【前回からのつづき】
暑さに耐え
みぞっちからの重量攻撃に耐え
眠れないまま目を瞑り、時刻は1時半。
起床時間です!!
この時間に出発する人も多く、山小屋の中が一斉にざわざわと活動を始める。
わたしは放置した靴下を見つけてザックに仕舞う。
替えの靴下を履く。
やっぱり灯りはないのでヘッドライトを駆使して荷物を詰め直す。
広間に行って装備を確認。
アンダーシャツ、Tシャツ。
その上に、丸めて小さくなるアウトドア用のダウンジャケットを着た。
いちばん上には3人でアウトレットに行った時に買った、ミレーのアウターを。
ボトムスにはノースフェイスのゴアテックスを追加。
ハットからニット帽に変えて、その上にLEDヘッドライトを装着。
交代でトイレに行って。
朝食のお弁当を受け取り、ザックに詰める。
靴を履き、ゲーターを装着する。
ザックを背負い、準備完了!!
外に出て驚いた。
凄い人・人・人!!!
みんな御来光のために登ってきたんだ。
麓の方には渋滞してる車のライトが見える。
登山道にはみんなのヘッドライトがずらーっと並んで…
すごい。天の川みたい。
ホントに。
くるりと後ろを向いたら、同じように登山客のヘッドライトが山頂までずっと続いてる。
空を見たら…
星が近い!!
(*'0'*)
なんだこれっ!!すごく近く見える!!!
地味に感動…
しかし、感動に浸る間もなく、登山客の列に加わって…
いざ出発!!
目指せ山頂!!目指せ御来光!!!
(*^ー^)ノ
心配だった右の股関節は、山小屋で休んで少し痛みは治まってた。
だけど痛いには変わりない。
右脚をかばいつつ、登っていく。
それにしても凄い数の登山客で、登山道は大渋滞!!
かえってそれが良かったかも。
無理せずにゆっくり登れた。
普通なら1人ずつ通るような幅の登山道に3人くらい横並び。
少し進んでは止まり。また進んで止まり。
9合目ザイルやりたかったけど、こんな大渋滞じゃどうにもならず。笑
とりあえず、9合目の鳥居をパチリ。
小銭がたくさん挟まってた!!

登山道は細く、険しくなっていく。
ところどころ、また手を使って登らなければならない岩場もある。
そうでなくても、大きな石がゴロゴロしててうっかりすると足をくじいてしまいそうな道。
登りにくいところはみぞっちが引っ張り上げてくれた。
ゆっくり、ゆっくり進んでく。
幸い、風はそれほど吹いていない。
それでも止まっている時は寒さを感じる。
周りの登山客からも「寒いね」という声が聞こえる。
後ろを振り返ったら、空が明るくなり始めてた。
雲に近いところが、うっすらオレンジ色。
あああ!!陽が昇っちゃう!!!
みぞっちが言う。
「頑張ろう!!もうちょっと上行こう!!」
周りの登山客は次々と「もうこの辺りで見ようか!」と、座れる場所を見つけていく。
後ろを振り返りながら
「どうする?もうこの辺で見る!?」と聞くと
みぞっちは
「もうちょい!頑張って上行こう!!」と言う。
ラストスパート。
キツい。
右脚の股関節も痛い。痛い痛い痛い。
でも登る。
必死で。
登る。
キツい。
明るくなってくる空。
「もうちょい!」
みぞっちの声。
「よし、あそこ行こう!もうちょっと!!」
とみぞっちが指差した場所は、10合目の鳥居からすこし脇に外れたスペースだった。
脇目もふらずに登った。
時刻は4時40分をすこし過ぎた。
辿り着いて、振り返った。

なんか、呼吸するのを忘れてしまったような気がした。
このドキドキは何なんだろう。
一生懸命登って来たからまだ心臓がドキドキしてるのかな。
でもそれだけじゃなさそう。
誰も、何も言わなかった。
こんなにたくさんいる登山客が、みーんなみんな、同じ方向を向いて
同じものを見てた。
「あ…」



言葉が見つからないね。
しんどい思いをして登って来たこと、ぎゅうぎゅう詰めで横になってたこと(笑)
全部フッ飛んだ。
世界はこんなに美しいのか。
まだまだ知らない美しいもの、たくさんあるんだ。

頑張って来て良かった。
本当に良かった。
もう少し平らな地面の場所に移動して
(だってわたしたち、凄い急斜面にいる!)

ここで朝ごはんを食べることにした。
山小屋「御来光館」がくれたお弁当は、ゴハンの上にシャケと梅干とタクアンがのってた。

ここでみぞっちがお湯を沸かしてコーヒーを淹れてくれて
3人で登頂記念にカンパーイ!!!
ヽ(*・ω・)人(*・ω・*)人(・ω・*)ノ
コーヒー …美味しい!!!
マジで沁みる。マジで。
生きてて良かった、って思うくらい。
しばし余韻に浸っているうちに、すっかり陽は昇って明るくなった。
「よし、ちゃんと上まで行ってこなくちゃね!」
そう、まだここは3776mじゃない。
10合目に辿り着いてから、さらに剣ヶ峰を目指します。


とりあえず、10合目の鳥居と狛犬の前で狛犬ザイル!!
そして「富士山頂浅間大社奥宮」ザイル!!
ここでみんなお守りを買いました。

山頂では缶ジュース400円、ペットボトル500円!


