「山」ですねえ。


結構登りがきついので、歩幅を小さくして、焦らず地道に、一歩ずつ。
怪我しないように、地面を踏みしめて進む。

シャラ、シャラ、シャラーーと音がして、目の前の路上に斜面から落石が転がってきた。
あぶねー。
なにしろ火山だからねえ、よく見ると、いまにも転がりだしそうな岩が、いくつもある。
そういうところは、早く通り過ぎるようにした。
アホな高校生は、何にも知らずにはしゃいでいる。
わざと、どかどか砂を踏みしめたり、急に走り出したり。お前ら、いつかケガするからな。
人生、そんなに甘くない。
そうこうするうちに、ついに火口が見えてきた。


ところによっては、うっすら白い蒸気を上げているところもある。

ただ、硫黄の匂いとかはしなかったな。おとなしいもんだ。

こっちは、火山国NIPPONの人間や。いろんな火山や、カルデラやら火口湖を見てきた。
悪いけんど、こんくらいのもんでビビりゃあせんのじゃ!
ナポリの市街とか、沖の島とかも、気持ちよく見渡せた。


何しろ、天気が良かった。
あ、謎の飛行物体ーー。

ーー飛行機だね。

上の写真の、ずっと奥の方にある小屋が、登山道の終点。売店になっている。
途中写真を撮りながら、終点まで到着したのが10:40頃。
下りは楽だが、転ぶのが怖いので、これまたソロソロ歩いて行った。
なので、元の駐車場まで帰り着いたのは11:20くらいになっていた。
これにて、ベスビオに別れを告げる。


別れを告げたいのだが、迎えのバスが来てくれるのは、13:20。
それまで、時間をつぶしていなければならない。
これがキツイ! 正直、登山よりきつい。
駐車場にある小さなBARで
ビールを飲んだ。だが、寒い。

じっとしていると寒い。
サンドイッチとか、ピザくらいは出せるようなのだが、どうせ碌なもんであるはずがない。
くやしいので、食事は頼まず、ポテチを買って酒のつまみにした。トマト味。
飲んで冷えたら、尿意が湧く。
もともと、登山前から若干トイレに行きたかったが、どうせ帰ってくるのだからと、タイミングを待っていた。
ちゃんとBARに金を落としたのだから、堂々とトイレを借りれば良いさ。
だからこそ、安心してビールを飲んだわけだし。
「トイレ貸してくれます?」
「ノー! 水がなくなったから、ダメ!」
にゃあにい?! トイレが使えないのに、ビールを出すってどういうこっちゃ?!!!
と、ブチ切れたいが、なぜか店側三人が半ギレ
なので、引き下がった。

でも、あと1時間も我慢できそうもない。

仕方がないので、登山道入り口のBARに行ってみた。
頼んでみると、やっぱり水がないからトイレは使えないという。
「下のBARで頼んでみて
」と言われたので、そっちで断られたのでここへ来たと答えた。

貧相な東洋人がよほど哀れに見えたのか、やはり半ギレ気味だったカウンターのお姉ちゃんが、
「おしっこだけなら、水が出なくても使えるわよ」
と、トイレの鍵を貸してくれた。
ありがとう。トイレの女神さま。
無事に、用を足しました。

持っていたペットボトルの水で、できるだけ流しておきました。
残した水で、手も洗いました。
ああ、水ってありがたい。水を大切にしよう。

貴重な教訓を胸に、家路についたのであったとさ。