日常生活で怒りというのはやっかいな感情です。正当な理由があっても、自己嫌悪を引き起こす事があります。ここ数年でいかに怒らないかについての書籍が相次いで出版され、ベストセラーになったものもあるようです。私も何冊か読みました.確かにそうした書籍が言わんとしている事にも一理あります。怒りそのものは決していいものではありません。しかし、怒りという感情を抑圧することによる弊害もないわけではありません。
 私は相談者に対して、自分や人を傷つけてしまうようなよほどの怒りでない限り、怒りの感情を認めた上で、出来事をより高い視点で見るようにすすめることが多いです。さらに怒りの背景に不安がないかチェックしてみることもおすすめします。えてして何かの出来事によって引き起こされた不安の感情が、相手に対する怒りとして表現されることがあるからです。さらに怒りの根源が、過去に生じた出来事のトラウマではないかというチェックも必要ではないかと思います。小さい頃に自分で処理できない事態に陥った際に、周囲の大人が保護してくれましたか。あるいは放っておかれましたか。子供は困ったときに周囲の大人から保護され体験を身につける事で安心感を得て、やがて自分で判断し物事を解決できるようになります。そうした経験を経ずに育ってしまったなら、今の自分を徹底的に認めて肯定しましょう。自分は自分のままでいい、すべての過去があったから今の今まで生きて来れたのだと自分を褒めてあげましょう。自己肯定感が増えるに従って心がやすらぎ、怒りの感情もしだいに和らぐでしょう。
 最後に良書をご紹介します。「求めない」(加島祥造著)です。
私が書いた事とは直接関係はありませんが、読み進めて行くうちに、何か心が安らぎ始めるのを感じられるのではないでしょうか。
『求めない』 加島祥造/小学館
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