羽田を夜の9時から10時30分くらいの間に離陸し、北太平洋上で夜明けを迎えて到着するアラスカのアンカレッジ国際空港は、6時間ほど前に飛び立った東京に比べれば何とものどかなで広々とした佇まいでした。30年~40年前の東京も羽田空港も今と比べれば随分とゆったりと時間が流れていたような気がしますが、それでもアンカレッジに着くと別世界の静けさがありました。

 ここで小一時間給油した後は、北極を横断するフライトが始まります。空港で買った新聞を広げ売店で買ったチョコレートをほおばると、今いたところは合衆国だったのだと改めて気づきます。コペンハーゲン行きなどはほぼ極点の上を通過しまいたが、ロンドン行きなどはグリーンランド寄りに飛行したかと思います。下は一面北極の氷の世界で、ヘッドセットでクラシック音楽などを聞いていると幻想的な気分になれたものです。当時の機内のヘッドセットは空気の振動を耳に直接伝える仕組みのビニール製チューブのような作りでした。

 到着は決まった明け方です。ヨーロッパ特有の朝もやの中をアプローチして、いつしか車輪が滑走路に着いた振動が伝わってきます。寝不足で少々ぼーとした心身をゆり動かして、静かな空港内で入国検査を終えてタクシーが待つ車寄せへ。市街に向かう車中ではすっかり夜が明けて、自分がヨーロッパにいることを実感したものです。