よし、ここから富士山頂をぐるっと回る「お鉢巡り」です。

山頂に着いたとはいえ、お鉢巡りもかなりのアップダウン。

足場も悪くて、足を踏み外しそうになるところも。
前を歩いていた人が足を滑らせて、落石を起こしてしまった。
いくつかの石が斜面を転がり落ちてく。
後ろを歩いてたみぞっちが下に向かって「ラークッ!!!」と叫んだ。
前を歩いてたお兄さんはピィィっと指笛を鳴らした。
(なるほど、クライマー同士の落石の知らせ方があるんだね!)
下の登山道を歩いてた人たちもそれに気付いて
歩くのをやめて石が転がってくるのを注意して見てくれた。
登山って、危険だなぁとしみじみ思った。
ほんのちょっとしたことが命取りになる。
握りこぶし2つ分くらいの石だったけれど、坂を転がり落ちて頭にでも当たったら…
ひとりひとり、気を付けなきゃいけないね。
そして何かがあったら迅速に判断・行動しなきゃいけない。
命にかかわることをしてるんだってこと、もっと自覚しなきゃな。
富士山頂郵便局を発見!!
もちろんハガキを買って、両親宛てに出しました。
「無事です!」とだけ書いて。笑

とんでもない急勾配の坂を登りきったところに、行列が出来てました。
そうか、これが剣ヶ峰へ行くところね。
ここまで来たからには、最高峰3776mまで行かなきゃ駄目っしょ!!
列に並び、進むのをひたすら待った。
あ、ここに気象観測所があるんだね。

しばらく待って、ようやく来ました。

3776m、富士山頂!!!!
ちゃんと横にある三角点も見てきたよ。

ひゃっほーい!!!
ついにやりました!!
ヽ(*・ω・)人(*・ω・*)人(・ω・*)ノ
念願の「富士山頂ザイル」もやりました!!
そして…「富士山頂KARA」もね。笑
いい大人が何やってんだよ(笑)って思うけど
写真撮ってくれる人もみんな凄くノリが良くて「いいね!」とか言ってくれる。
ここにいるみんながみんな、充実感で満ち溢れてる感じ。
奥にある展望台なるものにも。
下は見えないけど、雲の上に浮かんでる感じ。

よく見たら、まあるい虹が出来てた!!
分かるかな?

展望台から下りたあとは、下山道を目指してぐるりとお鉢巡りの続き。
陽が昇ってあったかくなってきたので、中に着てるダウンジャケットと
ボトムスのゴアテックスを脱いでザックに入れた。
ぐるっと1周して、山頂浅間大社のところにもどってきた。
もう少し先に、吉田・須走ルートの下山口がある。
(吉田ルートと須走ルートは途中から合流してるのです)
さあ、ここから下山!!!
最初は良かった。
登りと違って、サクサク足が前に進む。
痛かった右側の股関節にも負担がかからないらしく、痛くない。
「お、これ登りより全然ラクなんじゃない?」
とか言いながら3人で余裕こいて下りてたのですが…
大間違いです。
正直、下山のがツラい。
かなりの急勾配を下っていくので、怖い。

勢いがついてしまったらうまく止まれない。
何度も滑って転びそうになる。
っていうか転ぶ。
すごい砂埃。
登りとは違う部分が痛くなる。
膝。腰。つま先。
これが相当しんどい。
痛くても、自分のペースでなかなか行けないの。
足が勝手に前に出ちゃう感じ。

ほんっとに、脚が痛い。
膝が痛い。
わたしは足の親指の付け根の辺りがすごく痛くなった。
そこに体重がかかるんだろうな。
マメができそうな、それが既に潰れそうなヒリヒリした痛み。
だけど前に進まなきゃならない。
痛い。
痛い。
痛い痛い痛い。
もう、足を前に出す度に痛いと思う始末で
「痛い」と思うことに疲れてくる。
途中で休憩。
また、みぞっちがコーヒーを淹れてくれた。
買ってきてくれたドーナツも。
はぁ… 美味しい。
ほんと魔法みたいに美味しい。

