現在でこそバーニーズ・ニューヨークが入居する高層ビルですが、建て替え前の交旬社ビルは昭和初期の古くも重厚なビルでした。そこに入居する交詢社は日本最初の社交クラブです。
さて私にとって銀座の交旬社はそこで開かれるクリスマスパーティーの思い出につきます。祖父が大手企業の役員だった関係で、祖父の知人のつてで交詢社とご縁ができました。父が車を停めて、父母や弟妹と一緒に入り口を入ると、1階のロビーにはパーティの福引きの賞品が展示されていました。子供ながらに薄暗い室内は重厚で襟を正す思いがしました。ダイニングルームで夕食をとった後、上のフロアでパーティーが開かれました。パーティーというのはちょうど当時のテレビ番組の実演版のような内容でした。NHK番組のジェスチャー、ダークダックスの歌、人形劇などが出し物だったように記憶しています。司会者や出演する芸能人も皆一流の方たちでした。親戚の家族を同伴したこともあります。最後の福引きの時間がパーティのクライマックス、子供心が最もときめく時間でした。
そういうわけで、銀座の交詢社ビルは、今もその前を通ると何十年前もの思い出が蘇ってきます。夕暮れのひっそりとした街のたたずまい、父の運転する古い英国車、思い出すたびにあの頃の銀座が瞼に映ります。