた魔王。

「魔王様」
そこへ、マ秘書が飛び込んできました。
「いいお薬を見つけてきました!!」


今日は、服装も髪型も乱れてない(笑)
「あ、斉天大聖様もいらしたんですね」
マ秘書の視線の先、階段の途中に立っていた悟空。


いつからいたの?!

「おい、犬秘書、別の薬を持ってきたのか?いいものを見つけてきたら、分け合うべきだろうが!」
「今回も、分け合うほどはないんです」
「ああ、ケチな奴だ・・・俺も、子猫秘書でも見つけてくるかな」
「斉天大聖様には、三蔵がいるじゃないですか。彼女の側にいれば、どんな薬を飲むより、効くはずですよ。魔王様、お薬の準備をいたします」
すごいタイミングで、ぶちこんでくるマ秘書、ますます、好き!

ソンミの肩を自分に引き寄せる悟空。
猿「魔王が泣くってどういうことだ?」
ソンミ「詳しい状況はわからないんだけど、魔王様がとても悲しそうに泣いているのを見たの」
牛「三蔵には、予知能力がついたようだな」
ソンミ「ええ、この間から、未来の短い断片が見えるようになりました。魔王様にとって、とても大事な方を失うことになりそうな気がします」
牛「忠告を受けて、気を付けるとしよう」
猿「そうだな、魔王。悲しませるようなことを起きるべきじゃない」
牛「ス・ボリ師に聞いたぞ。自分の心配をしろよ。三蔵も日増しにゆっくりと強くなっているようだ。私は自分の薬を飲むべきだな」
変な緊張が走る3人。
手袋を拾い上げる魔王。

~悟空の部屋~
今日は、悟空が天窓のプラネタリウム席に座ってる。


下から、ソンミが追及モード。
「ス・ボリ祖師様とあなたの間で、何があったの?」
「何もないよ」
「言い争ったの?本当に喧嘩したの?」
「俺を怒らせたから、神仙たちの前で、かんしゃくを起こしただけだ。俺は出世できそうもない。別にいいだろう?」
「いいわけないでしょ。あなたは、一人で行かず、私を連れていくべきでしょう?私にだって、言いたい不満がいっぱいあるのよ。今や、私だって怒ったら、物を壊したり、飛ばしたりできるようになったんだから。ああ、私もかんしゃくをおこしてやりたかった」


「そうか、それなら今度は一緒に行こう。かんしゃくを起こすときは、すばやくやれよ。まず見えたものを壊すんだ」
「そうね。ウリオゴン(私の悟空)を惑わせるようなことをいう奴は全部壊しちゃうだから、容赦なんかしないわ」
「頼もしいな」
「私にも、これがあるでしょ、名前を呼んでみて」
指輪を見せるソンミ。


「チン・ソンミ」
「あーあ・・・」溜息をつくソンミ。
「でも、あなたみたいに、ジャジャ~ンって現れることは まだ(!)できないわ」
いつかできるようになるつもりでいるんだ(笑)
「やってみたいか?」
「うん、もし出来たら、すっごく気分いいでしょうね」
見上げると、悟空の姿はなく、星空がぐるぐる回りはじめ・・・、耳元で、「チン・ソンミ」と声が聞こえる。


見回すと自分の部屋。。。
「おい!俺が名前を呼んだら、お前はすぐにここに来た」
「あなたがやったんじゃない。でも、こういうのもいいわね。必要なときは、いつでも呼んでね」
「本当か? いつでも呼んでいいのか?どこにいても、何をしていても、大丈夫か?」
ベッドをす~っと撫でる悟空。


「いえ・・・その、私を呼ぶときは、まず電話するか、メールで連絡して」
くすっと笑う悟空。
「お前を運ぶのは、すっごく疲れるよ。怖がらず俺をよべ。いいか、俺の名前を呼ぶのを怖がるな」
「孫悟空。本当に、緊箍児(きんこじ)をはずさなくても平気なの?外してあげるって約束したでしょ。もし、それが無くなったら、今のあなたの気持ちも消せるのよ。それから、あなたは、私のせいで危険な目にあう必要もなくなるのよ。」

緊箍児を見る悟空。
「本当に消えると思うか?全部?最初は、俺もお前と同じように思ってた。でも、おかしくなったのかな。どんどん、お前のことが好きになって、こうして、お前を見ている瞬間も、お前がどんどん可愛く見えてる。それでも、お前は、このすべてがあっという間に消えてしまうと思うか?そんなこと信じられるか?」


「前は、そう思うと悲しかったけど、今は、良かったと思ってるの。あなたの気持ちが心地よく(離れて)いけるってことだもの。」


この2人の感情の行ったり来たりが、ちょっとわかりにくいときがあります。せっかく寄り添っても、また、同じことを蒸し返しているようで・・・でも、それも、今のところ、ふたりの感情よりも、運命のほうが強固で、優先度が高いから仕方ないのかもしれないですが。
 

「そうだな、俺を呼んでも来ない時は、俺の感情が消えたせいだ。」

ぐっと、いろいろなことを押さえ込むソンミ。

「しばらくの間、忙しくなる。俺が何をしようと、驚くなよ。じゃ、行くよ」
悟空が消えてしまってから、ため息をつくソンミ。



~牛猿ハウス~
「アサニョは、いつ、戻ってくると思うか?」
「嘘をついた危険から逃れるために、戻ってこないのではないでしょうか?」
「私は、来ると思っている。彼女はどんな小さな手掛かりも必要だ」
溜息をつくマ秘書。
「薬の準備をいたします。どうぞ、お休みください」
「いや、薬はいらない。少し、酒が欲しい」
マ秘書の、苦悩とため息は続きます。


