日本人は他の欧米諸国の人より勤勉だという人がいます。果たして本当でしょうか。ヨーロッパ、とりわけフランスやイタリア等のラテン系の国の街角で、果物を売るおじさんやおばさんが、生き生きと嬉しそうに、一生懸命働いている姿をよく目にします。片や銀行の窓口に行くとつまらなさそうに、不親切な対応をされることがあります。

 私から見るとラテン系の人たちは、管理されて働く事が苦手なように思います。しかし日本人より勤勉でないかと言われると決してそうではないと思います。ある著名な経営コンサルタントの方が、日本人は元々勤勉なのではなく、働かなくてはしかられるから、働かないとお金がもらえないから一生懸命働いてきたのだとおっしゃっていましたが、まさに的を得ているように思います。

 私が見てきたいくつかの民間企業、そこに働く人たちは一見勤勉のように見えましたが非常に効率が悪いと思える場面がたくさんありました。その結果残業が増え、しかもアフターファイブも会社のつきあいで家庭にいる時間が極端に少ないように思います。海外に出ると、現地のビジネスマンに帰宅する時間をたすねることがありますが、午後6時台が非常に多いのが印象的でした。同僚と酒を飲むにしても、パブやバールで30分程度ビールを飲む程度、後は家に帰って家族と過ごすという人が圧倒的でした。もちろん、深夜まで猛烈に働くビジネスマンがいないわけではありません。しかしそういつ人たちはごく一握り、経営幹部であることが多かったです。

 それに比べて日本の経営幹部はあまり効率よく働かないように思います。しかも自分が居る時だけそのポストを暖めるだけで長期的ビジョンに欠けるように思います。長期的ビジョンについては日本の政治家や官僚も同様です。ノブレスオブリージュの精神、すわなち地位あるものの義務という視点が極端に欠落しているように思います。ごく少数のもの言う良識派が左遷されたり、役員のゴルフにつきあう社員が優遇されるなど、これが株主のための組織なのかと眼を疑います。

 それでも問題に気づいてコンサルティングを依頼したものの、報告書が分厚くないと納得しないような経営幹部にも困ったものです。その会社の問題点などというのは、本来は数ページでまとまるものなのです。それが、無駄なデータばかりの分厚い報告書をありがたがるのはどうしたものでしょうか。

 本来は優秀な日本人が、真の能力を発揮できるよう、こうした組織の場の雰囲気を打破しなくてはならないと思います。日本人は義務教育の時代から、もの言わぬように知らないうちに訓練されてきてしまったように思います。非効率ですら美徳化し、リーダーが次世代に真の知恵を継承しないような今の風潮を打破し、本当に皆が生き生きと働ける社会へと、今こそ変革すべき時期ではないかと思います。