2月も最終週に突入しました。昔から二月は逃げ月と言われあっという間に過ぎ去るものですが、今年は特に早いように感じます。3月になれば春の足音も着実に大きくなり、年度末の慌ただしさの中来る新年度への期待も高まります。今年は5月の天皇御即位と新年号への切り替えがあるので、なおさら気分一新の気配を濃く感じます。まだまだ寒くなる日もあるでしょうが、2月の残りと3月を乗り切るべく頑張りましょう。
■ビジネスアナリシス
●ビジネス・アナリシスとビジネス・アーキテクチャ
前回から2つのBAの関係性について考えています。ビジネスアナリシスとビジネスアーキテクチャは、どちらもビジネスに「変革(チェンジ)」をもたらすためのガイドラインです。ではその違いはなんでしょうか?
前者はどのようなチェンジが組織にとって必要なのか考えるところからスタートし、後者はどのようなチェンジを目指すかその方向性の上に、実現のために何が必要かを明らかにして行く作業となると説明しました。もちろんこの解釈は、キットPMの個人的なものですが、実際にはそう簡単に線引きできることでもなさそうで、もう少し研究が必要と考えます。
ただ上記のことを仮定した時、ビジネスアナリシスはビジネスアーキテクチャを包含し、ビジネスアーキテクチャの活動はビジネスアナリシスのアウトプットの一部となります。この部分は重要な考え方です。つまり不達のBAは対立するものではなく、補完しあい共存するものだということです。
さてビジネスの「変革(チェンジ)」はどこから始まるのでしょうか。ひと昔前は顧客の「ニーズ」を満たすという発想で、新しい商品やサービスを考えていましたが、近頃では顧客に「バリュー」を提供するという発想に変わっています。この2つは似ているようで異なるものです。
例えばこの春の国内旅行のパッケージツアーを企画することを考えてみましょう。アンケート調査で「この連休に旅行するとしたら、どこに行きたいですか?」という問いや、「行きたい観光地はどこですか?」「旅行の一番の楽しみは何ですか?」という問いに、それぞれ「京都」「グルメ」「温泉」「世界遺産」などという多数の答えに対して、それらを満足するツアー「京都世界遺産めぐりと絶品京グルメ」という商品を開発するのは「(大多数の)ニーズ」を満たすサービスとなります。
これに対して、「京都で知る日本の仏教文化、国宝仏像めぐりと伝統精進料理を味わう」と題したツアーではどうでしょうか。これはアンケートの回答にあった「仏像」「国宝」「仏教文化」「歴史」などのキーワードを掘り下げ、顧客が求める「価値」を提案していることになります。これが「価値提案(Value Proposition)」です。
この価値を想像し創造するのは、ビジネスアナリシスによるビジネスおよびマーケット分析によると考えます。
その上で実現する「価値」が明確になれば、次はその価値をどのように作り出すのかを考えることになります。この手法を提供するのがビジネスアーキテクチャです。
ビジネスアーキテクチャの実施手順については以前簡単にご紹介しましたがここでもう一度触れておくと、まず目指すべき「価値」が明確になっていて、その価値を作るための「価値創造連鎖(Value Stream)」を作ります。価値は一つとは限らないので、複数の「価値」について、それぞれValue Streamが必要となります。一方「価値創造」を行うために必要な組織の機能「Capavility」を構造化し明らかにします。この2つの抽象化モデルを関係づけて行くと、「価値創造」のために必要な組織の「機能」が明確になり、その機能は「価値創造連鎖(Value Stream)」のどこで働くのかを示すことができます。これは、「価値」をスタートとしたビジネスアナリシスとビジネスアーキテクチャの連携です。
逆にビジネスアーキテクチャが提供する現状の「機能構成図(Capavility Map)」から、ある機能を追加したり、変更、削除することで新しい価値を創造することが出来る場合もあります。この場合、現状を認識するための「ケイパビリティ・マップ」からスタートし、その分析から「価値創造」に連携していくことになります。
このように2つのBAはそれぞれが補完しあい連携することで、ビジネスと組織に「変革(チェンジ)」をもたらすことができるようになります。次回はこれらの結果から構想を実現するための「イニシアチブ」に繋げていくのかを考えていくことにします。