ページターナーは3部作です。第1部はこちらからどうぞ。
■第2部 真の友情を手にした者よ
地下道に放置されたピアノを見ているチャシク。
「アジョシ(おじさん)、これ、おじさんのピアノ?」
首を振る隣の露天商。
「じゃ、弾いてもいいのかな?」
音は、かろうじて鳴るようですが・・・。
「完璧だ」
嬉しそうに微笑むチャシク。
「いいから、オンマ。わたし、一人でやるから」
恐る恐る洗面台で、歯磨きをはじめるユスル。
ジンモクは、ピアニストだけじゃなく、教誨師にでもなりたいのかしらっていうくらい、部屋には、キリスト様が一杯です。
チャシクの部屋も、見るからに スポーツ少年の部屋だったのに、今は、ピアニストである“ヒョン・ミョンセ”のポスターが貼ってあります。
あ、指を鍛えるバリグリップ、そのまま、チャシクが持ち続けてたんですね。
「ご飯は?」
「忙しいから、朝食はいらないよ」
朝っぱらから、さっさと出かけていくチャシク。
「なによ。学校もやめたくせに。」
ネットで調べてたのは、偶然にも、ユスルたちが通っている芸術高等学校。
バス停で、今日からユスルが登校してくると噂している生徒たち。
「でも、なんで、視覚障害の支援学校に行かないのかな?」
「きっと社会に出たときのために、ハンディを克服したいのよ。できるだけ応援したいわ。」
「だったら、ピアノも続けるべきだろう」
ジンモクが口をはさむ。
「辛いんだろう。ピアノが好きだったから。」
「本当はピアノが嫌いだったりして・・。」
「馬鹿言うなよ。」
「うまくても好きとは限らないでしょ。」
屋上での悲痛なユスルの言葉を思い出すジンモク。
通学バスに乗らずに、駆け出していく。
自分の父親にファンレターを出すチャシク(笑)
杖をたよりに、自宅から出てきたユスル。
「ユスラ~、待ってて。携帯を忘れたわ」
「オンマ、一人で行くって言ったでしょ?」
「何言ってるの? 怪我でもしたらどうするの? オンマのことが憎くて、さからってるの?そうなの?」
オンマを憎みたくないからだ、と告げるユスル。
そんな二人の言い争いを見ているジンモク。
クラクションを鳴らして、スピードをあげて通り過ぎる車を怖がるユスル。つい、手を出してしまうジンモク。
「オンマ、何度言えばわかるの。絶対ついてこないでよ」
その様子をみていた通りすがりのおじいさんが不思議そうに、ジンモクに訊ねる。
「なぜ、あの子は、君のことを オンマって呼ぶんだね?」
「さあ?」
にっこりわらうジンモク。
さきまわりして、バスカードを代わりにタッチしてあげたり、ガラス戸をあけてあげたり、スリッパをそろえてあげたり、大活躍。
介助者をつのっても、皆、成績が下がるのをおそれて、言いだせない。
案の定、昼食時、他の生徒とぶつかり、昼食を床にぶちまけてしまうユスル。
ユスルの手をとり、立たせるジンモク。
ちょうどその頃、編入手続で学校を訪れたチャシク。しかし、欠員者がでないので、編入は無理だと断られてしまう。
「それに、たとえ欠員が出ても、君には無理だな。この芸術高校は、意気込みだけでは入れない。」
意気込みだけではなく、才能もあると宣うチャシク。
職員室で、担任から、母親に手助けを頼むよう説得されているユスル。
介助者の申し出もなく、学期途中では補助教員も入れられないと説明する。
「お母様に、お願いしましょう」
「僕がやります。奉仕活動として認められるんですよね?」
あくまでも、ユスルに対しては、偽悪的なジンモク。
意地になって、断り続けるユスル。
「先生、一人で大丈夫です」
「無理よ。さっきも食堂で転んだでしょ?」
介助や手伝うという言葉を避けるジンモク。こういう人の気持ちをちゃんと考えられる男の子なのです。
「俺が君を・・・守るから」
そこへ、離れたところから、
「なら、俺が手伝いますよ」
チャシクの大声が(笑)
「おい、部外者が勝手なことをするな」
別の先生がとめに入ります。
「彼女の手伝いをするだけなのに、なにが悪いんですか?」
「なんで、あんたが?」
「どうしても 授業に参加したいんだ。君には、誰にも指一本触らせない。一緒に通学しよう」
なんだか、話が変な方向に(笑)
ずっと黙っていたジンモクが、ようやく、チャシクに「生徒じゃないやつは出ていけ」と、チャシクに掴み掛ります。
「学生じゃない母親はよくて、なんで、俺がダメなんですか?」
結局、介助者として チャシクを選んだユスル。
授業の読み上げ補助にしても、全然、基礎学力が伴わない筋肉○○のチャシク。
韓国の学校の洗面所は、男女別じゃないの?