休憩後、また下山するも
またわたしは2人のペースに着いて行けなくて。
ああ…またわたし2人に迷惑かけてる…
みぞっち、早く帰らなきゃだめなのに…
(どうしても抜けられない仕事が夕方から入ってたのです)
頑張らなきゃ。
痛くても、とにかく行かなきゃ。
でも足が言うことを聞いてくれない。
また2人はわたしを待ってくれてる。
みぞっちが、気を紛らわせようと話しかけてくれたり
面白いこと言って笑わそうとしてくれたり
すごく気を遣ってくれてるのが分かった。
だけどわたし、うまく応えられなくて。
うまく笑えなくて。
あーもう、自分最低だ、って思った。
最低。最悪。
なにこの器の小ささ。
自分でいっぱいいっぱいになって、人の優しさにもうまく応えられない。
何やってんだわたしは。
人として最低じゃないか。
「ノリ悪っ!」って言われて
あんまりにも情けなくて泣きたくなったことは秘密。
でも2人に何て言ったらいいか分からなくて。
悔しくて下唇を噛んでみたけれど
ごめん、以外の言葉は見つからなかった。
本当にごめん。
空回りしながらも、頑張るしかなかった。
あー、情けな。
そして、多大なる迷惑をかけながらも
お昼の12時半、なんとか富士スバルライン5合目まで下山完了!!
足が死にそうだ…
とりあえず座って休憩。
しばらく休んで、わたしとエミコはお土産を買いに売店へ。
職場で「富士山登ります!」って大騒ぎしてきたから(笑)
富士山の形をした20個入りのクッキーを職場のみなさんにひとつずつ配るため、2箱。
あとは家族や友達にも。
適当に買い物を済ませて、帰路につきます。
時刻は午後1時半。
はい!わたし、運転します!!!
歩くことだけでも迷惑かけてんだから、せめて運転くらいは。
それに2人とも疲れてるところに
自分のじゃない車を運転するのは気を遣うだろうしね。
ということで、いざ地元へ向けて出発!!!
行きにあった「メロディーロード」、帰り道は「富士山」の後半部分だったよ。
♪
かーみなーりさーまーをー しーたにーきーくー
ふーじーはー にーっぽーんー いーちーのーやまー
♪
河口湖の橋を渡って、国道137号線を行き、また一宮御坂ICから中央道へ。
あとは、ひたすら走る。
途中、助手席と後部座席のお二人様は寝てたけど、
何度かフリスク食べつつもわたし頑張りました。笑
下山の途中でドーナツやら何やら食べたので
お昼ゴハンも食べずにいたのだけれど、途中の諏訪湖SAで休憩して何か食べることに。
何食べる、って…わたしたちの旅、シメはだいたいラーメンです。笑
(そもそも「遠方の美味しいラーメン食べに行こう!」っていう名目で、わたしたちの日帰り旅行は始まってるらしいんだけど…笑)
フードコートで3人とも同じラーメン食べた。
なぜか横一列に座って。笑
休憩後も引き続きわたしが運転することにした。
ここまで来たら、自分どこまでやれるんだろう?って思って。笑
お二人様はまたしばらく就寝…
そして陽が傾いてきた頃、みぞっちを送り届けるために高速道路を下りた。
その頃には2人とも起きてました。笑
そして車内にて3人で簡単な反省会。
「富士登山、どうだった?」
みぞっちは
「いやー、富士山はパワースポットやね!パワーを奪われるスポット!!笑」って。
エミコは
「準備段階から含めて、こんなに自分自身と相談することって今までなかったなぁと思う」って。
わたしはどうだろう。
初めて富士山に登って。
自然の険しさと、世界の美しさと、自分のちっぽけさと。
いろんなことを体感した。
エミコの言うように、こんなに自分のことを考えることって、他になかったような気がする。
決して無理をし過ぎちゃいけない。
まだ先に行けるか、休憩が必要か、自分と相談しなきゃいけない。
対人間と違って、無理をすれば相手が少し優しくなってくれるわけじゃないから。
全部自分次第なんだなぁ、ってしみじみ思った。
それに、自分っていう人間の器の小ささに愕然とした。
体力的にも精神的にも追い詰められたとき、わたしはとても嫌な人間になった。
もっと「いいこ」で居たい気持ちはあるんだけどね。
所詮、自分はそんだけの人間なんだなぁって反省した。
だからまた登りたいと思うんだ。
決して今回と同じ条件では登れないけど…
天気とか、気温とか、メンバーとか、ひとつ変われば全てが変わると思う。
だけど、今度はもっと大人になれたら、と思う。
辛くても周りを気遣える大人に。
ちゃんと人の優しさに応えられる大人にね。
わたしは、まだまだ未熟すぎるくらい未熟な人間だ。
そんなことを考えながらわたしは山を下りてた。
でも結果的に、また3人でどこかに登りたいね、っていう話が出来た。
みぞっちを家の前で下ろして、ここからはエミコと2人で地元まで。
また高速道路に乗った。
(もちろん、そのままわたしが運転したよ!)
ここからは何となく女子トーク。笑
エミコを家まで送り届けて、わたしも無事に帰宅。
富士登山での新しい発見のひとつは、
「わたし、寝不足でも富士登山して山梨から運転して帰ってこれる」ってこと!
みぞっち、エミコ。
本当に迷惑をかけました。
わたしの態度、酷かった。
本当にごめんね。
もっと大人になれるように、これから頑張ります。
一緒に登ってくれてありがとう。
一生の思い出が出来ました。
さあ、次はどこに行こう?
(*^▽^*)