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第76話 白百合の騎士。
身も心も疲れ果てて、軍人墓地の一角に立てられた粗末な墓標の前で、マルチェルは泣くことも出来ずに立ち尽くした。
孤児として育ち、間諜として飼われていた彼が家族と呼べるのは、背中を預け合った戦友だけだった。
それももうない。
「何もかも……もう、どうでもいい」
祈る言葉さえ探せずにいると、目の前に年端も行かぬ少女が現れた。
その手には野の花で編んだ冠があった。
……
孤児として育ち、間諜として飼われていた彼が家族と呼べるのは、背中を預け合った戦友だけだった。
それももうない。
「何もかも……もう、どうでもいい」
祈る言葉さえ探せずにいると、目の前に年端も行かぬ少女が現れた。
その手には野の花で編んだ冠があった。
……
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