007シリーズのジェームズ・ボンドと言えば、こと日本では初代のショーン・コネリーが最も有名かと思います。最近の若い方は、ピアス・ブロスナンやダニエル・クレイグの方を支持されるかもしれませんが、第1作からリアルタイムで見ていた私のような50代以上の多くの方が、ショーン・コネリーを1番に上げるように思います。

 「女王陛下の007」でジョージ・レーゼンビーが1回だけ登場した後は、事実上の2代目、ロジャー・ムーアが登場します。
 ところで英国人の多くがショーン・コネリーよりロジャー・ムーアを支持しているという話を聞いた事があります。理由はロジャー・ムーアが2枚目でありながら、3枚目的な役柄を演じているところにあるようです。自分を攻撃してきた美人女性パイロットににこやかに手を振るシーンなど、確かにショーン・コネリーの役柄とは随分雰囲気kが変わりました。3枚目というよりも、やはり英国人が得意とするユーモアのセンスが役柄に反映している点が、ロジャー・ムーア支持の理由のように思います。

 英国のインテリ層で重視されることのひとつにユーモアのセンスがあります。物事を少し離れた視点で見直すことが、ユーモアの原点にあります。すなわちその人の心のゆとりを物語り、その場の空気を和ませるのにこれほど洒落た演出はありません。

 死刑囚に看守が最後の1本のタバコをすすめたところ、「俺は最近、健康に注意することにしているんだ。」と言ってタバコを丁重に断わるような風刺漫画、こんなジョークのセンスを英国人は好みます。極限状態に置かれてもユーモアのセンスを持ち続け冷静な判断を下せるかが、本物のリーダーをかどうかを見分けるのに役に立つからです。

 ある日本の大物女優さんが、元総理経験者の海外でのスピーチのユーモアのセンスを絶賛していました。日本での印象とまるで違っていたとのことです。日本にも国会や役員会で気のきいたジョークを飛ばし、その場を建設的にまとめられるリーダーが増えることを期待してやみません。