手洗いスペースのみ、共有なの?
ユスルを問い詰めるジンモク。
「なんで、あいつなんだよ」
「なにが?」
「いや、別に俺がやりたいって言ってるわけじゃない。あんな奴を選ぶなんて信じられない」
無茶苦茶、チャシクを意識してるジンモク。
「好きで選んだとでも?あんたがきらいだからとは思わないの?」
「俺を憎むのに疲れたんだろ? 俺もだ。」
「私が失明したから、余裕ができたの?今更、同情なんてされたくない。」
翌朝、起きてきたチャシクオンマは、家じゅうに貼られた付箋を見て驚愕!
「・・・なんなの?これ」
日曜日にも関わらず、図書館で勉強する。
「なによ、ジュリアーノにでも入るつもり?」
聴いてるクラスメートも関心するほど、授業の読み上げも、みるみるうちに上達するチャシク。
帰り道。1か月になろうとしているのに、冷たい態度を崩さないユスル。
がっかりしながらも、前向きなチャシク。
犬にほえられ、飼い主から酷い目に遭うユスル。はじめて、チャシクの名前を呼ぶユスルは、ちゃんと、チャシクに対して、信頼をもちはじめていました。
うわ~~~。自転車二人乗りだよ。
夕日の中で、風を手で感じるユスル。
絵にかいたような青春がここに~~。
2人で帰ってきたところを、ユスルオンマに見つかってしまう。チャシクをチンピラ呼ばわりするオンマに対して、毅然とチャシクのかたをもつユスル。
はじめて自転車に乗ったの。とても気持ちがよかった。
目が見えるときに、乗っておけばよかった。
遊園地も水族館も映画館も、すべて、目が見えるときに行っておけばよかった。
でも、私の人生だから、人のせいにしたくない。
(その代わり)人には体験できないものを手に入れたと反論するオンマ。
コンクールで優勝しても、嬉しかったのは、オンマでしょ?
