■ 第13話 王の覚悟

 

クィを倒す計画は失敗に終わり、婚姻の宴は、血の海と化す。

 

イノを救い出したソンヨルは、ヤンソンが秘策だという話を聞いて驚く。

あの子は、ソ・ジョンドの娘、ソ・ジンだ。

 

一方、ユンもまた、ヤンソンがクィを殺す秘策だと、ヒョンジェから聞かされ、俄かには信じられない。

秘策がなにかはわからぬが、おそらく クィを殺せる能力があるのだろう。

あのかよわい子がどうやって、クィに立ち向かえるというのです・・・。

彼女が、ソ・ジョンドの娘、ソ・ジンだからだ。

 

ホジンから、ソンヨルが昨晩の戦いで命をおとしたかもしれないと聞き、いてもたってもいられないヤンソル。

今までのソンヨルの言葉を思い出す。

「自分の目で確かめるまでは、何も信じません」

ソンヨルの安否を確かめようと宮中に忍び込もうと考えるヤンソン。

こういうところは、一切変わってません。

 

瀕死のイノを連れて、なんとか邸まで戻ってくるソンヨル。

自分の血で、治療する。

ヤンソンと行き違いになったため、再度 捜しにいくことに。

「イノの面倒をみろ。意識が戻っても、外出させるな。もし、ヤンソンが戻っても顔を合わさせてはならない。わかったか」

ホジンに命じて、出ていくソンヨル。

 

宮殿に向かったヤンソンは、警備が厳重で、当然、入れない。

淫乱書生として亡くなったチョ・センに同情した高利貸しコンビの助けをかりて、宮女の姿になり、宮殿に入り込めたヤンソン。

 

王が 日が暮れると同時に、クィに命を差し出すことになる。

ユンは、時間が残されていない中、王の命を守るための、遺された唯一の手段であるヤンソンを見つけ出し、クィの生贄にする決意をする。

 

~地下宮殿~

クィに連れてこられたスヒャン。幼い頃、ソンヨルに助けられたときの夢をみていたが、目を覚ます。

「気が付いたか?」

「ここは?」

「王の棲家だ。真の王のな。私が何者かということは、昨日 みたであろう?人の生き血をすすっていれば、何百年も生きていられる。キム・ソンヨルもそうだ。なのに、なぜ、か弱い人間どもの味方をして、わざわざ苦労するのか、理解に苦しむ。
そなたのような美しい女人でも、私にとっては、ただの餌食なのだ。だが、風味はいささか 他の者とは違うようだな。」

「ならば、お腹が満たされているときではないほうが 格別なのでは?」

普通の女性は、こんなことは言えないっす。

領相がやってくるも、スヒャンを見て驚く。

「いつから この女を?」

「なぜひとりで来た?」

「申し訳ありません。キム・ソンヨルが突然あらわれたので・・・」

「無能な奴。ところで、王はどうしている?死ぬのをこわがっているだろう。」

「夜になれば、また、宮殿は血の海でしょう。うちのヘリョンをどうするおつもりで?」

「さて、どうしようか。まず 会わないことにはな。」

 

~宮中~

ヘリョンに会う王。

「お前の父はどこにおるのだ。」

「居場所を存じ上げません。たとえ、実の父親といえども、王様と世孫様を殺そうとした罪を逃れることはできません。」

「ならば、どうするのがよいのだ。」

「すぐにでも 捕まえるのが得策かと。」

「世孫妃としては、その答えが正しいだろうが、私は まだ、そこまでそなたを信じてはおらぬ。」

 

左相と話をする王。

「(世孫がソ・ジンを連れてくることを)ギリギリまで、お待ちしましょう。」

「しかし、あいつに、友を差し出す真似ができるだろうか。クィは、今回のことを咎め、世孫の命も手に掛けるであろう。世孫は何もしらなかったというのだ。私一人が罪をかぶる。あとのこと、世孫のこと、頼んだぞ。」

左相に たくす王。

 

