下宿生は僕を入れて三人いました。ふたりは一階の部屋で、僕は二階でした。広い十畳の部屋でしたが、広い窓からすきま風が吹き込んでいました。

 部屋の奥には広い物置がありました。そこには封印された本がびっしり並んでいました。お婆さんは

「高校を卒業したら読んでもいい」

と言っていました。

 教育熱心なお婆さんでしたから、「今は学校の勉強をしろ」ということだったのです。


窓の外を眺めると、女子高生の通学路が見えました。僕の姿が見えると、彼女たちはクスクス笑っていました。

この下宿は「お化け屋敷」と呼ばれていたからです。


僕はお婆さんに気に入られていました。理由はいたって単純、僕が進学校に通っていたからです。

お婆さんのご主人も同じ高校でした。ですから、お婆さんはあからさまにえこひいきをしました。

でもそれは、僕には有りがた迷惑でした。食事の分量が僕だけ大盛だったり、いつも僕と話したがったり。