一度も笑ってなかった。考え込むオンマ。
一応、服装に気を使って、ユスルを迎えにきたチャシクだが、ユスルオンマは容赦しない。
「下っ端の暴力団員ってとこかしら?」
「ガラが悪くてすみません。問題点を言ってくだされば、次は完璧な服装で来ます。」
「馬鹿にしてるの? それとも、本気で怒らせたいの?」
「オンマ!」
「違います。」
「じゃ、どういうつもりなの?」
「ユスルが俺を選択してくれたことを後悔させないための強い意志だと思ってください。
気に入ってもらえるまで、一生懸命努力します!」
自転車で二人乗り。もう慣れた感じです。
「なにかほしいものはない? かあさんにひどいことを言われたでしょ。代わりに謝罪するわ。 迷惑をかけたままなのは嫌なの」
チャシクに謝罪するユスル。
「欲しいものはないけど、一つ頼みがある」
ここだよ、と地下道のピアノに連れてくるチャシク。
「ピアノを弾けって?」
「うまいんだろう? (俺に)迷惑かけたままは、嫌なんだろ?」
「わかったわよ、ピアノなんてどこにあるのよ?」
ピアノの前に座らせるチャシク。
<私に 弾けるかしら?>
不安になるユスル。
少し弾いてみる。
「あんたに似てる。下品などんくさい音ね。」
それでも、一曲弾き始めるユスル。
一体、調律はどうなってんの?(笑)
「すげぇ~」
はじめて、ユスルのピアノの調べを聴いたチャシク。
「ここでピアノを弾いたのは秘密よ。」
「墓場まで持ってくよ。」
~チャシクの自宅前~
「あんた、その 墓場まで持ってく秘密を母さんには話してるじゃない?」
呆れるチャシクオンマ。
「母さんに秘密を持ちたくないよ」
「息子が親に秘密をもつのは、大人になった証拠でしょ。」
「幼稚で悪かったな。」
「その子、ピアノ上手だった?」
「天才だよ。父さんの次にうまい。なんていったらいいか。美しい虹のような音だった。その美しさで、人を天使に変えるんだ。世の中を天国に変える虹だ。」
チャシク、詩人じゃん(笑)
体育の時間を前に、着替えを盗撮されかけるユスル。
ユスルには黙って、その同級生を殴りつけるジンモク。
ジンモクの手の心配よりも、知り合いの結婚式のピアノの代役を心配する父親。
文句をいうジンモクだが、「負け犬の遠吠え」扱いされてしまう。
すっかり ファッションも変わってきたチャシク。
3か月後に開かれる「ピアノ二重奏」のコンクールのポスターをみて、「夢と一緒だ」と呟く。
出場するにはどうすればいいのかを周囲にたずねる。
「来世だろうな」
ジンモクに冷たくあしらわれる。
頭に来て、「ヒョン・ミョンセ」の息子だと言ってしまう。
誰も信じない。母親と一緒の写真を見せても、彼と写真を撮るファンなんで、ごまんといる。それが証拠なら、韓国中に彼の子供がいることになるわ。
「予選を通過したら、信じてやる」
ユスルに、出場を持ちかけるが、けんもほろろに断られる。
「親子だと証明したいなら、ピアノなんか弾かずに、DNA検査すればいいじゃない」
ごもっとも。。。
「わたしが今日から必死に3か月練習して、棒高跳びの選手になれる?」
「無理だ」
「でしょ? みんな10数年必死で練習してきてる人たちばかりよ。3か月で挑戦するなんて失礼だと思わない?」
「君のいうとおりだ。わるかったよ。」
夢の内容は、母さんには秘密だ。
虹のように美しい音楽を奏でる、ピアノ二重奏。
とても美しいユスルと、ちんぴらっぽくない自分が、一緒にピアノを弾く。
夢の中のユスルは目が見えていて、俺をみて、笑ってくれる。
死ぬほどかわいいんだ。
その夢をみてから、夢の向こう側に行ってみたくなった。
ユスルを地下道のピアノに連れてくるチャシク。
前に弾いてくれた曲、覚えてるか?もし、あの曲を俺が弾けたら、少しは、可能性があるかな?
弾けるわけないでしょ?
自分の手の上に、ユスルの手を載せ、弾き始めるチャシク。
夢で終わらせたくなくて、家で「紙の鍵盤」で弾くところからはじめたチャシク。
来る日も来る日もピアノに向かい続ける日々。
露天商のおじさんが、耳栓してたのに、いつのまにか、楽譜が読めるようになったのね。
指が血だらけになっているチャシク。
ピアノのプロにしてみれば、たどたどしい演奏でも、チャシク渾身の演奏は、ユスルを感動させる。弾き終わったチャシク。
これでもダメかな?
いいえ できるかも。
(コンクールに)一緒に出よう。
夢への一歩を踏み出した。