~街道~

ソンヨルが王の前にたちはだかる。

「生きていたのか」

「陛下はご無事ですか?」

「ソ・ジンは今、どこに?」

「国の一大事に、なぜ あの子をお探しになられるのですか」

「母系の秘密をしっているな。ソ・ジンが クィの最後の子孫だ。」

「まさか、いま、ヤンソンを探されている理由は・・・。」

「クィに差し出さねば、王の命がない。」

「私の仕えた貞顕世子は、そんなことを秘策として 残すような人ではありません。」

「自分の命を差し出すことで、クィを殺せるのであれば、いくらでもそうする。このような運命をむける神を恨むばかりだ。だが、仕方がないのだ。あの子への想いか、この国の民か 選択をしなければならない。日没までには、必ずあの子を連れて行かねばならぬ。」

「私も 居場所を知らないのです。私を探しに邸を抜け出したようです。」

「見つけ次第、必ず連れてくるのだ。」

 

ソンヨルの屋敷を目指すユン。

「ソンヨルはウソをついている可能性もある。邸を探すぞ」

ユンは、ソンヨルの屋敷を捜索する。

「ここに、ヤンソンを隠しているのか?」

「ヤンソンなら、朝から出かけてます」

「どうやら、ソンヨルはウソは言ってなかったようですね」

「町中をくまなく探すのだ」

 

看病を受けていたイノが目をさます。

「旦那様が 瀕死のあなたをここまで運んだんです」

「ソ・ジンはどこだ?」

「朝から、旦那様を探しに外出しましたよ。なんで、みんなして、ヤンソンの行方ばかり聞くんだ?」

「ほかに誰が?」

「いまも、世孫様が直々に こちらに来られて・・・」

 

~宮中~

宮女の姿になり、東宮殿に忍び込もうとするヤンソン。とがめられているところをヘリョンが救う。

「ついてまいれ」

二人だけで話をする。

「何をしにきた」

「世孫様にお話があって」

「畏れ多くも、世孫様のお名前を軽々しく・・・。会いたいと思って、会えるお方かどうかもわからぬのか。」

「いえ、学士様が無事かどうかを確かめたかったのです。」

「そなたがそれをなぜ、知りたがるのだ。自分の命さえ、守れない分際で。」

「私が愛している方だからです。」

「愛?あの方には、他に思っている女人がいたようだったが?私に駆け寄ってきたときのことをお前もみていたであろう。」

「愛していた方がいたのは知っています。でも・・・」

「あの者の正体を知っているのか?」

「どういう意味ですか?」

「あの者は、吸血鬼だ。知らなかったのか?昨晩、婚礼の儀式に現れた。そんなことも知らずに、愛とは。あの者が忘れられずに苦しんだ月日をどう考える?50年?100年を越しているかもしれぬが?」

さすがに、言葉を失うヤンソン。

「キム・ソンヨルの生死は確かめてくるから、ここで待っていなさい。」

ヘリョンから、ソンヨルが吸血鬼だと聞かされ衝撃を受けたヤンソン。

 

ひとりたたずむヤンソンの前に、離れた場所から一瞬で現れるソンヨル。

「そうだ、見た通り、私は人ではない。」

それには答えず、ソンヨルを抱きしめるヤンソン

「生きていらっしゃったのですね。」

「今は、私が、何者なのかわかっただろう?」

「・・・夜士様ではないんですか?」

「私が怖くないのか?」

「でも、私が怖いのは、そうではなく、学士様が長い間、一人の人を思ってこられた時間よりも、私のことを忘れてしまうか、ということ。一度、死んだような私を救ってくださり、生きる理由をくださった。生きている間は、ずっとお側にいます。いつか私が死んだら、その方と同じだけ、私のことを覚えていてくださるのなら、それ以上 望むことはありません。」

 