~モルグ~
死体を確認しているカン・デソンと秘書。


「身寄りのない身元不明の死体がこんなにあるとはな」
「彼は、家から、ジョギング中に死亡し、冷凍保存されているようです。我々のほうで、家族を探しています。」
「彼の家族は、彼の身元不明の死体から探すべきではないよな」
「はい、そのようにいたします」
「これは、傷もなく、綺麗だな。これにしよう」
死体なんかで、なにする気~~かと思ったら、もう屋敷に持ち帰られて、石棺の上に寝かせられてた。
 

「ドラゴンを召喚するための生贄なのか?」
「これは、そう簡単なことではないの。今から、自分の息子に心から会いたいだれかのために、息子を作るのだから。人間の魂でこれを育てるの。」
「魂?」

 

「なにか手伝うことは?」

「なにも必要ないわ。ここで保管するだけ。」

今までに、2人に絡んで、命を落とした者たちの霊もここにいる。

「死んだ人間たちの魂もここにいると言ってるのか」

「なぜ?怖いですか?あなたが殺した人間もいますよ。」

「そのとおりだ。君のことも、私が殺した。それが君が私のところに来た理由だ。あ、あの女性、三蔵だったか?彼女も殺したほうがいいか?彼女も私のところにくるだろうか?君が言ったんじゃないか、私がもっとも必要とするのは、その女性だって・・。」

 

~ソンミのオフィス~
『韓国財団』を検索するソンミ。
「カン・デソン・・・」
あの日、放送局で、すれ違った男だと気づく。

彼に会ったとき、なにか変だった。
プロフィールを確認するソンミ。
韓国大学 カン・デソン教授

~牛猿ハウス~
朝食をとる2人。


「天界の計画では、三蔵は悪鬼を捕まえる犠牲で、お前はそれを退治するのに必要だったってことだ。その瞬間、緊箍児(きんこじ)は消滅し、お前は科せられた仕事をすることができる」
「消滅しなかったらどうなる?」
「緊箍児が?しかし、消滅すると決められているんだろう?」
「いや、俺が言ってるのは俺の気持ちの話だ。もし、緊箍児が消滅しても、ここにある感情がそのままだったら?俺の感情が消えるとは確信できない」
「私は、もとの孫悟空に戻るだろうと確信しているぞ。もし、私を信じられないなら、手伝ってやろうか?お前の腕から緊箍児を引き抜いてほしくないか?」
思わず笑いだす孫悟空。
「魔王にできるはずがない。その前にたぶん、死ぬぞ。お前は弱くなったからな」
魔王がソンミをねらったことに対する牽制をする悟空。

「おい、沙悟浄、このパン、まだよく焼けてないな。もうちょっとよく焼いたのを1枚持ってきてくれ。お前はどうする?魔王」
「私のはちょうどいい」
マ秘書が、二人の会話を心配そうに聞いている。
「私の能力は、以前のようではない。フルにエネルギーを充填する方法を見つけなければならないということだよな?」
「どうやって? 三蔵を喰うようにか?」
「うむ、それは確かに名案だ。そのような名案があっても、その高価な緊箍児(きんこじ)を嵌めたのが私であっても、自分のための最良の薬(三蔵)を服用することはできないのか、ん?」
嫌味の応酬に嗤う悟空。
「マ秘書、斉天大聖のカップが空のようだ。お代わりを入れてやりなさい」
「はい」
「魔王が、こいつを手に入れたんだろう?ん?」
「ああ、そうだ。私も同様に脅かされていた。最初から、緊箍児を手に入れようとしたわけではない。雑貨屋の主人に勧められて、利用された。そして、お前は罰を受けた。」
言い終えると、席を立つ魔王。

コーヒーを入れに来たマ秘書に、
「魔王に注意してやれ。もし、魔王が三蔵に手をかけたら、俺は激怒するだろうから。」


「魔王様は、ますます、自分が騙されていたと
イライラされています。アサニョの言葉を信じたいようです。」


「今からでも、アサニョを殺してくるか」
「そんなことをしても、斉天大聖さまがなにかの目的があって隠したいことがあるからだと、疑われるだけです。ス・ボリ師が、魔王様の息子について、明確に本当のことをおっしゃるべきです」
マ秘書が、魔王のことを、悟空に相談する日が来るなんて・・・。
何か考えている悟空。

~バー~
ス・ボリ師と会う悟空。
「あの剣をどうした?あの剣無しでは、お前の任務は完墜できんぞ」
「そんなことはどうでもいい!それより、魔王に、息子について話してやれ!」
「もう、羅刹女の罰は終了したのに、なにを話すことがある?」
「だから、何か隠してることがあるなら、言ってやれよ。羅刹女の罰が終わった今、魔王は(やる気になれば)何でも出来るんだぞ!」
「魔王は、なにかするつもりなのか?」
「魔王は俺みたいに、紳士的じゃないぞ」
「お前のどこが、紳士的だ?」
「三蔵は、俺を逃がした罰で三蔵になったわけじゃないそうだな。なぜ、おれを騙した?」
「それは、お前が、お前たちが出会った時に逃げ出したせいだろう。せっかく再会しても、お前はあの子を喰おうとしてばかりだった。だから、我々は、お前に責任の一端を植え付けようとしたのだ」
「ああ、そうだったのか。つまり、ぜーんぶ、俺が悪い奴だったせいだよな」
殊勝な顔をして見せる悟空。
「ほらな!俺はこうして、理解しようとするだろう?だが、今の魔王は違うぞ。今すぐにでも、狂うかも知れない。だから、正直に話してやれ」

 

★第17話(2)に続く★