拙著「鉄と草の血脈-天神編」において、出雲とはエドムの転じたものではないかという仮説を登場させている。そういう説は以前から存在していたようだ。
それらの説を模倣した訳ではないのだが、どこかで見かけたことがあり、記憶に残っていたということはあるかもしれない。この辺が記憶というものの難しいところだ。
自分が思いついたプロットのつもりで人のアイデアを自作として発表してしまうと、盗作といわれてしまう。盗作問題の大半は故意の剽窃ではなく、記憶のいたずらか、模倣の失敗によるものだろう。芸術に模倣はつきものだが、度を超すと盗作となる。
さて、当研究所が他の言説と異なるのは、「ユダヤ人(あるいはその兄弟民族)が日本人の祖先である」とするものではない点である。
ユダヤ人、あるいはその伝統を受け継ぐ者が古代日本に移住してきたという仮説は同じだが、それが日本人の基であるとか、混血により民族の重要な一部となったという扱いはしていない。
移住が行われたとしても、せいぜい数十名から数百名という規模を想定しているのであり、とても民族的アイデンティティに影響を与えるようなレベルではなかったという設定である。
もちろん上記は「創作上の設定」であり、筆者が真剣に信じているわけではない。ましてや学説として唱えようなどという考えもない。そうお断りしておかないと、「おまえの説は間違っている」というご指摘を受けないともかぎらない。
それほど熱心に拙作を読んでくれている人はいないだろうが。
筆者の工夫は「オオナムチ」に「オーナム・チェイ」というヘブライ語(?)を当てたところである。「オーナム」というのがエドム人の男子に見られる名前だという事実を発見し、オオナムチに結びつけたのである。
出雲=エドム説を、オオナムチ=ヘブライ語説で補強したわけだ。
この「発見」は偶然ではない。オオナムチというヘブライ語があると話が面白くなると考えて、辞書を検索した結果である。
初め、オオナムチということばそのままでは見つからず、頭をひねって、次はオーナムということばを当たってみた。
これが正解だった。
「強壮な」という意味を持つ「オーナム」という古代ヘブライは、オオナムチの名前の由来としてぴったりだった。おまけにエドム人男子の名前という用例がある。
そこで出雲=エドムという図式を「思いついた」のだ。
しかし、いまとなって思うと、エドムについては他説の受け売りだったのかもしれない。意図的に検索したわけではないか、都市伝説スペシャル辺りで耳にしたのかもしれない。
勿論、盗作というレベルには該当しないが。
最近になって「出雲=エドム説」を検索し、そのような論者が多数存在することを知った次第である。
「土師=ハジ」という古代ヘブライ語変換も、オオナムチと同時に探した結果、発見したものである。じつはこちらを先に見つけたのでオオナムチにもトライしてみたのだ。
土を「ハ」と読ませるのは不自然だし、いかにも響きが外国語的だ。探してみたら案の定、「聖地巡礼を成し遂げた者」という訳がある。こいつは面白いと飛びついた。
「くわばら=カバラ」は、おまけのようなものである。できあがった成果は、「鉄と草の血脈-天神編」■第二十章:犬神人にて、ご確認ください。
このように自分の都合で「証拠」を発掘するのは、なかなか楽しい作業である。
とんとん拍子で証拠が見つかると、「本当にそうだったんじやないの?」と、錯覚してくる。
よって当研究所はどこまでも「想像の産物」を追い求める存在であって、実在の歴史を探求するものではないことを改めて確認する次第である。
これはすべて想像の産物である。
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