~地下宮殿~

クィの前にたち、スヒャンの存在に一瞬たじろぐヘリョン。

「ようやく来たか」。

「人の目があり、来られませんでした。」

「昨晩は おもしろかったな。・・・その服も似合うな。」

中殿となった姿のヘリョンをめでるクィ。

「落ちぶれた貴族の娘を 世孫嬪にまでしてやったのに、ずいぶんな仕打ちをしてくれたものだ」

「私も、父が引き入れた兵のために、危険な目に会いました。本当に知らなかったのです。今も、反逆者の娘の私には、誰も信頼を寄せてくれません。その代わり、淫乱書生の娘をとらえました。」

「そうか、よくやった。今夜は退屈せずにすみそうだな。」

 

ヤンソンを救い出すソンヨル。

 

日没を迎えたとき、ヒョンジョはユンに、自分の血で記した遺書を残し、クィの元へ。

 

左相がハギョンに うちあける。

「王様が亡くなれば、私も今回の責務をとり、あとを追うつもりだ。おまえは 世孫様をお守りするのだ。お前とお前の父に、詫びてもわびきれない。」

「もっと早く、私と世孫様に おじい様と王様の真意をお話しいただけていれば・・・。お忘れですか?今回も おじい様の言葉には従いません。どうせ、私は、既に、淫乱書生の側近として、重罪人です。若い王には、経験ある側近が必要です。世孫殿下のことをお願いします」

「だめだ、そんなことをしてはならぬ」

「同じ校理であったキム・ソンヨルは、120年もの間、貞顕世子のために辛い戦いをつづけてきたのです。この命を、世孫様にささげるのに、なんの躊躇いがありましょう。」

ノ・ハギョンもユンのために命を差し出す覚悟をする。
 

ヤンソンを連れ、ウムソク谷に急ぐソンヨルが途中で、ホジンにあう。このまま、戻るのは危険と考え、ヤンソンを華陽閣に匿うよう指示をする。

「今夜 宮殿に大きな変化がある。スヒャンもそこにいるのであろう。」

 

「今夜ほど、待ち遠しかったことはない。」

「もう帰らせていただいてもよろしいですか」スヒャンが尋ねると、表の様子を気にするクィ。

「すぐに戻るから、まっていなさい」

地下宮殿を見回し、サドン世子の姿を見たときには、さすがのスヒャンも言葉もない。

 

王様が死に装束で、井戸のたもとにやってくる。

「息子よ。すまない。」

「(サドン世子の幻影)いいえ、お等差様、私のユンを守ってくださり、ありがとうございました。」

「王よ・・・」

後ろから声をかけるクィ。

「お前を殺すためだけに生きてきたというのに。」

「そんなにまでして、死にたいのか」

「日が昇れば、生きられない妖怪の分際で、人間はそれほど弱くない。私を殺して、一度、王になってみるがよい。」

クィに向けた剣で、自分を刺し、井戸に転落する王。

一瞬、驚いたような、このときのクィの表情が、まだ、その時ではないと思っていたような、誰よりも、ヒョンジョの死に対して、そんな呆気なさを感じているように見えました。

 

王の座にえらそうに腰をかけていた領相。ムキームキームキー

そこにあらわれるクィ。席を譲ると クィが玉座に座る。その前に、ひざまずくユン。

「お前の祖父は、最後まで俺と戦うといったが、お前は俺に命乞いをするのか?」

「私は何も知らなかったのです。」

「では、王を助けたのは誰だ?それも知らないのか?」

ノ・ハギョンが連れてこられる。

「王様の命令で、私がやりました。(ユンを睨み付け)そんなにも生き残りたいか?天に恥ずかしいと思わないのか」

わざとユンにむかって、暴言を吐く。

「世孫に対し、そんな口をきくとはな。殺してもいいよな?」

「そうだ 私を殺せ 天に行っても罵ってやる」

 

首にかみつくクィ。

あとでまた、呼ぶから連れて来い、とユンを下がらせる。

倒れているノ・ハギョンをみて、領相が訪ねる。

「死体は火葬にいたしますか」

「いや、おもしろいことを思いついた。」

 

~東宮殿前~

「あの子はどこにいった」

ヘリョンが配下にたずねると、キム・ソンヨルが連れて行ったと答える。

「キム・ソンヨル・・・」

そこへ ユンが呆然とした面持ちで現れる。

「殿下・・・」

「キム・ソンヨルが連れて行ったとは 誰のことだ?」

「ヤンソンとかいう者が、世孫様をたずねて昼間 こちらにきたのですが・・・」

「キム・ソンヨル・・・」

この呆然としたユンの表情、まさか、ヤンソンをクィに差し出さなかったら、この一連の悲劇につながった、とか思ってないよね。ガーン

 

~ソンヨルの屋敷~

ホジンに文句を言うヤンソン。

「このまえは、私をだましたでしょう?学士様が 夜士様だということです。わたし、全部ききましたよ。学士様が吸血鬼だったなんて・・・。私が好きになる他ないじゃない?」

「あなたが考えてる吸血鬼とはちょっと違うんですけど。」

 

~華陽閣~

相変わらず、賑わいをみせる前庭で、一人の妓生が疑問を口にする。

「なんで、妓房に、棺桶なんか持ってきたの?」

「キム・ソンヨルという人から、ここに持って行けと言われたんだが。」

 

~地下宮殿~

スヒャンを前にするクィ。

「お前は、私が怖くないのか」

「もちろん怖いのですが、それ以上に気になります。一番 強い存在で、人間の上に君臨していらっしゃるお方です。その上、永遠の命も手に去れているとか。人間の縛りもなく、月日の縛りからも逃れることができるのなら」

「待て、まさか、おまえ 吸血鬼になりたいのか?」

ふ、と鼻で笑う。

「吸血鬼になるということがどういうことかわかるか?最初に目覚めたときには、意志がない ただ、猛烈に喉が渇き、血をすするのみ。一度、血の愛を覚えたら、もう後戻りはできぬ。」

その言葉どおりの反応を見せるハギョンの姿とリンクして・・・。

~華陽閣~

棺桶に入れられていたのは、ハギョン。

獣のようになったハギョンが 華陽閣で、人の血を吸いまくる。

 

それを目撃するヤンソン。

ヤンソンが誰かもわからないハギョン。ホジンが必死に撃退するが、追いつかれてしまう。

逃げろ! ヤンソンをかばったホジンが跳ね飛ばされる。

後ろをふりむくと、死体だらけ。

ハギョンに襲われそうになった恐怖が、ヤンソンの記憶を呼び起こす。

寸でのところで、ヤンソンから引きはがし、ハギョンとたたかうソンヨル。

「殺さないで・・・」

 

★第14話に続く★

まだ、秘策の本当の使用方法がわからない中、ヤンソンが秘策だということだけが独り歩きしはじめています。

皆がそれぞれに動き始め、とうとう、争いに発展してきました。

王を助けるためとはいえ、ヤンソンの命をあきらめたユン。これで二度目です。立場が違うとはいえ、徹頭徹尾、ヤンソンを守り抜こうとするソンヨルとの違いが、回を追うごとに明らかになります。

 

スヒャンの暗躍が予想以上で、驚きました。ソンヨルのためなら、命も惜しくない、との一念で、クィとも、たった一人で対峙します。相当の精神力です。クィも、おそらく予想外の反応を見せるスヒャンに、かなり興味をもっています。ヘリョンが世孫のもとに行ってしまったことで、結構、ダメージくらってます。寂しがり屋だから(笑)

 

ハギョ~~~ン(泣)

なかなか名前を覚えられなかったけど、もう大丈夫!

ハギョンにとって、ソンヨルは 王となる人間をまもり、その親友として過ごしたという。自分をうつす鑑のような存在だったから、ことあるごとにかばう発言をしていたなぁ、と今になると、わかります。

そのハギョンが、あんな姿になっちゃって・・・。泣けます。あの様子をみると、ソンヨルがどれだけ、強靭な意志の持ち主だったかということが逆に痛ましいです。

 

※昨晩、アップ予定していたものが、一瞬で消えてしまいまして・・・。PCの調子が悪そうなので、変則的なアップになります。。。